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ご褒美転生
100.自立型警護折鶴
しおりを挟む「あれだけ高く打ち上げればグリーンが野良猫に咥えられることもないだろう。あとはグリーンが自力でなんとかするさ」
次に目を開けた時は知らない屋敷の座敷牢。
部屋を半分に区切って窓も出入り口もない方に僕は転がされていた。
後手にされて魔力封じの枷をはめられているが、子供と侮っているのか足は自由だ。
鉄格子の向こう側、部屋の半分には今は誰も居ない。
「えっと、うんしょっと」
グリーンが入っていたのとは逆側のポケットから、レッド、ブルー、イエローを何とか取り出した。
グリーンだけが反対側の右ポケットに居たのは、孤児院でグリーンだけが中々僕のとこに戻って来なかったから。
何故かグリーンが一番、小さい子たちに人気だったんだ。
ツーマンセルでの行動のためにも今後はなるべく左右のポケットに二羽ずつ入れる習慣をつけよう!と、シュアクーンは反省した。
「ゴールドは、最悪破裂して僕の危険をロンディに伝えてくれただろうし、後はグリーンが僕の後をつけてこれたかどうかだな」
僕の連れ去られた方向だけでも上手くロンディに伝えてくれれば良いけれど。
「レッド。悪いけど、僕の懐から予備ゴールド、取り出せる?」
頷いたレッドが僕の胸元に潜り込む。
レッドがゴールドを引っ張って、ブルーがレッドを引っ張って、イエローがブルーを引っ張って。
気分は最早“大きな蕪”。
うんとこしょどっこいしょそれでもゴールド抜けません。
それでも少しずつズルズル引き摺り出して、なんとかゴールドが外に出た。
「これで四羽になったね」
残念ながら予備隊員はゴールドしか用意していない。
その代わり、すぐに起動出来るように全ての予備隊員は魔力充填した状態にしているんだけど。
「おい、飯だ。食え」
何とか鉄格子に掴まって、身体を起こして床に座っていた僕の足元に部屋に入って来た男からパンが投げ込まれる。
言葉に訛りが強いから自国の人間ではないのかも知れない。
もしかしたら、話せるのがコイツだけだからコイツがパンを持って来たのか?
「これじゃ食べられないよ」
僕が身体を捻って後ろにまとめられている手を見せるが、パンを投げ込んだ髭もじゃ男は僕に答える事なく、フン、と鼻を鳴らすとそのまま部屋から出ていこうとして僕に背を向けた。
髭もじゃ男が扉を雑に、後ろ手に引っ掛けて閉めようとした瞬間。
────閉まる扉。
その隙間に次々と滑り込むレッドと隊員たち。
「か、かっこいいッ」
しかし、哀れゴールド。
足が他の隊員よりも少し遅く、体の柔軟さに欠ける彼は扉に挟まれてしまう。
────ぐしゃあ
「(ゴールドォォォォオオオ!)」
声には出さず心の中だけで叫ぶシュアクーン。
幸か不幸か。
ゴールドが挟まった事により、扉は完全には閉まり切らず、隙間が開いたままだ。
しかもゴールドは自分は無事だと羽をパタパタさせてシュアクーンに合図を送っている。
部屋に窓はあるけれど、全て鉄格子の向こう側。ツルレンジャーたちでは鍵を外して外に出る事は叶わない。
日は傾いて窓から見える空は橙色に染まっていた。
イカ焼きでお腹はいっぱいなので髭もじゃに投げ込まれたパンは食べずに無視する事にしたシュアクーン。
「ここってどこなんだろ?」
今が夕方って事は絶対攫われた場所からそんなに離れていない。
けれども、室内を見回しても何かが分かるような物は見当たらない。
「鉄格子がある以外は普通の部屋、って感じ」
部屋が檻で区切られて出入り口が無い方に僕がいる。
手には魔力封じの手枷がされているから魔法でなんとかは出来そうに無い。
勇者時代の僕だったらこんなのなんでもなかったのに。
魔法が無くても力で何とか出来た。でも今は無力。
だいたいが、狙われたのって僕が王子様だからだよね?多分?
そんな意味でも王子様は自由じゃ無いとそう思う。
「とりあえず、出来ることも無さそうだから、一旦身体を休めるか」
座りながら寝ることには慣れてる。
これも、勇者のときに出来るようになったことだから。
▫️▫️□▫️□▫️
ぴしょ、
ぴしゃ、
ん?なに?
冷たい。
顔に何か、、水?
薄く目を開けるとぼんやりとレッド居るのが見えた。
レッドの隣には僕の顔へと水を飛ばすブルーの姿が。
あれ?
ここに照明なんかあったっけ??
ナツメ球のような淡いオレンジ色の光りの中、目を覚ました僕。
ぽんやりとした光りで周囲を照らしてくれていたのは、光を放つイエローだった。
イエロー。お前そんな間接照明みたいな光り方もできるんだな。
ん?
なに?
寄って来たレッドを良く見ると。
……ん?鍵??
レッドの首の付け根部分にネックレスのように鍵がぶら下がっている。
レッドが首から外そうとして首を前に倒して。
!!うわ、顔の部分に引っかかって頭を下げてひきずってるぅ!
ブルーとイエロー、外すの手伝ったげて!
なんとかレッドが奪取してきた鍵を使って、魔力封じの手枷を外そうと試みる。
僕は後ろが見えないから、僕が鍵を差し込んで回せるようにツルレンジャーのみんなでサポートしてくれたよ。
カチッと音が響き、なんとか手枷を外すことに成功した。
鍵は折り直したゴールドの中に入れて、手枷は後ろ手に持ち、いつでも外れていないふりが出来るように準備した。
「これで魔法が使えるようになったから、このまま逃げ出せるんだけど」
犯人はなんで僕を攫ったのか。
そして、たとえこの部屋から出られたとしても、その先がどうなっているか、何人くらい犯人の仲間がいるのかもわからない。
「もう少し様子を見てみるかな」
僕がそう結論を出した時に。
また扉が開かれた。
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