159 / 232
日常編 男たちの酒盛り
1
しおりを挟む「というわけで、うちの居候にメラニアの召喚獣となったノーライフキングが住むことになったわけだ」
メラニアの召喚術練習を終えて、ブラックミルズの街に引き上げてきたが、メンバーたちは新たに召喚獣になったクイーンの世話をするという名目でみんなで買い出しに出ていた。
みんなの買い出しが終わるまで一人になった俺は、仕事を終えたジェイミーと、冒険者としての装備を見繕っていたジェネシス、そして休日だった『おっさんず』の三人を酒場で見つけ、男たちだけで酒盛りを始めていたのだ。
「あー、あのノーライフキングっすよね? グレイズさんの回復魔法で破裂して小さくなってた」
俺が奢った串焼きの肉を食いながら、ジェネシスがノーライフキングを思い出していたようだ。
「確かに小僧っ子くらいにまで縮んでたなぁ。Sランク冒険者もはだしで逃げ出すノーライフキングもグレイズたちにかかるとペットみたいなもんだな」
「ちげえねぇ。あのノーライフキングに魂吸われても死なない男だしな」
「セーラの父親にはピッタリだな。子供はきっと強い冒険者になるぞ。グレイ」
『おっさんず』たちは、休日だったのですでに昼から酒を飲んでいたようでかなり出来上がってきていた。
最近では、ダンジョン販売店の給料も増額され、順調に借金が減っているので、懐が多少なりとも温まっているようであった。
「ブフゥウウっ!! モロー、馬鹿言っているんじゃねぇっ!! セーラは嫁に出さねえぇって言ってるだろうがっ!」
グレイが飲んでいたエールをモローに向けて噴き出していた。
「きったねぇな」
「グレイズ、セーラに手を出したら絶対に許さねぇぞっ!」
グレイがかなり酔っ払っているようで、セーラの話になった途端、俺に絡んできていた。
「手は出さねえから安心しろって」
酔っ払っているグレイがこれ以上暴れないように、努めて冷静に返答していた。
「あぁあんっ! おめえ、うちのセーラに女としての魅力がねえって言いたいのかっ! ありゃあ、このブラックミルズ一のいい女なんだぞっ! こらぁ!」
もうダメだ。出来上がり過ぎてグレイがめんどくさい酔っ払いになってやがる。
俺は『おっさんず』の二人に助けを求める視線を送った。
二人はニヤニヤしているだけで、俺を助ける気はなさそうであった。
「セーラはな。いい女なんだよ。そりゃあな、グレイズには女傑のメリーとか、公爵家当主のメラニアとか、才能溢れる子たちがいっぱいいるがな。セーラもあれはあれでなぁ苦労して生きてきてるんだよっ!」
「分かってる。分かってるから」
グレイが酒を片手に号泣し始めてしまっている。
誰だよ。こんなに酒飲ませたやつは。
飲ませた張本人たち二人がニヤニヤとしていた。
「まぁ、セーラもいい女だが、アルマもちゃんと面倒見てやれよ。アレは例の裁判で公衆の面前でグレイズの嫁にされたからな。もう、他に嫁の貰い手はこのブラックミルズにいなくなったぞ」
グレイが暴れている隣で、しみじみと煮込み料理を食いながらエールを飲んでいたジェイミーがボソリと俺に対して呟いていた。
「ボソリと言うな。それも理解しているつもりだ。俺もそこまで鈍感じゃないつもりだ」
「そうか、ならいい。これで、オレも安心して結婚したことを報告できるぜ」
「は!? ジェイミーお前何言って……」
しんみりと酒を飲んでいたと思ったジェイミーが、俺に向かって結婚指輪をはめた指を見せていた。
古株のギルド職員であるジェイミーであるが、ギルドマスター時代から独身を貫き通していた男が、いつのまにか結婚していたのだ。
俺は驚きの余りに何度もその指輪を見てしまっていた。
「いつの間にだよっ! そんな話聞いてないぞ」
「いつの間にって、まぁ、ホラ。ギルド職員を首になってからな。ホラ、倉庫番してたから、商店街の方で飲んでたことも増えてな。そこで、世話をしてくれるやつができて、まぁ、その押し切られたわけだ」
スキンヘッドのいかつい男が頭を掻いて照れた顔を見せていた。
年齢的にも俺と同じジェイミーであったが、ブラックミルズでもあまり居ない独身仲間であった男でもあるのだ。
四〇になっても妻帯しない男はブラックミルズでは希少である。大半の男性はその年齢に達するまでに結婚をして家庭を築いているのだ。
俺が商店街の連中から妻帯しないことを心配されるのは、そういった事情も加味されているのだが、それにしても希少な独身仲間が今一人脱落したことを知って衝撃を受けていた。
「お前、散々結婚する気ないって言ってたのに裏切りやがって」
「いや、オレもな。長い付き合いのグレイズがいるから、相手にもちょっと待ってくれとは言ったんだぜ。でも、ほら、相手も痺れをきらせてな。とうとうオレの指にも指輪がはまることになったわけだ」
「マジか……。ジェイミーまで結婚したら、俺へのプレッシャーが半端なくなるじゃねえか」
俺の中ではギルドマスターだったジェイミーが結婚していないのが、おばばたちに対する防波堤の役目も果たしていたので、ジェイミーの結婚により、これでより一層防ぎ切る盾を失ったことにもなったのだ。
俺もそろそろ陥落する時が近づいてきているのかもしれないなぁ。
「まぁ、結婚生活も案外悪いものじゃないさ。っと言ってもグレイズの場合はもう始まっているようなもんだろうけどな」
「あれは共同生活だっつーの」
「嫌だなぁ、ああいうのは嫁入り前の同棲って言うらしいっすよ。この前商店街の人たちにそう教えられたっす」
俺の言葉を聞いたジェネシスがもう一本の串焼きを取って口に運びながら、商店街の連中から仕込まれた知識を披露してくれていた。
王様であり、王宮で育ったジェネシスにはブラックミルズの街での生活は新たな発見ばかりであるようで、商店街や歓楽街に出向いては色々と変な知識を仕入れてきていたのだ。
「ジェネシス。いいか、あれは『共同生活』と言うんだ。『同棲』とは違う別物だぞ」
「グレイズの結婚恐怖症も大概なレベルだな。ジェネシスは真似するなよ。王様が結婚しないってなると国が乱れるからな」
ジェイミーが串焼きを食っているジェネシスを掴まえて、早めに結婚するように迫っていた。
「ああ、そうっすね。いい子がいたらすぐにでも結婚するようにと姉上にも念を押されていますしね」
ジェネシスも結婚は早めにする気であるらしい。三年という期限を切っての冒険者生活を行うと言っているため、それを終えたら王としての仕事をする気でいるらしい。
若いのに殊勝な心掛けの青年である。
「ふぅ、男どもからも俺は結婚を勧められる事態になっちまったか……」
「まぁ、そう言うな。いい女たちばかりじゃねえか。相手の返事は『イエス』しかねぇからな。あとはお前次第ってことさ。さぁ、オレの結婚祝いにグレイズの奢りで飲むぞー」
「あざっす。ゴチになります。グレイズさん」
「グレイズ、てめぇ、うちのセーラを泣かせたら容赦しねぇからなっ!」
その後、メリーたちがクイーンに必要な日用品を買い集めて戻ってきた時には、俺たちは完全に出来上がって酔い潰れており、みんなの肩を借りて郊外の家に帰る羽目になったことは不覚であった。
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。