きっと、君は知らない

mahiro

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本当はグレーでも良かったかもしれない。
でもあえてそうしなかったのは……。
「イ」という発音のとき、口角が上がり、目の前の……先輩によく似たムシューニの笑ったような顔が見れるかもしれないという馬鹿げた理由だ。
もうひとつ馬鹿げていることを上げるとしたら、グレーは先輩の瞳の色で俺にとって大切なものを指しているということ。
俺の名前なのに全て先輩に繋がっているって我ながら酷いと思うが、どうせ普段使わないものだし良いかと開き直るしかない。


「グレイか。よろしくな!」


そう言って先輩そっくりな顔で満面の笑みを浮かべながら手を差し出してきたムシューニに、俺は凝り固まった顔をわずかに弛めながらその手を掴んだ。


「こちらこそよろしくお願いします」


この人に会ってから、いやもっと前から俺は先輩のことばかり考えていたけれど、異世界に転生してからもそんなことばかり考えているのは自分でもどうかと思っている。
思っているけれど、止められないのは先輩とムシューニが似ているからなんだろうな。


「お、そうだ。グレイも能力使えるんだから一緒に旅出るか?」


手を離そうとしたタイミングでそう切り出され、俺は一瞬固まった。
いやいや、そんなの無理だろう。


「使えるって言っても俺、何も分かってないですよ」


「んなもん旅しながら使えるようになれば良いだろう。どうせ、長旅になるし、あいつらもいるしな」
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