フラン

大波小波

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「二次選考通過おめでとう、秀美くん!」
 AV撮影スタッフの組員たちに、秀実は胴上げされていた。
「わぁあ! あ、ありがとうございます!」
 そっと床に下ろしてもらい、秀実はようやく笑顔を見せた。
「これも、皆さんのおかげです」
「いや、秀実くんの実力だよ」
 いよいよ、最終選考だな、と皆でざわめき合った。
「最終では、どんなことやるのかな。やっぱり、演技力を見られるのかい?」
「一応、台本をいただきました。この中から、どこかのシーンがテストで出るそうです」
 うわぁ、とその場の皆が嫌そうな顔をした。
「青原監督がやりそうなテストだな」
「俳優泣かせの青原、だね」
 秀実くん大丈夫? の声に、本人はいたって元気だ。
「僕、がんばります!」
 盛り上がる撮影班の組員たちと、秀実。
 士郎は、その様子を笑顔で眺めていた。
 カフェのマスター・真田においしいコーヒーを淹れさせて、ご機嫌だった。
 そんな士郎だったが、目線は秀実を見たまま、真田に話し始めた。
「先日の会合で、仁道会の兼田(かねだ)さんに声を掛けられたよ」
「若頭の兼田 勝大、ですか」
「ウチの傘下に入らないか、だとさ」
「スカウトは、水流だけではない、ということですか」
 くっくっと、真田は喉で笑った。
「断れば、抗争、かな。それだけは、避けたい」
「打つ手を、考えましょう」
「うん」
 他に漏らすなよ、と釘を刺し、士郎は秀実の元へと歩いて行った。

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