捨てられ令嬢は屋台を使って町おこしをする。

しずもり

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ハドソン領 領都

ログワ村と事業の話

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「あの、繭を集めるのと飼料を作る仕事はどの様に依頼する予定ですか?

折角なので、ログワ村を活性化させる為に、とかみたいな大義名分で領主自らハドソン領改革に乗り出した、という方向で村長さんと話し合って進めてみたらどうでしょうか?」


「まちおこし?

それは養蚕事業と一緒にしないといけない事なのかい?」


あ~、なんて言葉はこの世界にはないか。日本だって今でこそ当たり前のように聞く言葉になっているけれど、古くから使われていた訳じゃないっぽいよね。


「ログワ村では、クワーの実を皆で果実酒にして近隣の村や町に行った際に売って生計を立てている、と言っていました。
ほぼ自給自足とも言っていて、半年に一度ほど村長さんの家の者が代表者で二人で荷馬車で三日ほど掛けて、自給自足では手に入らない物を買い出しに行っているそうです。

村人以外の出入りもほぼ無いような閉鎖空間で、いきなり肥料を作って売り出す事業を始める、となると村人の関心がそこに集中してしまいませんか?

あくまで繭を集めるのは村人に依頼するんですよね?

もしかして繭の採取をめちゃくちゃ安く買い取るとかしないですよね?

逆に高値買取りでも怪しまれるし、高値じゃなくても誓約もある契約を結ぶというのもログワ村では非常に珍しい事のような気がするのですが。」


「ん~、確かに言われてみればそうかもしれないな。私もこの前初めてあの村に足を運んだけれど、あんな場所に村があったのか、と内心は驚いたよ。

勿論、村の名前も、どの辺りにある村なのかぐらいは知っていたんだが。

そう、そうだな。まだ具体的にどうするかは、国との話し合いで決めていく予定だったが、繭の買取額についてはまだ先の事と具体的な話は出ていなかったな。

正直、シルクの希少性を考えれば、繭一つで金貨一枚でも安いものだろうな。」


 ハドソン伯爵も苦笑していたけれど、あの村は街道から外れて三十分歩いた場所にある上に、桑の木がどの家も囲うように生い茂っているので、パッと見て村がある様には見えないんだよね。

 村には二度足を踏み入れたけれど、ハッキリ言って何軒ぐらい家があったとか、村の人口はどれぐらいだろうとかの想像が全く出来なかった。

それにしても繭一つで金貨一枚でも安い、かぁ。

勿論、養蚕に関する設備、建物から人件費など、立ち上げから事業が軌道に乗るまで諸々に多額のお金が掛かるから、シルクが如何に高価なものでも繭の買取額を高額にする訳にはいかないと思う。

でもいずれシルクが貴族社会、そして平民にも認知されるようになって、それが何から作られているかなどが知られるようになる筈だ。

そうなった時に繭の採取を安い値段でとログワ村の人たちが思ってしまわないようにしておく。

そういう配慮は必要じゃないかなぁ。

その頃にはキチンとした養蚕の体制が整って、繭の買取という様な形では無くなっているとは思う。

繭の採取を買取ではなく、時間給に、というのも、村人全員でやる程の仕事量でもない気がする。

村の中で働いてお金を手に出来る人と出来ない人が出てくるのも、後々トラブルになるかもしれないよねぇ。

「でも繭一つに金貨一枚渡すのも現実的ではないし、安すぎてもいつか事実を知った時に不満が出る可能性もあります。

それにその仕事に就けた人とそうでない人の差や、多く取って来た者勝ちとなってしまうのも危険です。

ですから、ハドソン伯爵がログワ村の活性化の為に、幾つかの取り組みをする、という話で村人全員に協力を依頼した方が良いのかなぁ、と。それでー。」

「ちょっと待った!

カーター、彼女の話す内容を書き留めて。

ティアナ、色々と提案してくれるのは有り難いが、理解しきれない内容も出てくる可能性もあるので、書面に残させてくれ。

少しだけ話す速度を遅くしてくれると助かる。」

ハドソン伯爵に名前を呼ばれカーターさんは慌てて、手に持っていた手帳のような物を開いてから私の方へと体を向けた。


おっと!何かを思い付くとついつい早口で捲し立ててしまうんだよね。
確かにこの世界には無い言葉、物や仕組みみたいなことをポロっと口に出して言っている事が結構あるんだよね。

「ハイ、わかりました。聞き取り易いように気をつけて話しますね。

" ログワ村の発展や活性化の為に "、という事で繭の採取を依頼するだけでなく、幾つかの仕事を領主である伯爵が依頼又は提供する。

そうすることでログワ村の発展も見込めますが、同時に養蚕事業本当の目的から村人の意識を逸らす事が出来るのではないでしょうか?

が同時に幾つも提供されるなら、それはもうですから。」

「なるほど、ログワ村を活性化させる策は養蚕事業を隠す目眩しにもなる、という事か。

王城での話し合いではあくまでログワ村の者たちは、養蚕事業に対して最小限の関わりで、という事だった。

だから繭を集めるのと絹糸を作るのに出た蛹を飼料にする仕事を依頼するぐらいだろうという方向でいたのだが、具体的な案はあるのかい?」




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