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最終章 そして、伝説へ
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しおりを挟むダンジョン主が表情を一変させると、周囲の空気が変わりピリピリとした感覚を俺に送り込んできた。
気配が変わった……これはちょっとマズいやつかもしれん。
「さて、極上の神器を持つお前を食ってさらに力を得るとしよう」
ダンジョン主はそう言うと、俺に向かって駆けだしてきた。
早い! さっきとは段違いの早さっ!
さきほどまでと違い、巨体に見合わぬ動きを見せたダンジョン主に間合いを一気に詰められた。
「簡単にやっちまうのは惜しいから遊んでやろう」
「なに?」
近寄ったダンジョン主の身体から無数の腕が生え、俺に向かって一斉に伸びてきた。
「!?」
数が多いっ! これは避けきれん!
避けようと思ったが、どこに避けても拳が俺を捉えてしまうと判断し、急所を守る方を選択した。
圧倒的な数の拳が、俺の身体を叩きつけていった。
押し寄せる拳の圧力に耐えかねた服が千切れ飛んでいく。
「グレイズさん!? これ以上はやらせない。地上でこんな姿を晒すのは恥ずかしいけど……この際、仕方ないです。わふぅううううううっ!」
獣人姿になったハクが遠吠えをしたかと思うと、彼女の口から白い光が発せられていた。
白い光は俺を襲っていたダンジョン主の腕を消し飛ばしていく。
「すごい威力なのじゃ! その技は妾も使ってみたいのじゃ!」
「ハク、それは?」
「神術です。本当は魔素汚染が広がるので地上で使うのは禁じられてますけどねっ! 一回だけならアクセルリオン様もお許しくださるかと」
ハクが口から発した白い光によって、俺はダンジョン主が大量に生やした拳から圧力を脱することができた。
「たしかに強力過ぎそうだ」
ハクの発した白い光はダンジョン主が作った絶対に破壊されないはずのダンジョンの構造物まで壊していた。
ダンジョンまでぶっ壊せる威力みたいだし、あれが発動しただけで周囲の魔素がより一層濃くなった。
連発したら常人では数分ももたない濃度にまで高まるだろう。
「さすが、クソ女神の従属神だ。忌々しい技を持っていやがる。お前の方が危なそうだから先に消さしてもらうとしよう」
ターゲットをハクに変えたダンジョン主が、再び先ほどと同じように無数の腕を生やし拳の嵐を見舞っていた。
「やらせんのじゃっ! 魔法が効かない妾は援護しかできない。石の防壁」
地面に手を当てたクィーンが魔法を発動させた。
ハクを囲うように地面から堅く分厚い石の壁が出現し、拳の嵐からハクの身体を守っていた。
「ナイスだクィーン。こっちも多少反撃しないとな」
戦斧を握ると、俺はダンジョン主から生えた腕を次々に斬り落としていく。
魔法が全て吸収され回復してしまう相手であるため、肉弾攻撃を中心に戦っていくしか手がない。
「あたしも援護しますっ!」
石の壁が崩れ去ると、中から飛び出したハクも一緒になってダンジョン主の腕を斬り落とし始めた。
腕は見る間に減っていき、地面には斬り落とされた腕で埋め尽くされていった。
「ちぃ、小癪なやつらだ」
「油断したな」
苛立ちを感じ気が逸れた隙に、俺はダンジョン主の身体を駆け上る。
「ま、待て!」
ミスリルゴーレムの頭から生えたダンジョン主の前に飛び上がると、戦斧で身体を真っ二つに割いた。
「ぐうぅうううう馬鹿な……」
やったか! 手ごたえは十分にあったが……。
俺の戦斧で半身にされたダンジョン主がドサリと倒れる。
「やったのか?」
「やりましたかね?」
「分からん。油断するな」
先ほどまでの喧騒が嘘みたいに、静寂が辺りを支配する。
キメラとなったダンジョン主の身体がピクリとも動かなかった。
『本当に苛立たせてくれるやつらだ』
静寂を破る声が、ダンジョン主の身体の奥から響いてきた。
『しばらくはこの身体に慣れようと思っていたのに、もう遊びは終わりだ。このダンジョンに入ってる連中もろともお前らを喰らいつくしてやる』
そう声が響くと、色々な魔物が融合したダンジョン主の身体が砂のような粒となって消え去った。
その時、まぶしい光が一面を覆いつくしていった。
光がおさまると、それまでの廃墟は消え失せ、隠れる場所のない闘技場のような場所にいた。
なんだか見覚えのある場所だった。
あたりを見渡すと、魔素酔いを避けるため休憩する冒険者が多数目に入った。
ここは広場か! なんでこんな場所に飛ばされてるんだ!
