161 / 232
日常編 新生アウトキャスト
2
しおりを挟む俺たちが窓口に到着すると、周囲の冒険者たちが息を殺して注視してきていた。
俺の率いる追放者が、深層階から駆け出し冒険者たちを含んだパーティーを率い、なおかつ冒険者が戦わないことを不文律としていたノーライフキングを撃破して、誰一人死者を出さなかったことが知れ渡っているためだ。
現状ではただのCランクパーティーではある。
アルマからはSランクパーティーの打診を受けているが、リーダーである俺自身がギルドマスターも兼任している以上、規定通りの実績を上げてからでないと不平不満の元になりかねないので断っておいてあるのだ。
ちなみに冒険者ギルドのパーティーランクアップ査定チームは、俺から完全に独立した者を選任するようにアルマには伝えてあるので、関係者が忖度して俺のパーティーを基準に満たないうちに推薦しないように固く通達をしてある。
そんなわけで、今日はメラニアとジェネシスのフル装備練習も兼ねて、ダンジョン販売店までの往復の間に受けられる依頼を探してもらうことにしていた。
「さて、グレイズさんたちには、第三一階層で確認されたエンシェントドラゴンを……」
アルマがしれっととんでもない依頼を差し出してきていた。
第三一階層は現時点でのブラックミルズダンジョンの最高到達階層であり、俺がムエルたちから追放される前の最後の探索で到達した場所でもあった。
そこにいるエンシェントドラゴンは、はっきり言ってかなり強力な魔物である。
だが、ノーライフキングを倒せた俺に倒せない敵ではない……。ないのだが、到達するまでが非常に大変であり、駆け出しであるジェネシスやメラニアを連れていく場所ではないのだ。
「チェンジ。俺たちはまだCランクだから、深層階は潜れないぞ。アルマも知ってるだろう」
「知ってますよ。一応、受けてもらえるかもと密かに期待して出してみただけです」
「ドラゴンさんって強いのー? 強いならファーマ戦ってみたいー!」
ファーマがエンシェントドラゴンに興味を持ったようだが、今の装備で挑めばたとえ天啓子として恵まれたステータスがあったとしても消し炭にされる可能性がある相手である。
「グレイズさん、オレ、エンシェントドラゴンなんて無理っス」
ジェネシスがカタカタと身体を震わして怯えていた。駆け出しの冒険者である彼にエンシェントドラゴンと戦えと命令するほど、俺も耄碌はしていないので無用な心配であった。
「受けない。大丈夫だ。今日はダンジョン販売店まで補充に行きがてら、低層階で受けられる依頼をこなすつもりだから安心してくれ。探索での役割分担や戦闘での役割分担も実戦をしながら決めていきたいしな。アルマ、低層階で不良案件化している依頼はあるか?」
「ふぅ、残念です。Sランク冒険者の方が減って高難度依頼が溜まっているんですが……。こっちは社会奉仕活動を課せられたSランク冒険者たちに振っておくことにしましょうか。グレイズさんたちは低層階の不良案件化した依頼をご希望ですか……」
ヴィケットに雇われて闇市に品物を提供するため、他のダンジョン都市から出稼ぎに来ていたSランク冒険者たちは、一年間の社会奉仕探索という刑罰がジェネシスから下っており、彼らもそれを受け入れて冒険者ギルド専属のパーティーとして、色々な依頼に狩りだされている。
俺に高難度依頼を断られたアルマは台帳をパラパラと見ながら、誰も受けずに不良案件となっている依頼を探し始めていた。
「でも、グレイズさんが打ち出した冒険者支援策で、依頼達成料が増した今は低層階の依頼はほとんどないんですよね」
「え!? マジでか。いつも山のように残ってた低層階の依頼だぞ」
支援策を打ち出して一週間程度なのに、山積みだった低階層の依頼がごっそりと無くなっているとは思いもしなかった。
「依頼達成料が去年の三割増しの上、鑑定料の無料化まで付いていますからね。駆け出しの子たちは受けられるだけ受けて潜ってますよ」
「でもほら、あるだろ。ゾンビとかスケルトンとかの辺とかさ、いつもの不良案件が」
「ないですね。根こそぎ受注されてます。グレイズさんからも商店街に素材収集依頼の営業を掛けてくださいよ」
「マジか……。そんなことになってたとは」
「とりあえず、低層階で依頼があるのは初心者救済用のスライムのやつしか今はありませんね」
「お、おう。じゃあそれで……頼む」
俺たちが何の依頼を受けるか注視していた周囲の冒険者からどよめきの声が上がった。
ノーライフキングを倒した俺たちが、ダンジョンの第一階層にいるスライム討伐の依頼を受けるのが信じられないようだ。
仕方ないだろ、あると思ってた低層階の依頼が根こそぎ無くなっているとは思わなかったんだ。
「承りました。スライム細胞五個納品をお待ちしてます。お気をつけて行ってきてくださいね」
アルマが悪戯っぽく笑いながら、台帳に受注者名を書き込んでいった。
「グレイズさんたちはゆるゆると第一階層でスライム討伐してから補充物資持っていくみたいだぞ。一旦先に潜って第一〇階層に戻ってきてもよさそうだ」
「さすがグレイズさんだ。新米二人をしっかりと教育するため、スライム討伐から始めるとは……」
「うちはグレイズさんのパーティーの後ろを付いていくぞ」
なんだか、冒険者たちは俺のことを持ち上げているが、ただ単に予想していた依頼がなくて、しょうがなく受けただけだぞ。
メラニアもジェネシスも探索の基本さえマスターすれば、中層階でも対応できる能力は持っていると思われるしな。
初心者依頼を受けるのは今回だけだ。
俺は周囲の冒険者から向けられた好奇の視線に恥ずかしさも感じていた。
「さあ、依頼も受けたことだし、ダンジョンに潜ることにしようか」
「「「はい」」」
俺たち追放者は新たなメンバーを加えての初めての正式な探索を行うべく、街の郊外にあるダンジョンの入口へと向かって冒険者ギルドを後にした。
----------------------
本日『おっさん商人第一巻』出荷日となりました。都内とかの書店には並び始めていると思います。遠方の方は週末、週明けには並ぶと思います。イラストレーター様は犬魔人先生の蒼穹のアルトシエルを担当されている悠久ポン酢さんに担当して頂いております。第一巻では主人公グレイズ他メリー、ファーマ、カーラ、ムエル、ミラ、ローマンというキャラクターをデザインしていだき、挿絵も表紙もバッチリと書き込んで頂いております。中身は書店でお楽しみください(できればレジに持っていってもらえるとありがたいですが)
WEB版のストーリーのままに改稿、加筆も大幅に加えて、書籍版が正式版『おっさん商人』となりますので楽しんでもらえれば幸いです。
皆様のご支援、ご声援のもとで書籍化までたどり着いた作品でありますので、次なるステージである続刊&コミカライズに向け今後とも『おっさん商人』に変わらぬご支援と応援をして頂けると幸いです。
シンギョウ ガク
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。