199 / 232
王都編 グレイズ、冒険者ギルドに喧嘩を売る
2
しおりを挟む「おい! お前! 聞いてるのか! 私が貴重な時間を費やして説教をしてやっているのにその態度なんだ!! 名前と職業を言え!! お前には冒険者ギルド本部から厳重注意を通達してやる!!」
一人で勝手にヒートアップしたハリアーが、俺の名と職業を尋ねてきていた
ここで、真面目にブラックミルズの冒険者ギルドマスターと答えると、色々と問題がややこしくなりそうだった。
ただでさえ、自分の頭を飛び越えて王に直接任命されたギルドマスターである俺に面子を潰されたと思っているハリアーだ。
今、この状況で名乗り上げれば逆効果しか発生させない気がしている。
とはいえ、この後結局面談するので、ここで偽名を名乗ってもバレてしまうのだ。
「困ったな……。これ、絶対にアルマに怒られるパターンだろ」
「なんか言ったか? 早く名前と職業を名乗れと言っている!! この間も私の貴重な執務時間を奪っているのだ!! 後で御者の怪我の分も含め、損害賠償請求もさせてもらうからな!!」
俺が返答に困っていると、背後から声がした。
「あー、グレイズさんみーつけた!! やっと追いついたよ。ハクちゃんの匂い追っかけてきたらいた」
「わふうぅう!?(ファーマちゃん、それは狼のあたしの仕事なのでは!?)」
犬のように鼻をヒクヒクさせて近づいてきたのはファーマだった。
最近、気配読みが更に敏感になっているのに加え、匂いまでハクの嗅覚に迫る物を見せてきてもいたのだ。
「ファーマか。スマン、今取り込み……」
「グ、グ、グ、グレイズーーーーーーーっ!! お前の名前はグレイズと申すのか!! ま、まさか私の頭越しにブラックミルズの冒険者ギルドマスターになったグレイズではないだろうなっ!!」
俺の名を聞いたハリアーの額に青い筋が浮き上がっていた。
完全に先ほどよりまた一段とヒートアップして地団駄を踏んでいる。
「ファ、ファーマ。何かマズいことしたかな……」
「別に悪いことじゃないさ。相手が勝手に怒ってるだけだからな。ふぅ、バレたからにはきちんと名乗らないと」
俺はハリアーの怒りをなだめることを諦めた。
「わふう(また、これで何か事件に発展するですよねー。きっと)」
うるさいぞ、ハク。
俺も好きでトラブルを呼んでるわけじゃないからな。
「そこ!! 私を無視するんじゃない!」
「あーわかった、分かった。そう血圧上げるな。ポックリ逝くぞ。お察しの通り、俺はブラックミルズのギルドマスターとなったグレイズだ。冒険者ギルド本部のギルドマスターであらせられるハリアー様におかれましてはご機嫌麗しいご様子。拝謁できたこと恐悦至極に存じ上げます……っと。これで、いいか?」
先ほどから、目の前のハリアーには組織のトップとしての威厳を感じなかったので、最低限の挨拶をで済ませた。
できれば、これで話を終え、後はアルマに実務的な折衝を任せたいところである。
「き、ききき、貴様!! やっぱり、ブラックミルズのクソいけ好かないギルドマスターのグレイズかぁああああ!!!」
正式に名乗ったことで、ハリアーの怒りのテンションが振り切れた。
「王から勝手に任命されただけじゃなく、冒険者ギルドが手を付けていない宿泊業への出資、ギルドでの消耗品販売、冒険者への報酬ベースの加算、果ては訓練校まで作る計画まであるそうだなっ!! どれも、冒険者ギルド本部が禁じている事項だと知ってやっているのか!! 貴様っ!!」
ハリアーは、代行に任じたアルマや領主のメラニア、そして共同出資者のメリーたちが進めているブラックミルズでの冒険者ギルド関連の施策が気に入らないらしい。
