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20.レオン・ローゼンタール
しおりを挟む俺は今保健室でサボっている。
最近は公務が忙しく、そういう時はこうして息抜きに授業を抜け出して保健室で仮眠を取ることも少なくない。
普段通り、誰にも気づかれたくないため気配をなるべく殺した状態でいると、不意に保健室に誰かがやってきた。
どうやら薬を探しているようで、その声は俺が会いたくてたまらない人物だった。
(ノエル…!!)
気づいて!と隠していた気配を全面に出す。
だがノエルは気配には気づいてもこちらを確認するつもりがないようだ。
それなら…
「んん…」
声と寝返りでアピールしてみる。
寝ていると思わせるためにも目はつぶっているが、こちらを見た気配を感じる。
こっち来て…!という祈りが通じたのか、おそるおそるといったかんじでこちらに来たノエルがベッド脇に座る。
ああ、近くにノエルがいてくれてる…
それだけで疲れがふっとぶ気がした。
それなのに…
まさかの、頭を撫でてくれてるではないか。
(すごいご褒美だ…)
ああ、今すぐ起きて抱きしめたい。俺もノエルの頭なでなでしたい。
それでもこのひと時を終わらせたくなくて、寝たフリを続ける。
ふふ、寝てる相手に向かってお礼をしてるのもかわいいなぁ。
あの日俺の腕の中でこっそり泣いてたのもたまらなくかわいかった。
それだけはあのクソ兄に感謝だ。
ノエルを抱きしめていたあの時、自分の気持ちに気づかないフリをするのはもう潮時だと感じた。
俺はずっと、幼少の頃からただ1人、この存在が気になって仕方なかったのだから。
一時は好きなんかじゃないと敢えて冷たい感情で誤魔化していた苦い思い出もあるが、今ならそれも好意の裏返しだったのだとわかる。
(…もう、間違えない)
あの日ノエルが言われるがまま俺の部屋に来てくれていたら正直我慢できたかわからない。
こうして触れるのはあの日以来だな、と幸せを噛み締めていると、手が離れそうになる。
離れてほしくなくて彼の服の袖を思わず掴んでしまったが、起きてるとバレるとまた壁を作られてしまう可能性がある。
今はそうなってしまうことがすごくもったいなく感じた。
ノエルは一瞬驚いたように動きを止めてこちらを確認したが、俺が完璧な寝息を立てると頭を撫でるのを再開してくれた。
そうして穏やかな時間を過ごすことで俺の疲れは完全になくなった。
不意に、ノエルの手が止まった。
少しずつ目を開けるといつの間にかノエルもベッドに突っ伏して、腕を枕に寝ている。
「…かわいいやつ…」
起き上がって、今度は俺が優しく頭を撫でる。
片手で覆ってしまえそうなほど小さい頭に触れ、ふわふわとしたプラチナゴールドの髪の感触を堪能する。
この存在をずっと囲い込んでおきたいのに、大事にしたい気持ちとすべて奪ってしまいたい気持ちとがせめぎ合ってしまう。
少しでも接点がほしくて教室にまで乗り込んだがあれは良くない一手だった気がする。
(ノエル、少し顔が引きつってたもんな…)
そんな顔をしてほしいわけではない。
怖がらせずに、でも確実に…俺のものにするんだ。
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