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ハドソン領 領都
面倒な事は丸投げに限る。
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前世の学校とこの世界の主に貴族の子息子女が通う学園が違うものだとは私も理解していたよ?あまり通った事が無いけれど。
でも、" 理科 "の授業って無いの?
それならそうと早く言ってよ。
まさかのはしたない女!
・・・いやいやいや、昆虫の交尾だよ?
何でそれではしたない?
貴族って愛人だの浮気だのやりたい放題なのに、表向きは思春期並の反応かっ!
思いがけず" はしたない女認定 "されて、納得出来ずに心の中で愚痴っていたら横からクリスが私の腕をツンツンと突いてくる。
「ティアナ、途中から声に出ているぞ。ククッ。」
そう言われてハッと口を押さえて前を向くとハドソン伯爵が苦笑いをしている。
「と、取り敢えず蚕の生態をキッチリ把握する事は養蚕事業を立ち上げるには必須だと思います。」
「そうかも知れないけれど、国としては私の方に丸投げをしてきそうな気がするよ?」
「たぶんそうなるとは思います。そこは領民にも屋敷の者たちにもとても慕われているハドソン伯爵様の腕の見せ所、あ、腕じゃなくて巧みな話術か。
それで上手く国に押し付けちゃって下さい。」
「・・・まさかの私に丸投げ。」
「ブハッ!」
ポツリと呟いたハドソン伯爵の言葉に吹き出すクリス。
「あ、丸投げって訳ではないです。ちゃんと理由がありますよ!
ログワ村にいる蚕の数はとても多いとは思いますが、それでも絹織物を作り続けるのに十分な数ではないと思うんです。
そうなるとたぶん他の土地にも蚕が居ないか?とか養蚕をしようとするでしょう?
その場合、売上額での報酬の配分て変わってくるだろうし、そうなると『契約の見直しは仕方ないよね。』、となると思うんですよねぇ。
だって他の土地で養蚕をして、繭の出荷や生糸作りをするにしても無償ではないですよね?
全て国か王族関係者の領地などで行ったとしても、最初の契約はハドソン領のみで繭を採取して出荷する事が前提じゃないですか。
他の土地で養蚕をした場合の取り決めは含まれていないでしょう?
織物業のコーナン侯爵の取り分は変わらないか、増える可能性はあるでしょうけれど、国とハドソン伯爵家の取り分は養蚕する地が増えれば増えるほど変わると思います。」
ログワ村には大量に蚕がいる、といっても、リスク回避も含めて別の場所でも養蚕をしていくのは確実だよね。日本も各地で養蚕をしていたしね。
「それはその通りだね。出来る事なら国か王家の直轄地でやりたいような事を言っていたよ。
あぁ、そういう事か。
ハドソン伯爵家が蚕の飼育環境や生態を調べてその情報を国に渡すよりも、ウチを通さない方が国としては好きに出来ると考える可能性がある、という事だね。
養蚕に適した場所は他にもあるだろう。
国としては自分たちの取り分を増やしたい、という多少の欲もあるだろうからね。
養蚕に関する調査を国が行いながら、土地を探して蚕の飼育を試していく事にウチの許可は要らないし、文句を言われたとしても『安定的にシルクの生産を行う為。』という大義名分もある。
他の土地での養蚕が上手くいけば、その土地にも報酬が発生するのは当然の事だ。
そうなると売上高ではなく、絹糸の出荷量で取り分は決まるだろうねぇ。」
そこら辺は国側の考えによるだろうけれど、どの道、ログワ村以外の土地で養蚕を試みるのは規定路線ではあると思う。
「ハドソン領が大々的に養蚕業をしていきたいなら別ですけれど、そうでないなら国に面倒な事は任せちゃった方がお互いに良いでしょう?