「グ、グレイズさん!? なんでここに!!」
「グレイズ、急に現れた。どうなっている?」
「グレイズさん、もしかして転移の魔法とか使いました?」
「あー、ハクちゃんが綺麗な女の子になってるー!」
「あ、あ、あ。違うの、これは違うのファーマちゃん違うから!」
「メラニア、お腹すいたー」
先に脱出させたメリーたちが駆け寄ってくる。
俺たちはどうやらダンジョン主の力で広場に飛ばされたらしい。
「分からん、ダンジョン主の力で飛ばされ――」
俺が言葉を言い終わらぬ前に、広場の中央に背中から六枚の羽根を生やし、首に真っ黒な首輪を着けた若い青年がいきなり現れた。
その姿はミスリルゴーレムの頭上から生えていた青年の姿に酷似していた。
「グレイズとか言ったな。遊びは終わりだと言ったはずだ。お前を食って『超越者の腕輪』をもらい受ける。その前に邪魔なやつらを殲滅させてもらおう」
ダンジョン主の青年が手をかざすと、地面に魔法陣が現れ、そこから大量の魔物が湧き出してきた。
その数は広場の門でD地区の魔物を迎撃した時よりもさらに多くの数に見えた。
「マズい……この状況では全滅しかねない。みんな悪いが武器を取れ固まってそれぞれ連携して敵を迎撃するぞ」
突如現れた大量の魔物たちに、完全に不意を打たれた格好の冒険者たちが状況を察しすぐに武器を手に取る。
奇襲を受けたが、まだ総崩れしてないだけマシだな。
精鋭たちしか連れてきてなかったのが幸いした。
「火炎陣!!」
とっさに魔物たちを近寄らせないよう、範囲魔法で火の壁を作り出した。
だが魔物たちは火に焼かれながらも、次々に壁の中に躍り込んでくる。
「歩ける怪我人はカーラの元へ! 動けない人は魔法職が一緒に手伝って運んで、戦える人はグレイズさん作った火の壁から出てくる魔物を迎撃。慌てなくていい」
メリーが凛とした声で冒険者たちに指示を出していた。
「すまん、助かる」
「事情がよくのみこめないけど、あれがダンジョン主ってことよね?」
「ああ、そうだ。あんな姿だがとびきり凶悪なダンジョン主だ」
「逃げられそう?」
「厳しいだろうな……」
「なら、ここでやるしかないわね。期待していいかしら、グレイズさん」
メリーからの言葉でこの場所でダンジョン主と戦う決断をした。
「ああ、全力を出すから危ないと思ったら冒険者たちを守ってくれ」
「天啓子としてはグレイズさんを守るべきかと思うけど、お願いされたら断れないわね」
「すまん。仲間たちも頼むぞ」
「死ぬわけじゃないでしょ。あんなの手早く倒して、早くブラックミルズで添い寝しましょう」
メリーはとびっきりの笑顔で俺にウインクしていた。
「ああ、そうだったな。とっととあいつを倒して街に帰るとするか」
俺は戦斧を握り直すと、ダンジョン主に向けて駆けだした。
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