おっさん商人、仲間を気ままに最強SSランクパーティーへ育てる

シンギョウ ガク

文字の大きさ
105 / 232
アルガド視点

1

しおりを挟む
※アルガド視点

 父であるデルガド・クレストンからの呼び出しがあり、わたしはグレイズとメラニアの処理をヴィケットに任せ、ブラックミルズを離れ、父の居城があるパークラインに向けて馬車を走らせていた。

 呼び出しの理由は先触れの使者に持たせたヴィケットが得た王の失踪に関して詳しく知らせよと呼び出しがかかり、面倒だとは思いながらも、メラニアとの婚約破棄を父にも追認してもらうため父のもとに向かっている。

 現王の就任までに色々と血生臭い闘争を繰り広げた宰相閣下との間には、修復不可能な亀裂が入っており、今回の王の失踪が父の中で燻っていた政権奪取への野心に火を灯したらしい。

 現状、王国はダンジョンから手に入るドロップ品や装備、貴金属類などにより財政は富み、強い外敵もおらず、内部の権力闘争に十分に力を注ぐことができる時勢ではあるが、できれば当事者として巻き込まれるのは勘弁して欲しい。

 国権を握るための権勢など面倒なだけである。

 わたしは自由になる金と自由になる時間、それに好みの女に囲まれ楽しく日々を送りたいだけなのだ。

 そのためにブラックミルズでのギルドマスターの仕事も引き受け、闇市を拡大し、冒険者ギルドの売り上げを誤魔化して、資金を蓄えている。

 それらすべてが無駄になることだけは避けたいので、宰相閣下との権力闘争は父と取り巻きの貴族たちに任せ、わたしは両陣営から距離を置いて静観をするつもりでいた。

 玉座などただの冷たい石の椅子でしかないのに、なにゆえ皆はアレを手に入れるために狂奔するのかが理解できぬな。

 そんなことを考えていたら、目的地の父の居城に到着していた。

 勝手知ったる我が家ではあるが、家を新たに興し独立した貴族となっているため、謁見の間に先導する執事の後をついて歩いていく。

 やがて、贅沢の限りを尽くしたクレストン家の謁見の間に到着する。

 王城と同じ規模で二〇〇人は収容できる大きな謁見の間に設えた石の玉座に父デルガド・クレストンが肘を突いてすでに座っていた。

「これは、父上。わたしの登城が遅かったようですな」

 父に恭しく頭を下げ、挨拶代わりの嫌味を飛ばす。

「よい。普段なら怒りもするが、今ならば、お前の登城が遅れるくらいのことは我慢できるわ。で、単刀直入に本題に入らせてもらうぞ。あの話は本当なのか?」

 父デルガドは玉座から身を乗り出さんばかりに、先触れの使者に持たせた書状に書いた内容を確認してきた。

 ここで、簡単に情報を引き渡すと、体よくその後も父に使われるのは目に見えているため惚けることにした。

「あの話とはどの話のことですかな?」

「書状に書いてあった話のことだっ!」

「ああ、わたしの婚約破棄の話ですか。実はメラニア嬢が不貞を行いまして――」

「馬鹿者っ!! そんな小さな話はどうでもよいわっ!!」

「いえ、これは小さな話ではないのです。書状にも書きましたが、メラニア嬢は召喚術士の力を持つ暗殺者でした。婚約の仲介をした宰相閣下はメラニア嬢を使い、わたしを亡き者にしてクレストン家の断絶を狙っていると思われます」

「なんだとっ! そういえば、そのような話が書状に書いてあったな。あの狐野郎は玉座を自由にするだけじゃ飽き足らず、うちも潰しに来たのか。さてはついに……」

 普段をまったく顔の表情を変えない父であるが、今は顔色を見るだけで思考が手に取るように理解できる。

 『王の失踪』と『宰相閣下のクレストン家嫡男への暗殺者派遣』という二点が、父の中で宰相による王国乗っ取りクーデターという妄想を引き起こしているはずだ。

 ヴィケットから得た情報では宰相閣下は王の出奔に慌てていたというので、乗っ取る気などはないのだろうが、父のやる気に水を差すのは子としては出しゃばり過ぎるため黙っておくことにした。

「父上、これは由々しき事態ですな。王国の危機とも言ってよろしいかと。ここは宰相閣下との融和路線は破棄して全面対決をするべきかと、わたしは思案いたします。ただ、相手が相手ですので、まずはわたしとメラニア嬢との正式な婚約破棄通告を皮切りに本丸である宰相閣下のクーデターを追求していったみ方がよろしいかと」

 父がわたしの意見を聞くと、顎に手を当てて考え込み始める。

 すでに宰相閣下のクーデターというのは、父の中で事実化されたようなので放っておいても国を二分する大喧嘩が始まるはずだ。

 だが、その前にクレストン家として正式にメラニアのヴィーハイブ家との婚約を破棄だけはしてもらわなければ困る。

 それだけ宣言してもらえれば、もう用無しである。後は権力闘争の中で父が死ねば棚ぼた式にクレストン家の当主が転がり込むし、父が宰相閣下を打倒すれば、この分だと自分が王位に就くと思われ、空いたクレストン家の当主の座はどっちにしろわたしに転がり込む。

 逆に宰相閣下が父を打倒すれば、その時はクレストン家に付き従う貴族家の中で中規模くらいの当主の首を数個差し出して手打ちをするつもりだ。

 どっちに転んでもわたしはクレストン家の当主になれると思われる。

 父と宰相閣下が殺し合いを始めたら、巻き込まれないように僻地のブラックミルズに籠り、自らの私兵たちで周囲を固め、暗殺だけされないようにして嵐が過ぎ去るのを待てばいい。

 住めば都とは誰かが言っていたが、僻地であるブラックミルズではあるが、意外と住みよい街であり、食指の動く平民女も多数いるため、引きこもるにはちょうど良い街だと思える。

 ギルドマスターの仕事もひと段落ついたことだし、グレイズとメラニアの死亡をさえ確認すれば、あとはマリアンとアルマ、それに街の女たちを屋敷に引っぱり込んで悠々自適な生活を送ることにしよう。

 そんな風に考えていたら、父が玉座からスッと立ち上がって宣言していた。

「よかろうっ!! お前とメラニア嬢の婚約は正式に破棄するっ!! そして、王都に乗り込んであの狐野郎のクーデターを糾弾して追い落としてくれるわっ! アルガド、お前はついてくるか?」

「いえ、わたしでは父上の足手まといになりかねませぬ。任地であるブラックミルズにて職務に精励させてもらい、父上の後方支援をさせてもらいます」

「分かった。後ろは任せるぞ!」

「ははっ! 父上のご武運をお祈りいたします」

 わたしは恭しく頭を下げ、下を向くと思わずこみ上げそうになる笑いを抑えるのに必死だった。

 こうして、父デルガド・クレストンは取り巻き貴族たちを集め、一路宰相の勢力圏である王都へ向け出発していった。
しおりを挟む
感想 1,071

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。