国は蚕の生態や飼育の知識も得て、絹糸の製法も含めれば、将来的には外交にも使えるじゃないですか。
それに元はハドソン伯爵家から提供された情報でも、追加で調査した分は国しか知らない、となったら、今度は情報を提供する立場になりますからね~。
名実ともに国主体の事業となっていくと思いますよ。」
養蚕とシルクでどの程度の外交に使えるかは分からないけれど、シルクがまだまだ一般には広まっていない事を考えれば、養蚕のノウハウは他国でも喉から手が出るほど欲しいものじゃないかなぁ。
外交に使うなら、正確な情報が必要になる筈だ。
そういう意味でも絹糸の製法だけではなく、蚕の生態や飼育に適した環境などはしっかりと把握しておかないといけない筈だ。
「なるほどね。うん、我が国でシルクが作られるようになったら、他の国は知りたいだろうねぇ。
シルクは何から出来ていてどうやって作るのか、と。
何の前触れもなく、いきなりシルクを生産しだしたらそれはそれは驚くだろう。
最初の数年は使わないにしても、我が国優位に交渉したい案件に使う事が出来そうだよね。
蚕や情報を譲渡するだけでもいいし、養蚕業の立ち上げに協力、というのを口実に人をどんどん送り込む、という事も出来る。」
あ~、そういう使い方も出来るね。技術提供やら支援とか言って、他国に入り込んでいくっていう、、、。
「兎に角、ハドソン領ではなく国が得する、という雰囲気で話を持っていけばいいんじゃないですかね?」
「いいね、それ!面倒な事は国に全部押し付けよう!
ログワ村の領民生活が守られて、ハドソン領が損をしないなら私はそれでいい!」
本心からそう思っているだろうな、という今日一番のハドソン伯爵の笑顔に私とクリス以外の人たちは呆気に取られている。
うん、そんな気はしてた。
周りの人は伯爵を慕うあまりに、彼を勝手に聖人君子のようなイメージで見ていたよねぇ。
領主としての務めはキッチリと果すし、領民を想う言葉に嘘は無いと思う。
だけど人にはあまり関心が無いように私には見える。自分の懐に入れた人以外にはね。
今回の件は国へ報告しない訳にはいかない上に、最初から国へ丸投げするとログワ村の人たちが土地を追い出されたり契約で縛られたりする懸念があったから対応しただけなのだと思う。
伯爵はシルクの事を知っても嬉しそうではなかったのを私は知っている。
何なら『国に報告しなくちゃいけない。』、と言っている時に一瞬、面倒そうな表情になっていたからね。
『面倒な事は国に押し付ければ良い!』、と笑顔のまま言い切った伯爵をもう一度チラリと見て、鞄に入っている手紙の内容を思い出す。
後に控えている面倒な事もハドソン領のことと認識してくれるといいなぁ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もありがとうございます。
でも、" 理科 "の授業って無いの?
それならそうと早く言ってよ。
まさかのはしたない女!
・・・いやいやいや、昆虫の交尾だよ?
何でそれではしたない?
貴族って愛人だの浮気だのやりたい放題なのに、表向きは思春期並の反応かっ!
思いがけず" はしたない女認定 "されて、納得出来ずに心の中で愚痴っていたら横からクリスが私の腕をツンツンと突いてくる。
「ティアナ、途中から声に出ているぞ。ククッ。」
そう言われてハッと口を押さえて前を向くとハドソン伯爵が苦笑いをしている。
「と、取り敢えず蚕の生態をキッチリ把握する事は養蚕事業を立ち上げるには必須だと思います。」
「そうかも知れないけれど、国としては私の方に丸投げをしてきそうな気がするよ?」
「たぶんそうなるとは思います。そこは領民にも屋敷の者たちにもとても慕われているハドソン伯爵様の腕の見せ所、あ、腕じゃなくて巧みな話術か。
それで上手く国に押し付けちゃって下さい。」
「・・・まさかの私に丸投げ。」
「ブハッ!」
ポツリと呟いたハドソン伯爵の言葉に吹き出すクリス。
「あ、丸投げって訳ではないです。ちゃんと理由がありますよ!
ログワ村にいる蚕の数はとても多いとは思いますが、それでも絹織物を作り続けるのに十分な数ではないと思うんです。
そうなるとたぶん他の土地にも蚕が居ないか?とか養蚕をしようとするでしょう?
その場合、売上額での報酬の配分て変わってくるだろうし、そうなると『契約の見直しは仕方ないよね。』、となると思うんですよねぇ。
だって他の土地で養蚕をして、繭の出荷や生糸作りをするにしても無償ではないですよね?
全て国か王族関係者の領地などで行ったとしても、最初の契約はハドソン領のみで繭を採取して出荷する事が前提じゃないですか。
他の土地で養蚕をした場合の取り決めは含まれていないでしょう?
