捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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番外編

初ダンジョンでも商売とか

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「ティアナちゃ~ん。ご飯一杯お代わりっ!」

「生姜焼き丼を3つ、宜しくっ!」


ダンジョンの休息地に肉の焼けるいい匂いと野太い声が幾重にも重なっている中心にいるのは、、、、。





冒険者になって初めてのダンジョン!


魔法を使ってバッタバタと魔物を冒険者ランクを上げて、、、とは当たり前だけどそうはならない。


魔法は使えるけれど、攻撃魔法は殆ど使った事が無い私はダンジョンに入って最初のフロアで、先ずは十メートル程先の木に向かってチマチマと的当てからのスタートだった。


「・・・・・・ティアナ、その手に持っている木の棒はなんだ?」


「ひどっ!木の棒じゃなくて、コレは魔法の杖なんですぅ~。」


誘拐された時、魔法を発動出来なかった私が欲したのがだ。

まぁ、ぶっちゃけではある。ちょっとグリップ部分に彫刻が入っているだけの木の棒だ。


無事に救出されイケアに戻ってきた私が、ダント親方の工房を訪ねて作って貰ったこの杖は製作時間五分、片手間で作ったともならない程のお手軽品だ。

ダント親方にも『なんだってが必要なんだ?』と言われてしまった一品でもある。
持ち手部分は私の手にフィットしやすいように削られて、けれどこのままじゃ本当に木の棒だから職人としては許容出来ない、と親方が拘って少しだけ彫刻が施されている。


「えーとね、指を指す要領で杖の指した先に魔法を放てるように、と杖を作ってみたの。」


にへらっと笑って言えば、クリスは意味が分からないというような微妙な表情を浮かべている。


分かってる!この世界で魔法を使う時には杖なんて必要ないのは分かっているよ。

でも魔法ってイメージが大事じゃない?

私が魔法を放つ姿を思い浮かべた時にやっぱり杖を持ったイメージの方がしっくりくるんだよねぇ。
これって前世の魔法使いのイメージが強いのかなぁ。


前に魔法を使った時、土魔法は地面に手をついて発動させたから割とすんなりと出来た。けれど襲ってきたボアに向かって風魔法を発動する時は、手をボアの方に向けて詠唱したけれど、正直パニックになっていて魔法はあちこちに飛んでいた。それこそ数打ちゃ当たる、で何とか倒せただけの事。

そうして誘拐された時には後ろで縛られた手から魔法を放つのはどうにも怖くて出来なかった。それこそ何処に飛ぶのか分からなかったから。


「だが、杖が無いと魔法が使えないとなっても困るだろう?」


私の話を聞いたクリスが冷静にツッコミを入れてくる。それはそうだよね。


「だから二刀流で頑張るよ。」


「二トーリュー?」


聞き慣れない言葉にクリスは首を傾げている。


「うん。利き手の右手は今まで通りの練習で、左手で杖を使って魔法の練習をするつもり。

これなら問題ないでしょ。」


「いや、最初から杖は不要だと、、、。」


クリスはブツブツと言っていたけれど、私の顔を見て言っても無駄だと思ったみたいでそのまま口を閉じる。


その後、練習を始めると右手での攻撃魔法は何とか発動するものの、やはり的中率は低い。
対して杖を使うと右手よりも的中率は二割ほど高かった。しかも杖を対象に向けて『えいっ!』と声に出すだけで、右手よりも素早く魔法が発動する。

同じ無詠唱での魔法の発動だけれど、杖の方は指を指す感覚で杖を動かしながら同時に魔法を発動させているっぽいので、右手の時よりも半拍早く魔法が発動しているのでは、とクリスが言っていた。


チマチマと魔法の練習をしていると第一階層によく出るというスライムがポヨンポヨンと跳ねながら近寄ってきた。
襲い掛かってくるというよりは、散歩しています的にしか見えないスライムたちは赤青緑とカラフルで透けている。
カラフルなのはスライムが持つ属性によるんだって。


可愛いらしい見た目のスライムを倒すのはツライけれど、跳ねているスライムに魔法を当てるのは丁度良い練習になる、と言われれば心の中で『ゴメンね~。』と言いながら有り難く練習台にさせて貰った。

うん、確かにスライムの動きは速くはないのに、絶え間なく跳ねていて、大きさもバレーボールサイズのスライムは的として小さくて当てにくかった。


ひとしきりスライムと戯れ、、、じゃなく、スライムを倒していたけれど、最弱魔物と言われているだけあって戦利品のドロップ率は高くなかった。
1、2枚、何処かの古い硬貨が手に入ったけれど使い道ってあるのかな?


