ただいま御褒美転生中!〜元召喚勇者は救った世界で、自作の自立型魔法創作物と共に自由を求める〜

いくしろ仄

文字の大きさ
98 / 230
ご褒美転生

99. それでもイカ焼きは美味かった

しおりを挟む




しばらくみんな遊んで。

小さな子はお昼寝をして。

そうしたら。
次は待ちに待ったおやつの時間。


「わー?これ、なぁにい??」

「お昼と同じパンだよねー?」

「僕のお腹ならまだあのパン食べられるよ!」

「私は次はさっきと違うのが食べたいわー」

お昼と同じコッペパンが並ぶのに子供たちは驚いている。


────これは、もしかして。


「おやつはフルーツパンとはちみつパンですよー」

やっぱりーー!!

フルーツパンは中身はホイップクリームと薄切りになった桃のように柔らかい果物が挟まった物と、同じくホイップクリームとりんごを砂糖で煮た物が挟まっている物。
アップルパイがあるから、りんごはそれを転用したのだろう。


はちみつパンは、室温に戻してホイップしたバターを塗った上にはちみつを垂らしたもの。

ちゃんとパンに染み込んでしまわないように、何を使ったのか、はちみつが少しジェル状に加工されている。

さすがは本職のパン屋さん。
素材をただ挟んだだけでなく様々な工夫がされている。


────でもね。
僕にはちょっぴり気になることがあるんだ。


「トレネーク。こんな時なんだけれど……」

「はい。レシピの事ですね?頼んだパン屋に実際の研究をお願いしたので、元となるアイデアの代金は取りませんでした」

え?そうなんだ。
その代わりに今日の納品分をタダにしてもらったとか??

それよりももっと気になるのが……


「その代わり。
ちゃとした書き物として、開発したレシピをこちらにも頂き、ポンナレルの町では協力してくれたパン屋だけが製造販売出来るように、登録も済ませてあります」

と、言う事は、帰ってからもこれらのパンを賞味出来ると!!
それだよそれ!
僕の気になってた事!!
いやっほー!
バンザイ!!

商会ギルドに登録されちゃうと勝手に他の人が作れなくなっちゃうからね。……個人で愉しむ分には許される、としても、王子の僕が作るとしたら、多分大々的な感じになっちゃうんじゃないかな?とも思うし。


「そして、ですね」

え?まだ、何かあるの?
これ以上??


「これらのパンが一個売れたら一鉄貨、この孤児院に寄付する決まりを取り決めてきました」

ニコニコ顔ですごい事言うね。
僕、トレネークが優秀過ぎて怖い。


「もしも、ここのパン屋が他に支店を出したり、他のパン屋が商品を作って売っても一個につき一鉄貨です」

ちゃんと商会ギルドで手配して参りましたから、ご心配なさらずとも大丈夫ですよ?と、ニコニコしながらフルーツパンを食べてるけど。それって結構すごい事なんじゃない?


「じゃあ、買ったら一部が寄付されます、って店頭でわかるようにした方がいいよね?」

「さすがシュアクーン様!そうすれば買う方もいい事をしたと良い気分になれますね!早速パン屋に教えておきましょう」

いや。流石なのは僕じゃなくて前世の知識とトレネークなんだけど?



同じパンでもフルーツパンとハチミツパン。
甘いものは別腹です。
不思議と幾らでも食べられちゃう!

「美味しい!美味しいです!
パンなのにおやつ!
中身変えただけなのにご飯とおやつと!!とっても不思議で奇妙な気分です!!」

ロブリィア副院長が、子供たちよりも食いつきがすごいです。


「いやー、こりゃいいねぇ。お昼に残したパンも挟むもの変えりゃあ立派なおやつだ。
これからはうちでもこの手を使わせてもらおうかねぇ」

マーリル院長も初めて僕らの事を褒めてくれた。

美味しいおやつを食べて僕もみんなもお腹いっぱい!

だけどそろそろお別れの時間。


僕は最後に屑入れの作り方を教えた。
包装紙とか要らない長方形の紙を使って折るタイプの紙の箱。

教えたら、あっという間にみんな覚えちゃった!
折って畳んでとっておいて、使う時に広げて使うってこともちゃんと教えてあげたよ。


僕らの見送りに外までみんな出てくれた。
けれど、その中にロブリィア副院長の姿は無かったんだ。
食べすぎて具合悪くなっちゃったんだってさ。
……やっぱりね。



▫️▫️□▫️□▫️







「ちょっと!ちょっとだけだから!」

宿に戻る前に露天の食べ物が食べたいと言い出したシュアクーン。


「大丈夫ですよ、私も着いて行きますから」

私も行きます、というロプシンを断ってロンディと二人でうきうきと歩き出す。

ロプシンとアミネットには先に宿に戻ってもらった。

トレネークは、お土産や特産品、僕らの荷物の発送手続き、馬車を明日出発させる手配などをしていて、帰り支度に忙しくこの場にはいない。



「さあて、何から食べますか?」

「昨日ロプシンの言ってたイカ焼きが食べたい!」

早速イカ焼きの屋台を見つけて、足と内蔵を抜いて丸焼きにされたぷっくりと身の厚いイカが刺さった串にかぶりつく。
少し焦げて香ばしいのがなんともしょっぱいタレの味付けのイカの美味しさを増強している。


