おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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第二部 第五章 成長と暗雲

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 商店街に向かって歩いていくと定住先のない冒険者たちが宿代わりに使っている歓楽街に近い場所にさしかかった。

 すると、前方にボロボロの丈の短いメイド服を着た若い少女が重そうな荷物を背負って歩いていたのが目に入った。

 どこの家のメイドだろうか……。ずいぶんとみすぼらしい格好をしているが、それにしてもあの丈の短さだと、あの姿だと襲ってくださいと言って回っているようにしか思えない。

 ブラックミルズの治安は、多少良くなったものの、お世辞にも煽情的な格好をした少女が独り歩きできるほど良い場所でもない。

「前の子、見ない顔ね。最近になって雇われた子かしら」

 商売柄、ブラックミルズでメイドを雇える裕福な家のことをほとんど知っているメリーも初顔の子であったようだ。

「ファーマ、手伝ってくるー!」

「ちょ、ファーマ!」

 ファーマが止める間もなく、ビュンと駆け出し、前を歩いていた少女に声をかけていった。

「ねぇ、重そうだから、ファーマが手伝ってもいいー?」

 話しかけられた小柄な少女がびっくりしたような顔をしてファーマを見ていた。

「えっ! でも、あのこれはわたくしが……」

 手にしていた籠の一つをファーマが持つと、少女が戸惑った顔を浮かべていたので、すぐに声をかけることにした。

「すまない。うちの連れが重そうな荷物を運ぶ君を見かねて手伝いたいと言い出してね。止める暇がなかった。良ければその子に手伝わせてやってくれ。もちろん、俺たちもだけどな」

 キョトンとした顔で俺の説明を聞いていた少女は、ボロボロのメイド服に見合わぬ垢抜けた顔立ちをしている子で手には綺麗な紋様を刻んだ指輪を大事そうにはめているのに気が付いた。

「え……。でも、これはわたくしが頼まれた仕事ですので……。それに他の人には触れさせるなとのメイド長からのお達しがありますから、お手伝いして頂くわけには……。せっかくのお申し出ですがお断りさせてもらいます」

「そうなのー。怒られちゃうなら仕方ないかー」

 すまなそうにファーマに頭を下げた少女は籠を受け取ると、商店街の方へ向けて歩き出していく。

 だが、やはり荷物の量が重すぎるようでフラフラと左右に揺れていて見ていてハラハラする。

 このまま、放っておいて怪我でもされたらなんか嫌だから、袖擦り合うのも多少の縁ってことで目的地も同じようだし一緒に行くことにした。

 フラフラとしている少女が背負っている荷物を軽く支えてやる。

 すると、それまでのふらつきはなくなりまっすぐになった。

「えっと、さきほども申し上げましたが……」

「ん? ちょうど行き先が同じようなんでね。一緒にいこうか。昼間とはいえ、この辺りは余り治安がよろしくない場所でね。若い子が一人で重い荷物を持ってフラフラしてたら、襲ってくださいって言ってるようなもんだからな。悪いが手伝させてくれ」

「ファーマもお手伝いー!」

「私も持つ」

「安心して、グレイズさんは変な人じゃないから。ここら辺の顔役みたいな人でね。一緒にいれば、変な虫が寄ってこないわ」

「そうです。グレイズさんは紳士なんで安心してください」

 みんなも少女のことが気になっていたようで、ファーマとカーラは手の荷物を持ち、アウリースとメリーは少女を安堵させようと話しかけていた。

 少女はキョロキョロと周りを見ていたが、やがて諦めたようで、ふぅとため息を吐いた。

「では、皆さんのご厚意に甘えさせてもらうことに……」

「行先は商店街のどの店だい? 送っていくよ」

「色々と回らないといけませんので、商店街までご一緒していただければ、あとはわたくしが」

  あまり好意の押し付けも良くないと思い、お手伝いは少女が言った商店街の入り口までにしておくことにした。

「オッケー。なら、背中の重そうなんで、君を運ぶのは俺の担当にしておくぞ。ここまで持ってくるのも骨が折れただろう。商店街まで休憩していていいぞ」

「あっ!」

 少女ごとひょいと持ち上げて肩に担ぐと、みんなで商店街に向かって歩き出していた。


 メンバーの皆とワイワイしゃべりながら少女を担ぎ歓楽街を抜けて、商店街の入り口が見えてくる。

 ここから先は街に住む住人が数多くいる地域のため、歓楽街に比べれば悪さする輩もだいぶ減るはずだ。

「すみません、色々とお世話をおかけしたようで……。そういえば、まだ名乗っていませんでしたね。わたくしメラニアと申します。今日はお手伝いしていただきありがとうございました」