織物業のコーナン侯爵の取り分は変わらないか、増える可能性はあるでしょうけれど、国とハドソン伯爵家の取り分は養蚕する地が増えれば増えるほど変わると思います。」
ログワ村には大量に蚕がいる、といっても、リスク回避も含めて別の場所でも養蚕をしていくのは確実だよね。日本も各地で養蚕をしていたしね。
「それはその通りだね。出来る事なら国か王家の直轄地でやりたいような事を言っていたよ。
あぁ、そういう事か。
ハドソン伯爵家が蚕の飼育環境や生態を調べてその情報を国に渡すよりも、ウチを通さない方が国としては好きに出来ると考える可能性がある、という事だね。
養蚕に適した場所は他にもあるだろう。
国としては自分たちの取り分を増やしたい、という多少の欲もあるだろうからね。
養蚕に関する調査を国が行いながら、土地を探して蚕の飼育を試していく事にウチの許可は要らないし、文句を言われたとしても『安定的にシルクの生産を行う為。』という大義名分もある。
他の土地での養蚕が上手くいけば、その土地にも報酬が発生するのは当然の事だ。
そうなると売上高ではなく、絹糸の出荷量で取り分は決まるだろうねぇ。」
そこら辺は国側の考えによるだろうけれど、どの道、ログワ村以外の土地で養蚕を試みるのは規定路線ではあると思う。
「ハドソン領が大々的に養蚕業をしていきたいなら別ですけれど、そうでないなら国に面倒な事は任せちゃった方がお互いに良いでしょう?
国は蚕の生態や飼育の知識も得て、絹糸の製法も含めれば、将来的には外交にも使えるじゃないですか。
それに元はハドソン伯爵家から提供された情報でも、追加で調査した分は国しか知らない、となったら、今度は情報を提供する立場になりますからね~。
名実ともに国主体の事業となっていくと思いますよ。」
養蚕とシルクでどの程度の外交に使えるかは分からないけれど、シルクがまだまだ一般には広まっていない事を考えれば、養蚕のノウハウは他国でも喉から手が出るほど欲しいものじゃないかなぁ。
外交に使うなら、正確な情報が必要になる筈だ。
そういう意味でも絹糸の製法だけではなく、蚕の生態や飼育に適した環境などはしっかりと把握しておかないといけない筈だ。
「なるほどね。うん、我が国でシルクが作られるようになったら、他の国は知りたいだろうねぇ。
シルクは何から出来ていてどうやって作るのか、と。
何の前触れもなく、いきなりシルクを生産しだしたらそれはそれは驚くだろう。
最初の数年は使わないにしても、我が国優位に交渉したい案件に使う事が出来そうだよね。
蚕や情報を譲渡するだけでもいいし、養蚕業の立ち上げに協力、というのを口実に人をどんどん送り込む、という事も出来る。」
あ~、そういう使い方も出来るね。技術提供やら支援とか言って、他国に入り込んでいくっていう、、、。
「兎に角、ハドソン領ではなく国が得する、という雰囲気で話を持っていけばいいんじゃないですかね?」
「いいね、それ!面倒な事は国に全部押し付けよう!
ログワ村の領民生活が守られて、ハドソン領が損をしないなら私はそれでいい!」
本心からそう思っているだろうな、という今日一番のハドソン伯爵の笑顔に私とクリス以外の人たちは呆気に取られている。
うん、そんな気はしてた。
周りの人は伯爵を慕うあまりに、彼を勝手に聖人君子のようなイメージで見ていたよねぇ。
領主としての務めはキッチリと果すし、領民を想う言葉に嘘は無いと思う。
だけど人にはあまり関心が無いように私には見える。自分の懐に入れた人以外にはね。
今回の件は国へ報告しない訳にはいかない上に、最初から国へ丸投げするとログワ村の人たちが土地を追い出されたり契約で縛られたりする懸念があったから対応しただけなのだと思う。
伯爵はシルクの事を知っても嬉しそうではなかったのを私は知っている。
何なら『国に報告しなくちゃいけない。』、と言っている時に一瞬、面倒そうな表情になっていたからね。
『面倒な事は国に押し付ければ良い!』、と笑顔のまま言い切った伯爵をもう一度チラリと見て、鞄に入っている手紙の内容を思い出す。
後に控えている面倒な事もハドソン領のことと認識してくれるといいなぁ。
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ここまでお読み下さりありがとうございます。
「いいね」やエールでの応援もありがとうございます。
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