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第56話 ニューワールド
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朝は軽い運動のような作業だったな。お昼も家でラーメンにしとくか。
そんなことを考えながら、草原にポツンと立つトビラをくぐって部屋に戻った。
広い廊下がお出迎え。金持ちの豪邸みたいな広さだ。ボロいけど。
廊下を歩き、無駄に大きくなった部屋に入ると……何かいる。
バスケットコート1面分くらいの広さの部屋。そこに……5つか、5つの人形?30cmくらいの人形だ。
何故だ?誰が置いた?とりあえず一つ手に取ってみるが、意外と重量感があって硬い。関節が滑らかになったブリキ人形みたいな感じだな。
気色悪い。が、最近見覚えがあるぞ。これは土人形や雪人形と同じ類のものじゃないのか?
なぜ部屋に?ここは現実世界だぞ?
現実――そう思いたいが、この大きな部屋はどう考えたってファンタジーだ。
もしかしてこの部屋が異世界化してしまったのか?あの黒団子は異界化を進行させるアイテム?
もしこの仮説が合っているなら、コイツらはモンスターということになる。
だが、ブリキ人形達に動きはない。機能が無いのか、動力がないのか、それとも使命がないのか。ただそこに立ち、拾い上げても動かない。
ちょっと試してみるか。
「ゴーレム使役。右手を上げろ」
スキルを発動して命令してみた。すると握っていたブリキ人形の右手が動き出し、しっかりと上げられた。
やはりただの人形ではなかったか。機能と動力はあるようだ。動かないのは使命・命令が無いからなんだろう。
あちらの世界のゴーレム(人形)は俺を攻撃してきたし、使役も効かなかった。こいつらは攻撃してこないし使役できる。
この違いはとりあえず世界が違うからで済ませてもいい。だが、あちらに俺を攻撃しろと命令した者がいたかもと考えると少し怖いな。
「ここにいる仲間を全部集めてこい」
床に置いて命令してやると、ブリキ人形はよたよたと歩きだした。近くにあった他のブリキ人形に近づき、ひょいと簡単に持ち上げてしまう。そして抱えたままよたよたと戻って来た。
体の制御能力は低いが、出力自体は高いのかもな。体も小さいが、重い物も持てるなら便利かもしれない。
「お前も一緒に仲間を集めてこい」
新しいやつにも命令した。すると今度のやつは更に動きが遅い、今にも転びそうだ。
同じように見えて別の目的で作られた物なのかな。個性?いや、モンスターにそんなことを考えても仕方ないか。
ブリキ人形どもは何度か往復して、合計10体になったところで動きを止めた。
最初に見たときと同じ。直立してピクリとも動かない。
こいつらには使命が必要なんだな。仕方ない、哀れなブリキ人形の為に俺が使ってやろう。
「部屋の掃除・片付けをしておけ」
スキルを発動すると再び動き出した。浄化で綺麗にしているつもりだが、意識しない部分もあるだろう。期待しているぞ。俺専用ル○バとなるのだ。
働き始めたブリキ人形を眺めていると、よたよた動きながら部屋の隅に移動して何かを……あれ浄化使ってない?
え?浄化ってそんなマストなスキルなの?基本装備?なんかショックだわ。
まぁそれでも、効率的に掃除してくれるならいいだろう。
ヨタヨタと動くゴーレム達は細かいところを掃除していき、不意にぴょーんと飛び上がった。1m以上は軽く飛んでいる、やっぱりパワフルだな。
高いところにも登って掃除、適当に置いてある野菜も整理、台所も綺麗に使いやすく片付けられていく。
こいつら有能すぎて怖いぞ。
「お前ら、ラーメン作れるか?作ってみろ」
新たな命令を与えると、コンロで鍋を火にかけ、油を垂らし、解体していた鶏肉を切り分けて焼きだした。小さな体が火に触れているが平気そう。
軽く焦がしてから水を加え、野菜も加え、ラーメンの袋を取り出して投入する。
一体の人形が中心となり、複数の人形に指示を出しているように見える。シェフみたいだ。
マジでどうなってんの?細かい調味料が無いから使ってないが、色々揃えば勝手にやってくれるのでは?
5分と経たずに完成したラーメン。どんぶりに移され、ちゃんと箸を添えて俺のもとに運ばれてきた。別のゴーレムは冷蔵庫から冷たい美味しい水道水まで持ってきている。
これは素晴らしい!想像以上だ!
もっと様々なことが出来そう。道具と材料さえあれば部屋を便利にしてくれるのでは?これもある意味DIYだな。
「お前たち意見や要望はあるか?」
質問を投げてみたが反応は無い。そりゃ人形だもんな。
「休んでいろ。よくやった」
新たな命令を出すとみなそのまま動かなくなった。
これはこれで悪い気がするんだよな。働いているのと止まっているの、どちらが嬉しいんだろう?
