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第二部 第七章 街の未来
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しおりを挟む「それはそうと、お前がスポンサー制を復活させたことで、商店街の連中が若い冒険者たちを後援しようって空気になってきているぞ。十代の若いパーティー中心にスポンサー打診が出されたようだ。まぁ、お前のパーティーとは違いこっちは正式に屋号を入れるやつだがな」
ジェイミーの言った若手を応援するスポンサー契約の話はメリーからも聞かされていた。うちのスポンサー契約が冒険者間で話題になったことで、商店街の連中も自信を持ったようで数組ほど話を持っていっているらしい。
若い冒険者の連中も一番苦労する装備代の捻出に対して、商店街がバックアップしてくれると聞き、喜んでいたとメリーから聞かされている。
その際、商店街と冒険者間で取り交わした約定はメリーが口を酸っぱくして冒険者たちに教え諭したこともあり、スポンサー制が廃止に追い込まれた事態を二度と引き起こさないよう俺もしっかりと目配りをしておくつもりである。
「スポンサー制の復活で若い奴らが背伸びすることなく冒険者としての実力を磨いていけるようになるといいな。昔のブラックミルズみたいに」
「懐かしい話だな。オレらがクソガキだった頃の話だぞ。街の治安が良くて、スポンサーの後援受けた冒険者がダンジョンに潜って稼ぐ時代は」
俺とほぼ同じ歳であるジェイミーが懐かしそうな顔で昔を思い出していた。
丁稚奉公でこの街に着た頃は、ジェイミーが言った通り、ブラックミルズも治安が良く、ベテラン冒険者や駆け出し冒険者がお互いに助け合いつつ、商店街も冒険者を若いパーティーを後援して、みんなでダンジョンの探索を進めていた時代だった。
それが俺が冒険者になった頃には犯罪者まがいの冒険者が歓楽街にたむろし、冒険者ランク上げ優先、火力至上主義、効率化っていうダンジョン攻略法なる奇怪な話が冒険者間に広がり、商店街と冒険者の関係は最悪。ダンジョン探索は個人パーティーが各々勝手に進めるという暗黒時代とも思われる時期であった。
そして、今また時代は変わろうとしている。昔のブラックミルズにあった皆でダンジョンを探索するという意識が戻りつつあり、お互いが助け合ってダンジョンの困難に立ち向かおうという連帯が芽生え始めてきていたのだ。
「この流れをもっといい方に加速させていきたいな。そうすれば、ブラックミルズは昔よりももっといい街になると思うぞ」
「なら、グレイズが中心になってグイグイと進めていくんだな。ムエルたちの引き起こした事件の余波でブラックミルズの上位の冒険者はほとんどが逮捕されたか、捕縛を恐れ逃げ去ったか、パーティーが解散されて他の街に移ったかで居なくなっちまってる。Sランク冒険者なんて片手で数えるくらいしか残ってないからな。その中の一人だと自覚はしてくれよな」
「そういえば、そんなようなことをアルマも言っていたな。上位の冒険者が不足しているって騒いでいた気もする」
「不足じゃなくて居ねえって話だ。今のブラックミルズの冒険者ギルドに登録している冒険者で深層階に潜ったことのあるのはほんの一握りの奴らしかいねえぞ。今のギルドマスターも闇市に関わっていた冒険者の摘発を俺よりも更に厳しくやったからな。大半が中堅か駆け出しの冒険者になっている」
ムエルの起こした事件はブラックミルズに停滞していた濁った水を一掃することになったが、それとともに新たな問題も引き起こしているようだ。
実力を持ったベテランの欠如という新たな問題が発生しており、冒険者自体の数は前とあまり変わらないが深い階層に潜れる者たちがほとんど存在しなくなっていたのだ。
「そうか。ベテラン不在か。まぁ、こればかりは地道に増やしていくしかないと思うぞ。冒険者ギルドが納品依頼料の増額もしたことだし、実力と資金を貯めた中堅たちが育つはずさ」
「まぁ、今のところ冒険者ギルドも売り上げが右肩上がりらしいんで領主からのお叱りもないしな。中堅どころが成長するまで我慢のしどころってところか」
「ああ、そういうことだな。ダンジョン内での補給ポイントもうちが開設したし、昔よりは深く潜れるパーティーがドンドンと出て来るはずさ」
「それでまたグレイズの懐に金が入ってくるというわけだな。なら、今日もオレは奢ってもらうことにしよう」
ジェイミーが新たに注文したエールを一気に呷って飲み干していく。確かに金は入るのだが、あれはパーティー資金であるし、俺の取り分はないんだがなぁ。
「仕方ねえな。一杯だけ奢ってやる。俺も財布は厳しいんだぞ」
「いっぱいいる花嫁たちを養う甲斐性があるから、オレに奢るくらいわけないだろう。親父、もう一杯な。グレイズのツケで頼む」
「おいっ! 一杯だって言っただろうが」
「え? ああ、『いっぱい』奢ってくれるのか。おおぉ、みんな聞いたか、今日はグレイズの驕りらしいぞ! 飲め! 飲め!」
親父から新しい酒をもらったジェイミーがカウンターの上に立って演説をぶち上げた。
「ちょ、ちょっと待て! 全部奢るなんて言ってないぞ!」
酒場にいた男性冒険者たちが一様にエールのジョッキを持ち上げると、俺の方を見てニヤニヤと笑っている。
「「「「あざっすっ! グレイズさん、太っ腹、さすがハーレム王は器デカイっす」」」」
ジェイミーのせいでいつの間にか俺が酒場のやつら全員に奢ることになっていた。しかも、今日に限って酒場には野郎どもしか集まっていないときたもんだ。
けど、まぁたまには野郎どもとしこたま酒を飲むのも悪くないかもしれないと思い直し、全員に奢ることにした。金は誰かのために使ってこそ生きると思うしな。それにここらで奢っておかないと色々とパーティーメンバーのことでやっかみが飛んできそうな気もする。
「だぁあ! 仕方ねぇな。俺の驕りだから残さず飲み切れよっ! 親父今日は樽ごと買い上げだ。喰い物も全部だしてくれ」
「「「「あざっすっっ!」」」」
こうして俺は酒場でジェイミーや野郎の冒険者たちと朝までしこたま酒を飲んで騒ぐことにした。街も以前より明るい兆しが見え始めているし、たまにはハメを外して騒いでみるのもいいだろうさ。
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