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第二部 最終章 大貴族
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デルガドとその護衛たちが、冒険者たちに縛られて連れ出されていくと、神殿内には静けさが戻ってきていた。
サイアスは仇敵としていたデルガドが、自身の思惑以上の処罰を受けたことに戦慄している様子である。
ただ、この場を無断で去れば、過去の自らの悪行を炙り出され、ジェネシスによって宰相という役を解かれると思っているらしく、押し黙ってデルガドたちが連れ出されていくのを見ていた。
「さて、サイアス。さきほどのモーラッド一族の契約書の中に、余の見知った筆跡があったのだが。これはそちの筆跡ではないか?」
ジェネシスがヨシュアの持ってきた暗殺の契約書の中から、サイアスの筆跡を持ち出してきていた。
それを見たサイアスの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
彼にとって一番探られたくない人物に、十数年前の真実を突き当てられたのである。
「へ、陛下! それは違います! あの時はクレストン家の推す者が陛下の父上を追い落とそうとしていたのです! 私は陛下の父上をお守りするために!!」
「ほぅ、この契約書には余の両親と親族一同を暗殺せよと書かれておるが……余は目が悪くなったのかのぅ」
ジェネシスが持つ羊皮紙には、彼が言ったとおりの内容が書かれている。
当時、生まれたばかりの幼児だったジェネシスを傀儡化しようとサイアスが企図しての暗殺指令にも読み取れる契約書であった。
「陛下! 陛下を十数年もの間、お守りしてきたのは私ですぞ! その私がそのようなことをするわけがありますか!」
サイアスはデルガドが激高のあまり王に剣を向け失脚した場面を見ていたので、ジェネシスに追い込まれても努めて冷静さを保ちつづけていた。
その点だけを見れば、感情をむき出しにしていたデルガドよりは手強い相手であると思える。
「そうか……。そうであったな。赤子であった余を守ってくれたのはサイアスであったな。では、これはその功績に免じて見なかったことにしよう」
ジェネシスはそう言うと、てにした羊皮紙を神殿の中にあったかがり火の中へ投じていた。
それを見たサイアスの顔から、危機を乗り越えたとの安堵が読み取れた。
俺としてはジェネシスの裁定に従うつもりだが、今回の事件の大元を辿れば、サイアスが全てを操ってきたはずなので、お咎めなしは正直意外であった。
「ジェ、ジェネシス。本当にいいのか?」
「よい。余がこの歳まで無事育ったのは、サイアスの配慮が行き届いていたからであるのは事実だからな。その功績には報いるべきだと思う」
「へ、陛下!! さすがのご裁定。このサイアス、感動いたしましたぞ!! 立派に育たれて……」
サイアスは自分の首が繋がったと確信したのか、先ほどまでの神妙さをかなぐり捨てジェネシスに再び取り入ろうとしていた。
この変わり身の早さがこの男を宰相という高みにまで押し上げてきたのだろうと思えた。
「褒めずともよい。サイアスの功績は先ほどの件で帳消しであるからな。さて、これからは余の姉であるメラニアを殺そうと仕組んだ方の詮議をいたす」
罪を許されたと勘違いしたサイアスは、揉み手をする勢いでジェネシスに詰め寄っていた身体を硬直させる。
「へ、陛下。メラニア様の件はアルガドの罪であったはずですが……」
「余はマリアンが、アルガドにけしかけたと思っておる。メラニアの血筋を知っておるかと聞いたら、そちは知らぬ存ぜぬとシラを切って追ったが、マリアンの配下のメイドの一人が王都のそちの屋敷に駆け込んだことをヨシュアの部下が確認しておる。そして、そのメイドもすでに捕えており、そちの縁者であることも判明しておるぞ」
一度は許されたと安堵したサイアスは、ジェネシスからの追及に顔を蒼くさせる。
「そ、そのような者が、我が縁者であるとは信じられませぬ。きっと虚言でございましょう」
「と、申しておるがマリアン。このままだと、そちがアルガドをけしかけた首謀者という裁定を余は下さねばならぬが」
アルマへの処罰が思ったより緩かったことで、マリアン自身は自らも軽微な罪で済まされると思い安堵していたところで、ジェネシスからの首謀者認定に仰天していた。
「わ、私が首謀者ですって!? そんなっ! 私はサイアス様の指示に従ってクレストン家に復讐をしただけですっ!! それを首謀者だなんて!! サ、サイアス様、これでは話が……」
「ば、馬鹿者!! 今この場でする話ではないであろうが!!」
ジェネシスの首謀者認定に焦ったマリアンが、サイアスの名を呼んでいた。
これには冷静さを保っていたサイアスも、自らの身を守る瀬戸際のため、思わずマリアンを叱責していた。
「サイアス様っ!! 私を切り捨てるつもりですか!! 復讐を果たしたいならアルガドを垂らし込んでこいと私を送り出したのはサイアス様でしょう。無事、クレストン家が取り潰された今、私が罪に問われることはないと申されていたではありませんか!! これでは話が違います!!」
「ば、馬鹿者!! 私はそのような指示をそなたに出した覚えはない!!」
「へ、陛下。私がアルガドへけしかけたことは、すべて指示はサイアス様の許可を頂いておりますっ! 今回の首謀者はサイアス宰相であると私は証言いたしますわ!! なので、なにとぞ私には寛大な処置をお願いいたします」
