おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

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アルガド視点

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 ※アルガド視点

 二週間後、ヴィケットとマリアンの必死の努力によって、わたしの婚約披露会の準備は一気に整っていた。

 メラニアとの縁切りのために、盛大に金を注ぎ込んでブラックミルズの広場に特設会場を作り、住民たちを呼び集めて酒を振る舞い、会場は一種の祭りのような様相を呈していた。

 そして、わたしは準備が整うまでの二週間の間、メラニアの機嫌を取るために、昔、王都で貴族女たち相手に使った世辞のテクニックを総動員して褒めたたえていた。

 メラニアがわたしの態度が豹変したことに、とまどいの様子を浮かべていたが、それもこの一週間でかなり解け、本気で婚約者になった気でいる様子である。

 ただ、わたしとしてはこのあと捨てる女であるため、『正式に婚約披露をするまでは手を出さない』と言い、夜を共にしたことはない。

 そんな風にして一週間を過ごし、今を迎えていた。

「メラニア、皆がお前の婚約を祝ってくれているようだぞ。まだ、父上には正式に婚約したことは伝えておらぬため、内々の祝いですまぬと思う。だが、このブラックミルズでギルドマスターの仕事を終えれば、正式な婚約披露をするつもりだ」

「あ、はい。心得ております。でも、内々とはいえ、このように盛大な婚約披露会を開催して頂き、アルガド様には感謝しております」

 広場の特設会場に作られて、壇上にはわたしとメラニアがいた。わたしは冒険者ギルドのギルドマスターとして制服で参加しているが、メラニアには婚約者として見合う程度の服を与えて座らせている。

 先ほどから、来賓として呼んだ街の有力者やギルドの職員たちが祝辞を述べている。

 ただ、貴族たちは一人も呼んでいない。どうせ、こちらから破談にする話なので、下手に貴族たちを呼ぶと話があらぬところまで引火して大火事になりかねないからだ。

 ボヤ程度ですまし、とっとと消火するつもりである。

 ニコニコと街の者たちからの声に手を振って応えるメラニアの横顔を見ていると、明日には縁が切れていると思い、思わず笑いがこみ上げそうになっていた。

 だが、ここでバレるわけにはいかず、至極真面目な顔をして、わたしも住民たちの声に手を振って応えていた。

 すると、祝辞がグレイズの番になった。

 ブラックミルズ商店街連合会会長という忌々しい役職に就いているため、有力者として呼ばざるを得なかった男だ。

 こちらに一礼すると、祝辞のスピーチを読み始めていた。

 メラニアもグレイズの祝辞に喜びを現し、涙を浮かべてもいる。

 まぁ、喜びは一時であるから、今は精々喜ぶがいいさ。

 やがて、日が暮れ始め、婚約披露会もたけなわとなり、皆が振る舞い酒に酔って辺りに倒れ込む中をわたしはメラニアと、本日の宿舎にした広場に面したテラスのある高級宿に移動していた。

「アルガド様、お疲れではありませんか?」

「メラニアの方こそ一日近く、披露会に参加して疲れたであろう。わたしが飲み物を取って来てやる」

 部屋に入ったメラニアがソファーに腰をかけて休憩をしていた。

 わたしは奥の部屋に備え付けてある氷入りの保管箱から、冷えたワインを取り出すと、グラスに注ぎ、ヴィケットから預かった眠りのポーションを数滴垂らすと、メラニアに持っていく。

「よく冷えたワインが備え付けてあった。これで、一旦喉を潤すとしよう」

「申し訳ありません。アルガド様にこのようなことをさせて」

「よい。今日はメラニアが頑張ったからな。これくらいはわたしにさせてくれ。では、改めて婚約に乾杯!」

 メラニアに眠りのポーション入りのグラスを渡し、自分の分のグラスを合わせて乾杯をする。

 グラスのワインをクッとあけたメラニアのまぶたがすぐにトロンと垂れ下がり、ソファーにドサリと倒れ込んでいった。

「さすが、魔物を眠らせる用の強力な薬、効き目は抜群だ。あとは間男の準備だな。マリアン、マリアンいるか?」

「はい、こちらに控えております」

「手はずは整っているだろうな?」

「はい、ヴィケット殿と間男をこの宿の別室に連れ込んで眠らせてあります。男は街の外から来ている闇市に参加している商人の伝手で入手しました。殺してもあと腐れないゴミ男です。アリバイ作りに一〇日ほど前から家に配達員として出入りさせております」

 ヴィケットとマリアンが、メラニアを婚約破棄させるために必要な間男の準備を丁寧にしてくれていた。

 男には係累もなく、ブラックミルズの外の出身で、我が家に出入りするところを街の皆に印象付ける工作も万端らしい。

 これで、明日の朝、メラニアを目覚めさせその場で間男を成敗し、広場のテラスに向かってメラニアの不義不貞を声高に宣言すれば、すべてが上手くいく。

 わたしは婚約者に即日不倫をされた可哀想な貴族と同情され、こちら側から婚約破棄を申し出ても、周囲は納得してくれるはずだ。たとえ、宰相閣下が出てこようが、ブラックミルズの住民がわたしの行為の正当性を証明してくれるのだ。

 メラニアとは綺麗さっぱり縁を切れることになる。その後、この女がどうなろうがわたしの知ったことではない。

 ただ、貴族であれば体面を気にするので、公衆の面前で婚約者から不貞を詰られて生き恥を曝そうという貴族はいないはずだ。

 きっと、メラニアは恥を悔いて死を選ぶはずである。そうなれば、わたしは誰にも責められることなく、婚約を破棄できる。そうすれば、あとはマリアンと自由に自適な生活を送れるはずだ。

 わたしは明日に起こることを想像すると、頬が緩むのが止められないでいた。

「よし、準備に取りかかるとしよう」

「承知いたしました。すべてはアルガド様の自由な生活のために」

 わたしとマリアンは深い眠りに落ちたメラニアを抱えると別室に向けて連れ出していった。
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