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1 掃除機、無いんですか!?
しおりを挟む北條 真(ほうじょう まこと)は、困惑していた。
もう30代も半ば、滅多なことでは取り乱したりしないアルファの男が、だ。
端正な顔の眉間をひそめ、インテリジェンスパーマの髪に指を差し入れ、口をぽかんと開けていた。
場所は、彼が店長を務めるボーイズ・バーの事務所応接室。
真ともう二人、副店長と人事部長が同席していた。
今日は、新しくスタッフを一人雇い入れるための、面接日なのだ。
これまでに、もう6人の候補者たちが面接を済ませていた。
皆、ぴしりとスーツに身を包み、それぞれのオーラを放って自己PRをしていった。
しかし、誰もが魅力的だが、今一つ個性に欠ける。
そんな印象を、真は彼らに持っていた。
そこに、その個性に富みすぎる少年が現れたのだ。
「津川 杏(つがわ きょう)です。よろしくお願いします!」
彼は、スーツを着てはいなかった。
スウェットにジーンズ、それからエプロン。
そして手には、大きなパイナップルを持っていた。
真以外の二人は、立ち直りが早かった。
しどろもどろながら、質問を開始していた。
だが、真は何も言えなかった。
ユニークすぎる杏の姿に、すっかり目を奪われていたのだ。
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