王女殿下は家出を計画中

エドワードの乱心(2)

「宰相、父上に話がある。至急取り次ぎを求める」

執務室にいきなり現れたエドワードは、王への面会を要求した。

「殿下何事ですか？
只今、陛下はフレデリック殿下と式典の打ち合わせを」

「兄上も一緒になら、ちょうどいい。
直ぐ取り次げ！」

話を途中で遮り畳み掛けてくる。

宰相は説得は無理と判断した。
たまに押し掛けてくるこの第2王子は人の話を全く聞かないからだ。

「分かりました。　ご案内いたします」

執務室を出て２つ隣の陛下のいる部屋へと歩きだす。
扉の前でエドワード王子を待たせ中へ入った。

「お話し中失礼します、エドワード様が陛下にお話があると訪ねて来ております」

「エドワードが？」国王ハロルドは少し考えてから言った。
「わかった通せ」
その言葉を、聞いた第１王子フレデリックが顔を歪めた。

エドワードは部屋に入り、正面の１人用のソファーに座る父と、その左手に座る兄を交互に眺めた。

「エドワード、どうかしたのか？」

「父上、お願いがあります」
エドワードは兄とは反対の右側に座り、話を切り出した。

「母上がシルビアをガーゼリオへ嫁がせようと計画しているのを知っていますか？」

「前に話は聞いたが私は許るしていない。
それがどうかしたか？」

父が許可を出していないと聞き少しだけ安堵するエドワード。

「私もシルビアを他国へ出すのは反対です」

「ほう？」

「私とシルビアの婚約を認めて下さい！」


「「！！」」
「なんだと？」
「シルビアにいつも突っかかっているお前が？婚約？
ふざけてるのか？」
フレデリックが怒りを含んだ声をあげる。
エドワードを向ける目は兄弟を見るにしてはとても冷ややかで侮蔑の色も隠さない。

「兄上、オレは真面目に言っているのです」
エドワードは意外と冷静に受けとめる。

「シルビアを他国へ出さないとしても、お前と一緒になる必要があるのか？
それにシルビアはそんなこと望んでいないと思うのだが？」
そんな２人を冷静に見つめながら父王は言う。


「王族に生まれながら、シルビアは魔力が低く魔法でこの国に貢献出来ません。
あいつが出来る事はオレと結婚して、王家の血筋を継ぐ強い魔力をもつ子供を、生むことぐらいですよ」


「何を勝手な事を」フレデリックが今度は今にも掴みかかりそうな勢いで更に睨み付けた。

少したじろぐエドワードだか、負けずに睨み返す。
「私はこの国のために、言っているのです」

ハロルド王はエドワードをじっと見ていたが
「私は子供たちを犠牲にするつもりはないよ。お前が周りの噂をどのように解釈していたか知らないが、我々は先代の頃から、王族の近親者同士の婚姻を考え直すように働きかけている」

「そんな…嘘だ！」

「嘘ではない、それにシルビアに対してお前の対応は目に余る。そんなお前をシルビアと婚約させるなど、あり得ない」

ハロルド王はハッキリと反対の意思を示した。

「まずは、シルビアに対しての言動を改めたらどうだ」
ハロルド王の言葉で冷静さを取り戻したフレデリック殿下はエドワードに言った。

「オレはシルビアを、諦めない！」
そう叫んでエドワードは部屋を飛び出していった。