僕が夢中になってかぶりついていたら、ロンディが人波に押されてよろけた女の人とぶつかった。


「あ、すみませ……!!
まあ!どうしましょう!」

ぶつかって来た人の持っていた食べ物のタレがロンディのお腹辺りにベッタリとついてしまった。


「ごめんなさい。あの、私……
そうだわ!私のお家に来て!
すぐに洗えば綺麗に落ちると思うの」

「大丈夫ですよ、お嬢さん。私の宿はすぐそこですし、水で流せばこれくらい簡単に落ちますから」

私の家、すぐそこですから!と腕を取って離さない女性に、必死に断り文句を羅列するロンディ。
ロンディはイケオジだからな。
このお姉さん美人だし、ロンディもあまり強く言えないみたいだ。

呑気にイカを齧りながら二人を見守っていたら、船人足の集団がドヤドヤと横切り、巻き込まれて少しだけロンディとの距離が開く。


その僅かな隙に。



グン!と後ろに、意識をその場に置き去りにして肉体が動く。

背後から身体をいきなり引っ掴まれた。

懐に忍ばせていたゴールドを地面に投げ付け、ポケットに手を突っ込み取り出したグリーンに向かって魔法を放つ。

「旋風!」

空高く舞い上がるグリーンが小さく点になって行ったのが僕が最後に見た風景だった。

そして何か薬品を嗅がされて。

遅くなる思考の中で真っ先に思ったのは、もう二度とロンディと二人ではそこらに出歩かせてもらえなくなっちゃったな、ということだった。


頭から何か袋を乱暴に被せられ、そこで僕の意識は途切れてしまった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

剣の世界のβテスター~異世界に転生し、力をつけて気ままに生きる~

島津穂高
ファンタジー
社畜だった俺が、βテスターとして異世界に転生することに!! 神様から授かったユニークスキルを軸に努力し、弱肉強食の異世界ヒエラルキー頂点を目指す!? これは神様から頼まれたβテスターの仕事をしながら、第二の人生を謳歌する物語。

[完結]前世引きこもりの私が異世界転生して異世界で新しく人生やり直します

mikadozero
ファンタジー
私は、鈴木凛21歳。自分で言うのはなんだが可愛い名前をしている。だがこんなに可愛い名前をしていても現実は甘くなかった。 中高と私はクラスの隅で一人ぼっちで生きてきた。だから、コミュニケーション家族以外とは話せない。 私は社会では生きていけないほどダメ人間になっていた。 そんな私はもう人生が嫌だと思い…私は命を絶った。 自分はこんな世界で良かったのだろうかと少し後悔したが遅かった。次に目が覚めた時は暗闇の世界だった。私は死後の世界かと思ったが違かった。 目の前に女神が現れて言う。 「あなたは命を絶ってしまった。まだ若いもう一度チャンスを与えましょう」 そう言われて私は首を傾げる。 「神様…私もう一回人生やり直してもまた同じですよ?」 そう言うが神は聞く耳を持たない。私は神に対して呆れた。 神は書類を提示させてきて言う。 「これに書いてくれ」と言われて私は書く。 「鈴木凛」と署名する。そして、神は書いた紙を見て言う。 「鈴木凛…次の名前はソフィとかどう?」 私は頷くと神は笑顔で言う。 「次の人生頑張ってください」とそう言われて私の視界は白い世界に包まれた。 ーーーーーーーーー 毎話1500文字程度目安に書きます。 たまに2000文字が出るかもです。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

最強魔法は生活魔法!? ~異世界ではモンスター退治も生活のうち~

gagaga
ファンタジー
神の気まぐれにより異世界へと転移した主人公田辺竜太(大学生)が生活魔法を駆使して冒険したり町の人と触れ合ったりする物語です。 なお、神が気まぐれすぎて一番最初に降り立つ地は、無人島です。 一人称視点、独り言多め、能天気となっております。 なお、作者が気ままに書くので誤字脱字は多いかもしれませんが、大目に見て頂けるとありがたいです。 ただ、敢えてそうしている部分もあり、ややこしくてすいません。(^^;A ご指摘あればどんどん仰ってください。 ※2017/8/29 連載再開しました!

異世界転生した俺は、産まれながらに最強だった。

桜花龍炎舞
ファンタジー
主人公ミツルはある日、不慮の事故にあい死んでしまった。 だが目がさめると見知らぬ美形の男と見知らぬ美女が目の前にいて、ミツル自身の身体も見知らぬ美形の子供に変わっていた。 そして更に、恐らく転生したであろうこの場所は剣や魔法が行き交うゲームの世界とも思える異世界だったのである。 異世界転生 × 最強 × ギャグ × 仲間。 チートすぎる俺が、神様より自由に世界をぶっ壊す!? “真面目な展開ゼロ”の爽快異世界バカ旅、始動!

念願の異世界転生できましたが、滅亡寸前の辺境伯家の長男、魔力なしでした。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリーです。

スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う

シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。 当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。 そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。 その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。

処理中です...