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ご褒美転生
99. それでもイカ焼きは美味かった
しおりを挟むしばらくみんな遊んで。
小さな子はお昼寝をして。
そうしたら。
次は待ちに待ったおやつの時間。
「わー?これ、なぁにい??」
「お昼と同じパンだよねー?」
「僕のお腹ならまだあのパン食べられるよ!」
「私は次はさっきと違うのが食べたいわー」
お昼と同じコッペパンが並ぶのに子供たちは驚いている。
────これは、もしかして。
「おやつはフルーツパンとはちみつパンですよー」
やっぱりーー!!
フルーツパンは中身はホイップクリームと薄切りになった桃のように柔らかい果物が挟まった物と、同じくホイップクリームとりんごを砂糖で煮た物が挟まっている物。
アップルパイがあるから、りんごはそれを転用したのだろう。
はちみつパンは、室温に戻してホイップしたバターを塗った上にはちみつを垂らしたもの。
ちゃんとパンに染み込んでしまわないように、何を使ったのか、はちみつが少しジェル状に加工されている。
さすがは本職のパン屋さん。
素材をただ挟んだだけでなく様々な工夫がされている。
────でもね。
僕にはちょっぴり気になることがあるんだ。
「トレネーク。こんな時なんだけれど……」
「はい。レシピの事ですね?頼んだパン屋に実際の研究をお願いしたので、元となるアイデアの代金は取りませんでした」
え?そうなんだ。
その代わりに今日の納品分をタダにしてもらったとか??
それよりももっと気になるのが……
「その代わり。
ちゃとした書き物として、開発したレシピをこちらにも頂き、ポンナレルの町では協力してくれたパン屋だけが製造販売出来るように、登録も済ませてあります」
と、言う事は、帰ってからもこれらのパンを賞味出来ると!!
それだよそれ!
僕の気になってた事!!
いやっほー!
バンザイ!!
商会ギルドに登録されちゃうと勝手に他の人が作れなくなっちゃうからね。……個人で愉しむ分には許される、としても、王子の僕が作るとしたら、多分大々的な感じになっちゃうんじゃないかな?とも思うし。
「そして、ですね」
え?まだ、何かあるの?
これ以上??
「これらのパンが一個売れたら一鉄貨、この孤児院に寄付する決まりを取り決めてきました」
ニコニコ顔ですごい事言うね。
僕、トレネークが優秀過ぎて怖い。
「もしも、ここのパン屋が他に支店を出したり、他のパン屋が商品を作って売っても一個につき一鉄貨です」
ちゃんと商会ギルドで手配して参りましたから、ご心配なさらずとも大丈夫ですよ?と、ニコニコしながらフルーツパンを食べてるけど。それって結構すごい事なんじゃない?
「じゃあ、買ったら一部が寄付されます、って店頭でわかるようにした方がいいよね?」
「さすがシュアクーン様!そうすれば買う方もいい事をしたと良い気分になれますね!早速パン屋に教えておきましょう」
いや。流石なのは僕じゃなくて前世の知識とトレネークなんだけど?
同じパンでもフルーツパンとハチミツパン。
甘いものは別腹です。
不思議と幾らでも食べられちゃう!
「美味しい!美味しいです!
パンなのにおやつ!
中身変えただけなのにご飯とおやつと!!とっても不思議で奇妙な気分です!!」
ロブリィア副院長が、子供たちよりも食いつきがすごいです。
「いやー、こりゃいいねぇ。お昼に残したパンも挟むもの変えりゃあ立派なおやつだ。
これからはうちでもこの手を使わせてもらおうかねぇ」
マーリル院長も初めて僕らの事を褒めてくれた。
美味しいおやつを食べて僕もみんなもお腹いっぱい!
だけどそろそろお別れの時間。
僕は最後に屑入れの作り方を教えた。
包装紙とか要らない長方形の紙を使って折るタイプの紙の箱。
教えたら、あっという間にみんな覚えちゃった!
折って畳んでとっておいて、使う時に広げて使うってこともちゃんと教えてあげたよ。
僕らの見送りに外までみんな出てくれた。
けれど、その中にロブリィア副院長の姿は無かったんだ。
食べすぎて具合悪くなっちゃったんだってさ。
……やっぱりね。
▫️▫️□▫️□▫️
「ちょっと!ちょっとだけだから!」
宿に戻る前に露天の食べ物が食べたいと言い出したシュアクーン。
「大丈夫ですよ、私も着いて行きますから」
私も行きます、というロプシンを断ってロンディと二人でうきうきと歩き出す。
ロプシンとアミネットには先に宿に戻ってもらった。
トレネークは、お土産や特産品、僕らの荷物の発送手続き、馬車を明日出発させる手配などをしていて、帰り支度に忙しくこの場にはいない。
「さあて、何から食べますか?」
「昨日ロプシンの言ってたイカ焼きが食べたい!」
早速イカ焼きの屋台を見つけて、足と内蔵を抜いて丸焼きにされたぷっくりと身の厚いイカが刺さった串にかぶりつく。
少し焦げて香ばしいのがなんともしょっぱいタレの味付けのイカの美味しさを増強している。
僕が夢中になってかぶりついていたら、ロンディが人波に押されてよろけた女の人とぶつかった。
「あ、すみませ……!!
まあ!どうしましょう!」
ぶつかって来た人の持っていた食べ物のタレがロンディのお腹辺りにベッタリとついてしまった。
「ごめんなさい。あの、私……
そうだわ!私のお家に来て!
すぐに洗えば綺麗に落ちると思うの」
「大丈夫ですよ、お嬢さん。私の宿はすぐそこですし、水で流せばこれくらい簡単に落ちますから」
私の家、すぐそこですから!と腕を取って離さない女性に、必死に断り文句を羅列するロンディ。
ロンディはイケオジだからな。
このお姉さん美人だし、ロンディもあまり強く言えないみたいだ。
呑気にイカを齧りながら二人を見守っていたら、船人足の集団がドヤドヤと横切り、巻き込まれて少しだけロンディとの距離が開く。
その僅かな隙に。
グン!と後ろに、意識をその場に置き去りにして肉体が動く。
背後から身体をいきなり引っ掴まれた。
懐に忍ばせていたゴールドを地面に投げ付け、ポケットに手を突っ込み取り出したグリーンに向かって魔法を放つ。
「旋風!」
空高く舞い上がるグリーンが小さく点になって行ったのが僕が最後に見た風景だった。
そして何か薬品を嗅がされて。
遅くなる思考の中で真っ先に思ったのは、もう二度とロンディと二人ではそこらに出歩かせてもらえなくなっちゃったな、ということだった。
頭から何か袋を乱暴に被せられ、そこで僕の意識は途切れてしまった。
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