きっと、君は知らない

mahiro

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初めて会ったとき、この人は大切な家族を奪っていく人だと思った。
兄はその人のことを心から大切にしていて、大切だから私たち家族にその人を紹介したのだと悟った。
そんなの絶対許せない。
私たちから奪っていくなんて。
そんな醜い嫉妬から、私はあの人に言ってしまったのだ。


「お兄ちゃんを傷つけないで!」と。


あの人は特別お兄ちゃんを傷つける行動はしていなかったし、家族からお兄ちゃんを引き離そうとしたわけでもないのに、気づいたらそう口にしていた。
聞けばお父さんからもその人は似たようなことを言われたようだった。
その人は私たちに対して怒っても良いのに、困ったように笑いながら言ったのだ。


「分かりました。中学を最後に先輩との関わりを経ちます」と。


そしてあの人は実際にそうした。
徹底的にお兄ちゃんとの接点をなくし、関わりを持たなくなった。
そうしている間にお兄ちゃんは別の人と付き合い、その人と最期を迎えてしまった。


私は後悔した。
何であんなことを言ってしまったんだろう。
あんなこと言わなければ、お兄ちゃんを看取ったのはあの人の筈ったのに。
お兄ちゃんの恋人はあの人だったかもしれないのに。


「………ごめんなさい、私たちのせいで貴方の人生が」


お兄ちゃんと貴方と繋がる筈の人生が。


そんなつもりなかったのに、子供染みた嫉妬が引き起こしてしまった。
償おうにも貴方はひとり旅立ってしまった。
誰にも看取られることもなく。


ねぇ、文句のひとつでも言ってくれれば良かったのに。
約束なんて破ってお兄ちゃんに会いに行って言えば良かったのに。


私たちのこと恨んでくれれば良かったのに、貴方は最期まで恨んでくれなかった。


「…………ごめんなさい、○○さん。ごめんなさい...……来世があるなら、お兄ちゃんと幸せになって。私もお父さんも絶対、貴方のこと反対なんかしないから」


そう心から望んだ。


まさか、その願いがひとつの世界を形作るとは思いもしなかった。
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