全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子

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第二章 ― 遥斗 ―

広がる世界②

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 それから何日か経ったある日の夕方、優が来ているときに、真奈美と久しぶりの郁人先生も来た。

「遥斗、元気か?」と聞かれ、頷く。

 郁人先生は、俺の様子を観察するように見た。言葉通りには受け取らない人なんだ。

「そうか。なにかあったら言えよ?」
「はい。ありがとうございます」

 俺がそう言うと、郁人先生がなぜか目を剥いた。
 その様子を見て、真奈美がおかしそうに言った。

「先生、遥斗はお礼を言うことを覚えたのよ。優ちゃんに躾けられて」
「「そんなんじゃ……」」

 優と俺の声が重なり、真奈美先輩が吹き出した。
 俺たちの様子を郁人先生は興味深そうに見ていた。

「そうだ、佐伯。コンテストに出そうと考えている写真を見せてくれないか? あとなんのコンテストなのか。顧問としてそれくらいは知っておかないとな」

 そう郁人先生が言って、初めて写真同好会の顧問が郁人先生だと知った。

「はい。市の募集している『私の町』という写真コンテストなんです」

 優はそう言って、前に見せてもらった屋上から街を眺める俺の写真を見せた。
 腹いっぱいになって、満足そうに口を緩めている自分が少し恥ずかしい。
 優は振り返り、俺に同意を求める。

「遥斗先輩、これをコンテストに出していいですか?」
「あぁ、写真のモデルになるって約束だからな」

 モデルになる代わりに弁当を作ってもらっているはずが、あまりモデルをしていない気がしていたので、むしろ役に立ってよかった。

 その写真を真奈美も覗き込んだ。

「へぇー、優ちゃんって本当に写真をやっているんだー」
「もちろんですよ。どうしてですか?」
「遥斗に近づく口実かと思っていたわ」
「えぇー、反対ですよ! 写真を撮っていたら遥斗先輩がいただけです」

 優の言葉に思わず笑う。

「あはは、遥斗、あなたがついでだって」
「あぁ、なんか新鮮だな」
「おもしろいな、佐伯は」

 他の二人も同じことを思ったのか、笑っている。

 こんなに意識されていないのは新鮮で、清々しさを感じるほどだ。
 女というだけで、構えるくせがついていたが、優には必要ない気がして、肩の力が抜けた。


「そういえば、先生、このパソコンってネットに繋いでいいんですか?」
「あぁ、いいよ。WiFiに自動接続になっているはずだ」
「わぁ、便利! 遥斗先輩も調べものに使ったら?」

 優と郁人先生が会話していると思ったら、突然話題を振られた。

「特に調べるものはない」

 パソコンなんて、中学の授業で使ったきりだ。

「でも、画家の絵とか技法とか調べたくなりません? あと描いてみたい景色とか」

 優がそう言うから、こないだのギャラリーを思い出した。
 確かに、他の人の絵を見るのは勉強になる。
 優が美術館のホームページをスクロールすると、いろんな絵画の解説が載っていた。
 絵も本で見るより鮮明だ。

「展覧会に興味があるなら割引券とか招待券とかありますよ?」

 俺が興味を示したので、優が言う。行けたら行ってみたいが、そもそも交通費が出せない気がする。
 そんな雰囲気を感じとったのか、郁人先生が話題を変えてくれた。

「佐伯は絵も好きなのか?」
 
 優の叔父さんはギャラリーをやっていて、その付き合いで美術館の招待券やらをもらうらしい。
 うらやましい限りだ。
 でも、俺にはネットでも十分か。
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