いやいや何を考えているんだ。ただのブリキ人形、モンスターだぞ。俺がスキルを持っていなかったら破壊するだけの存在だ。
……破壊したら何かドロップするのかな?世話になっちゃったし、流石に壊すのは気が引けるなぁ。
現実世界に現れた、使命を持たないモンスター。
もっと警戒すべきだったのに、この時の俺は簡単に受け入れてしまっていた。
言い訳すると、あの世界に入ってからの俺は、頭がおかしくなっていたんだ。
俺はファンタジーに染まっていた。
そんな俺の回りがファンタジーに侵食されていくのは当然だった。
そんなことを考えながら、草原にポツンと立つトビラをくぐって部屋に戻った。
広い廊下がお出迎え。金持ちの豪邸みたいな広さだ。ボロいけど。
廊下を歩き、無駄に大きくなった部屋に入ると……何かいる。
バスケットコート1面分くらいの広さの部屋。そこに……5つか、5つの人形?30cmくらいの人形だ。
何故だ?誰が置いた?とりあえず一つ手に取ってみるが、意外と重量感があって硬い。関節が滑らかになったブリキ人形みたいな感じだな。
気色悪い。が、最近見覚えがあるぞ。これは土人形や雪人形と同じ類のものじゃないのか?
なぜ部屋に?ここは現実世界だぞ?
現実――そう思いたいが、この大きな部屋はどう考えたってファンタジーだ。
もしかしてこの部屋が異世界化してしまったのか?あの黒団子は異界化を進行させるアイテム?
もしこの仮説が合っているなら、コイツらはモンスターということになる。
だが、ブリキ人形達に動きはない。機能が無いのか、動力がないのか、それとも使命がないのか。ただそこに立ち、拾い上げても動かない。
ちょっと試してみるか。
「ゴーレム使役。右手を上げろ」
スキルを発動して命令してみた。すると握っていたブリキ人形の右手が動き出し、しっかりと上げられた。
やはりただの人形ではなかったか。機能と動力はあるようだ。動かないのは使命・命令が無いからなんだろう。
あちらの世界のゴーレム(人形)は俺を攻撃してきたし、使役も効かなかった。こいつらは攻撃してこないし使役できる。
この違いはとりあえず世界が違うからで済ませてもいい。だが、あちらに俺を攻撃しろと命令した者がいたかもと考えると少し怖いな。
「ここにいる仲間を全部集めてこい」
床に置いて命令してやると、ブリキ人形はよたよたと歩きだした。近くにあった他のブリキ人形に近づき、ひょいと簡単に持ち上げてしまう。そして抱えたままよたよたと戻って来た。
体の制御能力は低いが、出力自体は高いのかもな。体も小さいが、重い物も持てるなら便利かもしれない。
「お前も一緒に仲間を集めてこい」
新しいやつにも命令した。すると今度のやつは更に動きが遅い、今にも転びそうだ。
同じように見えて別の目的で作られた物なのかな。個性?いや、モンスターにそんなことを考えても仕方ないか。
ブリキ人形どもは何度か往復して、合計10体になったところで動きを止めた。
最初に見たときと同じ。直立してピクリとも動かない。
こいつらには使命が必要なんだな。仕方ない、哀れなブリキ人形の為に俺が使ってやろう。
「部屋の掃除・片付けをしておけ」
スキルを発動すると再び動き出した。浄化で綺麗にしているつもりだが、意識しない部分もあるだろう。期待しているぞ。俺専用ル○バとなるのだ。
働き始めたブリキ人形を眺めていると、よたよた動きながら部屋の隅に移動して何かを……あれ浄化使ってない?
え?浄化ってそんなマストなスキルなの?基本装備?なんかショックだわ。
まぁそれでも、効率的に掃除してくれるならいいだろう。
ヨタヨタと動くゴーレム達は細かいところを掃除していき、不意にぴょーんと飛び上がった。1m以上は軽く飛んでいる、やっぱりパワフルだな。
高いところにも登って掃除、適当に置いてある野菜も整理、台所も綺麗に使いやすく片付けられていく。
こいつら有能すぎて怖いぞ。
「お前ら、ラーメン作れるか?作ってみろ」
新たな命令を与えると、コンロで鍋を火にかけ、油を垂らし、解体していた鶏肉を切り分けて焼きだした。小さな体が火に触れているが平気そう。
軽く焦がしてから水を加え、野菜も加え、ラーメンの袋を取り出して投入する。
一体の人形が中心となり、複数の人形に指示を出しているように見える。シェフみたいだ。
マジでどうなってんの?細かい調味料が無いから使ってないが、色々揃えば勝手にやってくれるのでは?
5分と経たずに完成したラーメン。どんぶりに移され、ちゃんと箸を添えて俺のもとに運ばれてきた。別のゴーレムは冷蔵庫から冷たい美味しい水道水まで持ってきている。
これは素晴らしい!想像以上だ!
もっと様々なことが出来そう。道具と材料さえあれば部屋を便利にしてくれるのでは?これもある意味DIYだな。
「お前たち意見や要望はあるか?」
質問を投げてみたが反応は無い。そりゃ人形だもんな。
「休んでいろ。よくやった」
新たな命令を出すとみなそのまま動かなくなった。
これはこれで悪い気がするんだよな。働いているのと止まっているの、どちらが嬉しいんだろう?
いやいや何を考えているんだ。ただのブリキ人形、モンスターだぞ。俺がスキルを持っていなかったら破壊するだけの存在だ。
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現実世界に現れた、使命を持たないモンスター。
もっと警戒すべきだったのに、この時の俺は簡単に受け入れてしまっていた。
言い訳すると、あの世界に入ってからの俺は、頭がおかしくなっていたんだ。
俺はファンタジーに染まっていた。
そんな俺の回りがファンタジーに侵食されていくのは当然だった。
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