マリアンは自分が軽微な罪で済むようにと、サイアスのことを売って保身を図った。
サイアスは仇敵としていたデルガドが、自身の思惑以上の処罰を受けたことに戦慄している様子である。
ただ、この場を無断で去れば、過去の自らの悪行を炙り出され、ジェネシスによって宰相という役を解かれると思っているらしく、押し黙ってデルガドたちが連れ出されていくのを見ていた。
「さて、サイアス。さきほどのモーラッド一族の契約書の中に、余の見知った筆跡があったのだが。これはそちの筆跡ではないか?」
ジェネシスがヨシュアの持ってきた暗殺の契約書の中から、サイアスの筆跡を持ち出してきていた。
それを見たサイアスの顔に苦悶の表情が浮かぶ。
彼にとって一番探られたくない人物に、十数年前の真実を突き当てられたのである。
「へ、陛下! それは違います! あの時はクレストン家の推す者が陛下の父上を追い落とそうとしていたのです! 私は陛下の父上をお守りするために!!」
「ほぅ、この契約書には余の両親と親族一同を暗殺せよと書かれておるが……余は目が悪くなったのかのぅ」
ジェネシスが持つ羊皮紙には、彼が言ったとおりの内容が書かれている。
当時、生まれたばかりの幼児だったジェネシスを傀儡化しようとサイアスが企図しての暗殺指令にも読み取れる契約書であった。
「陛下! 陛下を十数年もの間、お守りしてきたのは私ですぞ! その私がそのようなことをするわけがありますか!」
サイアスはデルガドが激高のあまり王に剣を向け失脚した場面を見ていたので、ジェネシスに追い込まれても努めて冷静さを保ちつづけていた。
その点だけを見れば、感情をむき出しにしていたデルガドよりは手強い相手であると思える。
「そうか……。そうであったな。赤子であった余を守ってくれたのはサイアスであったな。では、これはその功績に免じて見なかったことにしよう」
ジェネシスはそう言うと、てにした羊皮紙を神殿の中にあったかがり火の中へ投じていた。
それを見たサイアスの顔から、危機を乗り越えたとの安堵が読み取れた。
俺としてはジェネシスの裁定に従うつもりだが、今回の事件の大元を辿れば、サイアスが全てを操ってきたはずなので、お咎めなしは正直意外であった。
「ジェ、ジェネシス。本当にいいのか?」
「よい。余がこの歳まで無事育ったのは、サイアスの配慮が行き届いていたからであるのは事実だからな。その功績には報いるべきだと思う」
「へ、陛下!! さすがのご裁定。このサイアス、感動いたしましたぞ!! 立派に育たれて……」
サイアスは自分の首が繋がったと確信したのか、先ほどまでの神妙さをかなぐり捨てジェネシスに再び取り入ろうとしていた。
この変わり身の早さがこの男を宰相という高みにまで押し上げてきたのだろうと思えた。
「褒めずともよい。サイアスの功績は先ほどの件で帳消しであるからな。さて、これからは余の姉であるメラニアを殺そうと仕組んだ方の詮議をいたす」
罪を許されたと勘違いしたサイアスは、揉み手をする勢いでジェネシスに詰め寄っていた身体を硬直させる。
「へ、陛下。メラニア様の件はアルガドの罪であったはずですが……」
「余はマリアンが、アルガドにけしかけたと思っておる。メラニアの血筋を知っておるかと聞いたら、そちは知らぬ存ぜぬとシラを切って追ったが、マリアンの配下のメイドの一人が王都のそちの屋敷に駆け込んだことをヨシュアの部下が確認しておる。そして、そのメイドもすでに捕えており、そちの縁者であることも判明しておるぞ」
一度は許されたと安堵したサイアスは、ジェネシスからの追及に顔を蒼くさせる。
「そ、そのような者が、我が縁者であるとは信じられませぬ。きっと虚言でございましょう」
「と、申しておるがマリアン。このままだと、そちがアルガドをけしかけた首謀者という裁定を余は下さねばならぬが」
アルマへの処罰が思ったより緩かったことで、マリアン自身は自らも軽微な罪で済まされると思い安堵していたところで、ジェネシスからの首謀者認定に仰天していた。
「わ、私が首謀者ですって!? そんなっ! 私はサイアス様の指示に従ってクレストン家に復讐をしただけですっ!! それを首謀者だなんて!! サ、サイアス様、これでは話が……」
「ば、馬鹿者!! 今この場でする話ではないであろうが!!」
ジェネシスの首謀者認定に焦ったマリアンが、サイアスの名を呼んでいた。
これには冷静さを保っていたサイアスも、自らの身を守る瀬戸際のため、思わずマリアンを叱責していた。
「サイアス様っ!! 私を切り捨てるつもりですか!! 復讐を果たしたいならアルガドを垂らし込んでこいと私を送り出したのはサイアス様でしょう。無事、クレストン家が取り潰された今、私が罪に問われることはないと申されていたではありませんか!! これでは話が違います!!」
「ば、馬鹿者!! 私はそのような指示をそなたに出した覚えはない!!」
「へ、陛下。私がアルガドへけしかけたことは、すべて指示はサイアス様の許可を頂いておりますっ! 今回の首謀者はサイアス宰相であると私は証言いたしますわ!! なので、なにとぞ私には寛大な処置をお願いいたします」
マリアンは自分が軽微な罪で済むようにと、サイアスのことを売って保身を図った。
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