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ご褒美転生
104. フルドゥノルフ国王②
しおりを挟むシュアクーンが変なカトラリーでご飯を食べ始めたと聞きつけた父に昼食に呼ばれた。
今更、態々いう事でも無いが、シュアクーンの父=国王である。
なんでーー!?
どうしてーー!?
何がどうしてこうなった!
正式な昼食の招待状をロンディから手渡され、驚愕に打ちひしがれるシュアクーン。
あれ?なんか変。
驚愕に?打ちひしがれる??
しかし、今のシュアクーンの心情はそうとしか表せられない。
「ねぇ、急にどうしたのさ、コレ」
シェイラに開けてもらい中を確かめるとまたすぐに封筒に収めた招待状をパタパタと振るシュアクーン。
「恐らく、伝令筒の件のお礼かと」
ああ、あれね。
誰かが勝手に中を見ているかも知れないってぇのをはっきりさせたいってヤツ。
指紋取るのなんて、よく推理モノ読んでる人ならすぐに思いつく。
誰が、まで特定しなくて良いなら伝令筒を持った人以外の指紋が見つかればいいだけだもん。
「ええーー?そんなんでわざわざーー?」
ったく、めんどくさ。
「シュアクーン様。面倒だと声に出ております」
わ!トレネーク!
たとえ聞こえててもそこは聞こえない振りでお願いしたい。
「で、いつなのですか?シュアクーン様が王と昼食を共になさるのは」
説明が面倒なシュアクーンは封筒をそのままトレネークに投げてよこした。
「ねぇ、ロンディ。
お前、絶対父に何か言ったでしょ?そうでなきゃこんな突然な昼食への誘い、おかしすぎる!!」
「いえ、そのようなことは。伝令筒の事でお礼が言いたいと、うかがっています」
さっきは“恐らく”って言ったクセにぃ!
絶対に違う!お礼じゃ無いね!
しれっとしているロンディを睨みつけつつ、シュアクーンも断れないことはわかっていた。
「シェイラ、アミネット。その日の僕の衣装、揃えておいて」
「わかりました。シュアクーン様」
「かしこまりました」
二人にお願いをして、シュアクーンは目の前の今日の晩御飯に取り掛かることにした。
「わーーい!ハンバーグだ!トマトソースの煮込みハンバーグ!これ、僕大好き」
喜び勇んで箸をつけたシュアクーン。
が、ソースに浸かった箸が変色し始める。
「……紫かぁ。お腹ピーピーする奴だ。
あーあ、ハンバーグ。
僕の煮込みハンバーグぅぅぅ」
カップに入れて用意された水で、サッと箸を洗って、次の料理に手をつける。
「スープはーー、オッケー!
なんとも無い!」
その後パンに箸をブッ刺したところでシェイラが戻って来た。
「……シュアクーン、さま?」
ゲ。
「いや、シェイラ、これは」
「刺さなくとも、お箸を当てれば分かるのですよね?」
その後シェイラに怒られたのは当然として。
食べられなかったハンバーグの代わりにトレネークが持って来てくれたローストビーフをたっぷりサンドしたコッペパンを、シュアクーンは感謝しながら三本も貪り食った。
……やけ食いである。
「よりにもよって僕の大好きなハンバーグに仕込む事ないじゃないかーー!」
いや。嫌がらせとしては上出来なのでは?とコッペパンのご相伴に預かりながら、嘆くシュアクーンを見てそう思うロンディであった。
▫️▫️□▫️□▫️
「よく来たな。シュアクーン」
ハイ、来ましたよ。
来ないなんて選択、有りませんからね。
「本日は昼食にお招きいただきありがとうございます」
「まあ、座れ」
ここは七歳の昼餐会で使用されたのと同じ部屋。
シュアクーンは、あの時とは違って王の対面に案内され座らされる。
「さ、食事を楽しもうか」
王の言葉に合わせて給仕が動き出す。
「シュアクーン」
「なんでしょう?」
「それがお前のカトラリーか?」
父の視線が僕の手元に注がれている。あーーー。これか。
これが原因か。
シュアクーンは理解した。
「はい。最近良くない事が度々ありまして、こうして特別な物を用意し使用しておりました」
「ふぅん。そうか。
……今日はお前が好きだという料理を用意させた。
故に私のものと料理が違うが。
まあ、私もなるべく好きなものを口にしたいからな」
自分の前に並べられた料理には目をくれもせず、じっとシュアクーンを見つめる王様。
やり難いなぁ。
父とは言えおっさんに見守られながら食べ物たべるって何の罰ゲームかな?
「さ、遠慮なく食べよ」
「では、いただきます」
先ずは箸をスープに浸す。
ん!大丈夫。
箸をスプーンに持ち替えてスープを頂く。
「美味しいですね。貝の滋味がスープに溶け込んで……」
さあて。
お次はあれだ。
先日食べ損ねたハンバーグ。
それも僕の大好きな煮込みハンバーグだ。
その前に、ちょこんとパンに箸を触れさせる、
ん、これもセーフ。
さすが国王に出される料理。
さぞかし厳重な管理体制が敷かれているのだろう。
僕はちょびっとパンを千切り口に入れた。
最近コッペパンが流行りのシュアクーンにはいつもの丸パンが少しだけ硬めに感じた。
「なんだ?それを使っては食べないのか?」
相変わらず自分の料理には手をつけないで、こちらを観察している父に少し呆れてしまう。
「王様はお召し上がりにならないのでしょうか?」
なので、お前も早く食えよ!と促してみる。
「ん?そうだな。冷めてはいけない、私も食べよう」
王がスープを掬い、口にしたのと同じタイミングで、僕もハンバーグに取り掛かる。
「あ」
しかし。
無情にも。
ハンバーグを切ろうと、付けた箸が変色を来たす。
みるみる蛍光どピンクに変化する箸の先。
「あ、これはお腹痛くなる色だ」
ぽそりと呟かれたシュアクーンの声がやたらに響いてその場の人間の耳に届いた。
「何をしておる!今すぐに確認させろ!!」
食器を放り捨て立ち上がった王が叫ぶ。
その声に我に返った臣下たちが慌ただしく動き出した。
そして。
部屋に居た人間が王の護衛を除き誰も居なくなった時。
「ラルクラート」
「は、こちらに」
瞬き一瞬の間に。
給仕姿の一人が音もなく移動してきて、父の近くにひざまづく。
わー!わー!
名前知りたくなかったのに!影の一人の名前知っちゃったよ僕。
「調べてこい」
と、父が一言口にするのに対して
「御意」
の返答と共に跪いた男の姿が掻き消える。
カ、カッコイイーー!
忍者なお庭番の出動だ!
父が命令を下しているところ、というよりも。
影の忍者な行動にやたらと興奮していたシュアクーンは、部屋に戻ったら手裏剣の鍛錬をまた始めようとそう心に決めていた。
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