その後、二層と三層の間にある休憩地で泊まる予定の為に第二階層に降りてからは、お肉調達に燃えるクリスの後をついて回って、周囲を呑気に跳ねているスライムを倒し続けていた。
最初は心が痛んだけれど、慣れって怖いよね。最後は躊躇いなくバンバンと倒せたもん。

フロアボス?よく分からないけれど居たみたいよ?

Aランク冒険者のクリスからしたら、このダンジョンの一~五階層なんて準備運動にもならないみたいで、見かければ『肉っ!』と呟きながら瞬殺していたからフロアボスも倒してから気付いたみたい。


それでもクリスは執念で何とかお肉をドロップ出来たので、サッサと休憩地に向かう事を決め、休憩地に着くとテントを張り始めた。


このフロアの休憩地はダンジョンに入って最初の休憩地だから此処でテントを張って泊まる冒険者は多くはないらしい。


どう見てもそこそこのランクの冒険者に見えるクリスがダンジョンに入って早々の休憩地でテントを張る姿は物珍しかったらしく、このフロアを素通りしていく冒険者たちにジロジロ見られていた。


けれど私がテント前で夕飯の支度を始めると今度は私の方がジロジロ見られる様になったんだよね。

匂いに釣られて立ち止まる冒険者が増えた頃、クリスの為のダンジョン産魔物肉の生姜焼きが出来た。勿論、主食はパンではなくご飯でお味噌汁付きだ。


私は肉巻きおにぎりの味付けで肉を焼いてご飯の上に乗せ、真ん中に温泉卵風にした卵を乗せた丼モノにした。


うん、美味しい!


ダンジョンでドロップしたお肉もノアさんが出すお肉と同じぐらいに美味しい。
どういう仕組みなのか、きちんと紙に包まれたドロップアイテムのお肉なので、一体何のお肉かは分からない。分からないけれど美味しい。
ルードさんや肉に詳しいノアさんなら分かるのかな。


そんな事を考えながら食事をしていると、おずおずと30代ぐらいの冒険者のおじさんが声を掛けてきた。


「な、なぁ、お嬢ちゃん。すごくいい匂いがしてるが、その肉はここで手に入れた肉かい?」


お嬢ちゃん、、、。


まぁ、おじさん冒険者さんからしたら、名前も知らないんだからそうなるかな。

「えーっと、新米冒険者のティアナです。

このお肉はこのダンジョンのドロップ品ですね。

味付けはジパーンという国の調味料を使って作っています。いい匂いがするでしょう?」


私の自己紹介に周囲の冒険者がザワザワしている。まさかクリスに付いてきた飯炊き女とでも思っていたとか?

「ティアナちゃん、あ、あの、一つ相談なんだが、肉を持ってくるから俺たちにもその料理を作ってくれないか?
勿論、足りない材料は金を払うから。その白いモンとか。」


知らない人にちゃん付けされるのも微妙だね~。だからと言って、かなり年上の人にさん付けで呼ばれるのももっと違和感を感じちゃうからね。


で、料理を作る、かぁ。

まぁ、これはちょっとは予想していたというか、狙い通りというか。

ここで手に入れた肉を美味しく食べられるなら、必要な調味料を手に入れたくなるよね。
ダイアナ商会がすき焼きのタレや焼き肉のタレをダンジョン前で販売する時の為に、売れるかどうかの確認をしたかったんだよね。

牧場で雇う冒険者パーティーたちにも宣伝してもらうつもりだけれど、先ずは冒険者たちがどう反応するかを見たかったのもあって、ダンジョンに行こうと思ったんだよ。


「白いのはお米といってパンの代わりになるんです。

私が食べ終わるまで待って頂ければ、実費のみ負担して頂けるなら作りますよ。」


営業スマイルで返事をすれば、声を掛けてきたおじさん冒険者の仲間たち以外の人たちもテントを張る人と肉を調達する人に分かれて動き出した。


えっ?割と人数がいるんですけど?


隣を見ると、私に白い目を向けているクリスが居たけれど、クリスの場合は自分の分が確保されてるなら大丈夫だよね。
お代わり用の丼ものも肉巻きおにぎりだってもう準備してあるから問題無いハズ。


結局、数組のパーティーが食事をする為に留まったのだけれど、彼らが食べているのを見て、素通り予定の冒険者たちがまた立ち止まり、を繰り返す事になって屋台並の忙しさになった。


調味料の事を聞かれれば、二トとイケアで取り扱っているお店を紹介し肉巻きおにぎりを気に入った人がいれば二トの市場でも屋台で売られていると宣伝した。

お肉が準備出来ない冒険者たちもいて、その場合はノアさんから購入したボア肉を使った。ノアさんのお店では美味しい肉が食べられる、と言えば、ノアさんのお店でステーキを食べた事のある人も結構いた。


屋台を出した訳でもないのに予想以上に大盛況で、ちょっとはダイアナ商会の手助けが出来たかな。
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