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最終章 そして、伝説へ
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しおりを挟む助け出した『白狼』たちはそれぞれかなりの深手を負っていた。
ムエルは腹部に大きな貫通穴を空け、大量出血して後少しでもカーラの治療が遅れていれば死んでいる寸前であった。
ミラも半分腕が千切れかけ、大量の血を失い意識が朦朧としていたし、ローマンも魔力を使い果たし、身体にはいくつもの裂傷を負っていた。
そんな彼らを俺が担ぎ、ラムザ鉱山の拠点に連れ帰っていた。
「相変わらずのお人よしだな……お前は」
「言うな。俺だってムエルたちのことは許しちゃいないさ。ただ、死にかけた奴らを見捨てることだけはできなかっただけだ」
簡易的に作られた治療所のベッドに横たわるムエルたちを見ていたジェイミーがふぅとため息を吐いていた。
どうやら俺がムエルたちを連れ帰ったのが気に入らないらしい。
でも、あの状況で見捨てていれば俺はずっと後悔に苛まれていただろうと思う。
「目の前のやつらはブラックミルズとお前らをはめた連中だぞ。ここに居るやつらの中にも恨んでる連中は多い」
「すまないな……私らもそれは自覚している。まずはムエルやミラを助けてもらってありがとうと言わせてくれ」
俺たちの会話に気付いた比較的傷が浅かったローマンがベッドから起き上がった。
「傷はいいのか? まだ寝ていた方がいいぞ」
「いや、私は魔力さえ戻ってこれば自分で癒せるからな」
「ローマン、あんたらはまだ犯罪者だから傷が癒えたら勝手に逃げ出すことは許されないとだけ覚えておけ。どのみち、あの絶望都市の内部を知っているのは、現状あんたらだけっぽいから道案内はさせるぞ」
ジェイミーが起きあがったローマンへ絶望都市への道案内を指示していた。
ローマンたちだけが今のところ絶望都市の内部を把握しているので、できれば道案内を頼みたいが、ムエルやミラの傷の具合を見ているとかなり厳しいと思えた。
「ムエルやミラを連れて行かないという条件であれば、私が道案内をしよう。あれを野放しすれば世界が滅びかねないかもしれないからな」
「ローマン……お前たちはダンジョン主を見たのか!?」
「ああ、世にも醜悪な怪物だったぞ。あれは人であり、魔物だ……戦うのは御免だが、道案内くらいはしてやろう」
ローマンたちは絶望都市のダンジョン主に出会っていたのか……。
ということは、このような事態が発生した原因を知っているかもしれない。
「ローマン、お前らはダンジョン主を見たとのことだが、絶望都市がなんで今のような状態になったのか、原因を知っているんだろう。もし、知っていたら教えてくれ」
「原因か……原因は……」
ローマンは言い辛そうな顔をして何やら思案をしていた。
やはり、絶望都市がああいうことになった理由を知っているようだ。
「ローマン、話した方が身のためだぞ。このまま、黙っていれば事態が収束した時にお前らの罪として裁かれかねないからな」
ジェイミーが脅すような言葉をローマンに投げかけていた。
「私らは、そいつに絶望都市の深部までの道案内を頼まれただけだ。連れて行けば、犯罪経歴を消したうえ、別都市で冒険者として再スタートさせてくれる条件だったんだ。この絶望都市で半年以上生きながらえたことで、私らは冒険者としての技量を上げ、喰っていける自信も持っていたからな。渡りに船とばかりにその男の提案に乗ってしまったのだよ」
ローマンたちにダンジョン主への道案内を頼んだ男がいたということか……。
そいつが俺とは別の神器の持ち主だったとすれば、ダンジョン主との闘いに敗れて喰われたという仮説が現実化するな。
「その男、何者だ?」
「アイエスとだけ名乗った。冒険者だろうと思うが、どこの誰だかは知らん。ただ、めちゃくちゃな魔力の持ち主で魔法を駆使してエンシェントドラゴンやミスリルゴーレムなんかをほぼソロで倒していた。まるで、魔法に特化したグレイズのみたいな強さをもっていた男だ」
「アイエスか……ヒッグス・マイヤーの方でも神器の所有者候補として追ってた男だが。慎重な男で足跡を全く残さなかったので、所有者候補で居場所が掴めなかった男だな」
ヒッグス・マイヤーの構成員でもあるジェイミーがアイエスの名を知っていた。
やはり、神器の所有者候補として探して男らしい。
「わふううう(男の特徴を見る限りアクセルリオン神が作られた『魔力の源泉』っていう神器の所有者だったと思われますね。意識体が残っていたかは不明ですけど)」
魔力特化の力を得た神器の所有者がダンジョン主に挑んだってのが、今回の事態を招いた原因だということがほぼ確定したな。
結果はダンジョン主の勝利。
そして、神器の所有者を喰ったダンジョン主は能力を一気に成長させ、魔物を大量排出、今はダンジョン拡張の段階に入っていると見て間違いなさそうだ。
「ローマン、話してくれてありがとう。今回の魔物流出の原因は特定できた。この件に関してはお前らに罪を問うことはないとだけ伝えておく」
「すまん、恩に着る」
「う、ううう……ここはどこだ……ローマン、ミラ……大丈夫か……」
ローマンと話していたら、隣で眠っていたムエルが目を覚ましたようであった。
まだ、傷が完治していないため、苦痛で顔をしかめている。
「ムエル、私たちは助かったぞ。今はグレイズたちにあの倉庫から助け出されラムザ鉱山の探索拠点にいるんだ。ミラも一緒にいるから安心しろ」
「グ、グレイズに助け出されただと……」
「よぅ、ムエル。久しぶりだな」
「意外と元気そうだなムエル……死にかけてたとは思えん」
「ジェイミー、それにグレイズ! お前ら……クッ痛てえ……」
俺たち二人の顔を見たムエルが起き上がろうとして、傷の痛みで顔をしかめていた。
「ムエル、無茶するな。それにグレイズは助けてくれた恩人でもあるんだぞ。恨みを忘れろとは言わんが、今は敵対している時ではないんだ!」
常に日和見を続けていたローマンが、ムエルをたしなめていた。
今までの二人の関係を知っている俺としては驚いていた。
「仕方ねぇ。ローマンの顔に免じて、今は敵対しないでおいてやる。ただし、忘れるなよ。グレイズ、お前の首を取るのはオレだってな! いてて……」
「俺の首を取りたいなら、しぶとく長く生き延びることだな。簡単にお前にくれてやる首はないが」
ムエルとは埋められない溝があると自覚しているため、慣れ合うつもりは全くない。
が、弱っているやつを苛める趣味はないので、早々に退散することにした。
「じゃあな。お前らはしばらくそこで傷を癒すといい。ジェイミー、早速絶望都市と監獄の攻略をどうするか対策会議を招集しよう。ローマンは後で参加してくれ」
「グレイズ……くっそ、この傷さえなければ……ちくしょう……ふざけやがって」
ムエルの悪態が背後から聞こえてきたが、俺は聞こえないふりをしてその場を去った。
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