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第二部 第一一章 脱出行
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しおりを挟む敵との遭遇はあったが、雑魚敵だけであれば対処はそこまで大変ではないことが判明したが、ここは不死王の宮殿。
不死王の宮殿における最大の脅威は、エリアボスである不死王との遭遇であるのだ。
高度な範囲魔法を使い、強靭な回復力、俊敏な動き、そして生者の魂を吸い自らの眷族にする特殊攻撃を兼ね備える凶悪な魔物。
その不死王によって、数多の冒険者たちが眷族にされたり、倒され宮殿を守るアンデッド兵の仲間に加えられているのだ。
今回の脱出行の先立った探索では、常在の場所であるはずの玉座の間に姿が見えなかったため、どこかの階層に遠征を行っている可能性があった。
不死王は自らの力が弱まったと思うと、生者を狩りに上層階にも軍勢を率いて顔を出すことがあるのだ。
玉座の間に不在であったことを思えば、力を補充しに上の階層へ遠征に出ていると見て、まず間違いないと思う。
脱出中に上の階層でばったりと出会うというのが、考えられる中で一番最悪の場面だ。
そんなことを考えながら脱出口に向かう通路の探索をしていると、前方のハクが何かを見つけたようだ。
「わふぅ! わふぅ! (地面に変な出っ張りがありますよ。これ、ダンジョントラップですかね?)」
「あー、何か変な出っ張りあるねー。ハクちゃん、偉い。グレイズさん、お願いー」
ハクが見つけたトラップにファーマも気付いたようで、処理係の俺を呼び出していた。
いつもなら、カーラにお任せだが、今回は後方で回復役のリーダーをしているため、トラップ解除は俺の仕事になっている。
「おう、ハクとファーマはちょっと下がっておいてくれ。後、後続が近づき過ぎないようにランタンを『紫色』の『トラップ注意』に変えてくれるか」
「はーい。やっとくー」
ランタンをファーマに手渡すと、問題の箇所に向かう。
ハクが見つけたトラップのある場所に水を軽く流し、上の汚れを除去する。
現れたトラップは踏むと地面が爆発する類のトラップのようで、地面から微かにスイッチ面が浮かんでいた。
通常の冒険者であれば、気付かずに踏んで足を負傷するか、爆発威力によってはパーティーごと全滅していたかもしれないトラップである。
単体パーティーなら、そのままやり過ごせばいいが、後続が間違って踏む可能性もあるから、爆破処理しておくか……。
通常の探索であれば、こういったトラップは下手に解除せず、トラップの所在が分かるよう数歩前の地面にトラップ有りの旗を立ててスルーすることが多い。
爆発系トラップをスルーする理由は、解除に失敗した時のダメージのデカさと、その爆発音によって集まってくる魔物を警戒してだ。
だが、今回は大所帯での移動となるため、万が一不注意な者が一人いて踏んでしまえば大惨事になる。
爆発音で寄ってくる魔物との危険度を考えれば、迷うところであるが、より安全にした通路を通って欲しい。魔物も恐ろしいがトラップもそれ以上に恐ろしい存在なのだ。
「ファーマ、ハク、俺が爆破処理するから、後続に伝令を頼む。爆発音とともに魔物が寄ってくるかもしれないからな。退避がてらメリーたちに戦闘態勢を維持するように言ってきてくれ」
「分かったー。メリーさんに伝えてくるね。ハクちゃんいこー」
「わふう! (また、あたしの獲物を横取りするんですか、グレイズ殿)」
ハクよ。大丈夫だ。敵は残しておいてやる。それよりも爆風が通路を通り抜けるからな。埃塗れにならないようにしとけよ。
『ああ、埃塗れになると地上に戻った時に皆さんからのお風呂での可愛がりがぁ……。うぅ、埃塗れは嫌なのでさがります』
ハクは毛並みが汚れるとお風呂での丁寧なお手入れになるのが、ちょっとばかり気になったようで、それまでのあたし戦闘しますよ的態度を翻して、そそくさと後方に下がっていった。
みんなの可愛がりは激しいからなぁ。
ファーマとハクが退避したことで、俺一人となり、爆破処理するための準備をしていく。
トラップのある上の天井にフックを打ち込むと、戦斧の柄にロープで縛り、フックを通してトラップの上に垂らす。後は、距離を取った場所からロープを手放せば、簡単安全に爆破処理ができるって寸法だ。
準備を終えて、安全と思われる距離まで離れると、手にしていたロープを緩める。
カツンという金属音が響くと、次の瞬間には通路内が眩い光に包まれて腹に響く爆発音が幾重に重なって聞こえ、その度に通路を吹き抜けていく爆風が発生していく。
「連続トラップだったか。五~六個は仕掛けてあったようだな」
トラップが仕込んであった通路は煙が充満している。懸念した爆発音による魔物が寄ってくる気配は今のところ感じ取れないでいる。
煙が晴れた頃合いを見て、前方の通路の安全が確保されたことを再確認したところで、メリーたちに安全を示す『青色』の信号を送ろうとしたところで、視界に入ったメリーたちのランタンの色が『黄色』に変化していた。
すぐに後方のグレイたちの方に敵が来たと判断する。行き違いのできない一本道の通路上であるため、前方に敵がいないとなれば、後方からの敵襲しか考えられない。
その黄色信号もすぐに『救援要請』である『赤色』に変化していた。
ちぃ、後方から来やがったか。前は敵の気配ないから、後ろの救援に行こう。
爆発音を聞いた魔物は俺の居た方ではなく、グレイたちのいる後方に殺到したようだ。
爆破処理をした斧を回収すると、すぐさま後方のグレイたちの下へ向かうことにした。
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