俺としては本部分の利益はきちんと納めた上で、余った資金を街と冒険者に還元しているだけなのだが。
それがどうにもハリアーの気に障るらしい。
「ハリアー殿、冒険者ギルド本部に納める分の上納金はきちんとお支払いしているはずですが……」
「うるさいっ! ブラックミルズだけ勝手気ままに施策を実行されては、全国の冒険者ギルドが迷惑を被るだろう! それぐらいの知恵を使わぬか! たわけ者めっ!」
拳を振り上げて奇声を上げて吠えるハリアーにため息しか出ない。
ハリアーはどうやら前例踏襲の無難な本部運営をしたいらしいそうだ。
「お前のところが本部にあげた施策のせいで、大規模ダンジョン都市にある冒険者ギルドのギルドマスターたちが『うちにも許可出せ』と騒ぎ出して、私の仕事が激増しておるのだ!」
ジェイミーやアルマを派遣した際に持たせた資料が他のギルドマスターたちに流れたのか。
きっと、ヨシュアたちが施策が通りやすくなるよう、下ごしらえとして、世論形成要員としてバラ撒いた気がする。
普通なら、これで他のギルドマスターたちによって施策推進の圧力が本部に掛かるはずだが……。
「他のギルドマスター殿の賛同があるなら、こちらとしては本部主導で推進して頂きたいと思っております」
「馬鹿者ぉおおおおおおっ!! なんで、私が本部のギルドマスターの時にそんな大きな改革を行う必要があるのだ!! 今まで問題なく運営できているのだぞ!! この改革に失敗したら私の名が無能ギルドマスターとして冒険者ギルド史に残されるだろうがっ!」
絶叫するハリアーを見て、元ギルマスだったジェイミーが説得を諦めて折れた理由が窺いしれた。
頑なに現状を変える気がないようだ。
このままだと、何を言っても施策は本部の許可が下りずに宙に浮きかねない気がする。
「ちょうどよい。これから、本部に出頭して査問会議を開催することにした。いくら王が任命したとはいえ、解任に関しては冒険者ギルドの専権事項だからなっ! 冒険者ギルドを騒がした罪でその首を飛ばしてやる。ブラックミルズには後任を送るから安心しておけ!」
喚き散らしていたハリアーから、査問会議という単語が出た。
出発前にアルマからその懸念は聞いてはいた。
だが、前例のない王から直接任命者であるギルドマスターの俺を解任するとなると、王様と冒険者ギルドのガチの喧嘩に発展しかねない。
いや、あのジェネシスなら、俺の解任を理由にして、特権組織になりかけている冒険者ギルドに大ナタを振るいかねないのだ。
「ハリアー殿、待たれよ。王との喧嘩はマズいだろ……」
「うるさいっ! あの気狂い王など知るか! 冒険者ギルドに王家は不要なのだ!! お前はクビだ! クビ!!」
テンションがMAXまで上がったハリアーは口から泡を飛ばしてイキリ立っている。
あ、やばい。
こいつ、そう言えばがちがちの王国否定派だったな。
これは喜んでジェネシスと喧嘩しちまう気がするぞ……。
「これは、面白い話を聞いたな……フフフ、気狂い王か。余のことを言い得ておる、よい言葉だ」
声に振り替えると、ファーマに追いついたメンバーたちに紛れ、『気狂い王』と言われたジェネシスの姿があった。
「ジェ、ジェネシス。落ち着け! ここは往来だからな! 自重をするように!」
「大丈夫っすよ! オレも往来で無礼討ちする気はないですから! きっちりとカタにはめてやりますよ」
ジェネシスの目にやる気が漲っているのが見て取れた。
一番最悪の展開である。
王家と冒険者ギルド本部の代表者同士がガチの喧嘩寸前に陥ってるのだ。
俺はいきり立つハリアーと、やる気満々のジェネシスの両者の顔を見てため息を吐いた。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。