 入り口まできたところで、メラニアを下すと彼女は荷物を受け取りお礼を述べて頭を下げていた。

 すると、背後からヒステリックな叱責の声が飛んできた。

「メラニアっ!! 私は大切なご主人様の品物を他人に触れさせるなと申したはずっ! 何ゆえ、下賤な冒険者如きに触らせているのっ!」

「あうっ!」

 色気が過剰なメイドが、数名のメイドたちとともに俺たちの背後からツカツカとメラニアに近づくと、パンと頬を張って、バランスを崩したメラニアが地面に倒れ込んだ。

 きっとメラニアの上司であるメイド長なのであろうと思われるが、やることが少し暴力的すぎる。

 もう一発平手がメラニアに振り下ろされそうだったので、思わず間に入ってメイド長の手を掴んでしまった。

「くっ! 邪魔をするとは! 冒険者風情が出しゃばるところじゃないわ」

 手を止められたメイド長がキッと眼を吊り上げて俺を睨みつけてくる。

「すまんな。彼女はキチンと断っていたんだ。それを俺たちが勝手に手伝っただけなんだよ。そちらの事情を知らずに手を出してしまったことは謝罪させてくれ。メラニアは悪くないんだ」

「そのようなことはどうでもいいの! この子が断り続けなかったことが大変なことなのよ。上役である私の言いつけを守ることができなかったことへの折檻であり、赤の他人の貴方たちが口を出す問題ではないわ!」

 メイド長は俺に握られた手を振りほどこうと、ヒステリックに叫びながら、身を捩じらせていた。

「マリアン様、申し訳ありません。言いつけを破ったのはわたくしです。お仕置きは甘んじて受けます。その方たちはご厚意でわたくしを助けて頂いただけです」

 地面に倒れたメラニアが、額を地面に擦りつけてメイド長に謝罪を行っていた。

 その姿を往来の人が物珍しそうにチラ見していく。

「とりあえず、ここで余り大っぴらに事を荒立てるのは、あんたのご主人様の評判を下げることになると思うんで、手を収めてくれないだろうか」

 メイド長は周囲に視線に気づいたようで、俺の言葉に従い手の力を収めていく。これ以上、公衆の面前で彼女を叩く可能性はないと判断したため、手を放してやった。

「し、仕方ない。メラニアっ! 頭を下げている暇があったら、すぐに荷物を持って私の後に続きなさいっ!」

 メイド長は頭を下げて謝罪しているメラニアに一瞥もくれずに足早に商店街の方へ向かって歩いていく。

「は、はい。ただいま追い駆けます。皆さん、お手伝いありがとうございました」

 重い荷物を背負いなおして、立ち上がったメラニアがちょこんと俺たちに向けて頭を下げていくと、足早に立ち去ったメイド長たちの後を追って商店街に消えていった。

「それにしても、どこのメイドだろうか……。メイドたちのトップであるメイド長があんな……」

「メイド長も見ない顔ね。本当にどこの家のメイドかしら」

「最近来た貴族、ギルドマスターの家くらい。新顔、そこの家の可能性高い」

「メラニアさん、叩かれていたね。痛くなかったかなー。グレイズさん、ファーマたち悪いことしちゃったから、メラニアさん怒られたのー?」

「それも、公衆の面前でとは……可哀想すぎます」

「メイドの躾と言われてしまえば、俺らが口を出せなくなっちまうからなぁ。メラニアには悪いことしちまったな……」

 俺がメイド長の手を止めたため、メンバーたちも合えて騒ぎを大きくしないようにと配慮してくれて黙っていてくれたが、メラニアたちが立ち去るとメイド長の行為に対して憤慨しているようである。

 だが、俺たちが他人の家のルールに口出しできる立場ではないことも理解しており、ただメラニアの心配をしてやれるだけであった。
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