俺だけLVアップするスキルガチャで、まったりダンジョン探索者生活も余裕です ~ガチャ引き楽しくてやめられねぇ~

シンギョウ ガク

文字の大きさ
61 / 81

第61話 休日の楽しみ

しおりを挟む

 店内はカウンター席とテーブル席に分かれており、キッチンの中では、魔石によって火を起こすコンロが鍋の湯を沸かして湯気がもうもうと立ち昇っている。


 客はカウンターに3人ほどか。


 昼時だけど、寂しい限りだな。


 これも探索者がいなくなった影響だって聞いてるけど、やっていけるのか。


「いらっしゃい! おー、ガチャ! 来てくれたかー。ヴェルデ君も。あれ? アスターシアちゃんは?」


 店主は公衆浴場でよく会う人で、ガチャのことをいたく気に入り、毎度おやつを持って待っててくれるいい人だ。


 探索者がたくさんいた時は、遅くまで店も営業してたらしいが、半年前の国のお触れによる大移動後は早目に店を閉めていると聞いている。


 探索から帰ってくると、時間的に締まってて食えなかったんだよなぁ。


 でも、今日は食える!


「アスターシアは、買い物中でして、あとから来るのでテーブル席使っていいですかね?」


「ああ、いいぜ。どうせ、空いてるしな。好きなところに掛けてくれ」


「ありがとうございます。ガチャ―、他の客の邪魔にならないよう奥の席にいくぞ」


 ガチャがシュタタと奥の席に向かって駆け、椅子の上に昇ると座面に伏せた。


 自分のポジションはすでに確保したってわけか。


 ガチャに遅れて俺も奥のテーブル席に腰を下ろした。


 にしても、完全に店の作りが現代日本のうどん屋なんだよなぁー。


 うどん職人が『渡り人』で来たんだろうけどさ。


 それに醤油だけじゃなくて、昆布とか鰹節もきちんと、この世界に存在してるのもリアリーさんの店で確認してるし。


 ホーカムの街にはないらしいが、他の街にはラーメン屋もあるって聞いてる。


 ここは異世界だけど、日本的な文化の影響をものすごく受けてしまった世界だって実感するよ。


 お品書きメニューを眺めつつ、店内を見回してると、ガチャが膝に乗ってきた。


「うどんは、ガチャには塩分が濃いから、薄めてもらったやつだな。油あげ食うか? ほら、あそこの人が食ってるやつだ」


 異世界で油あげがきつねって呼ばれてるのも不思議だが、食い物の名称として定着しただけで、意味までは伝わってなさそうな気もする。


 カウンター席できつねうどんの油揚げを食べているお客を指差す。


 勢いよく頭を上下に振るガチャのよだれが、俺のズボンに染みを作った。


 野菜以外は普通に食うんだよなぁ。


 枝豆は綺麗に避けてたけど、大豆製品なら興味持つのか。


 ガチャは、ネギ抜きの汁を薄めてもらったきつねうどん。


 俺もきつねうどんにしとくかな。なんか、久しぶりに食べる気がする。


 注文は、アスターシアが戻ってくるまで待っておくか。


 よだれが止まらないガチャを膝に抱えつつ、アスターシアの合流を待っていると、息を切らした彼女が暖簾をくぐって店に入ってくる。


「いらっしゃい! お! アスターシアちゃんか! ヴェルデとガチャが奥でお待ちかねだぞ!」


 紙袋を手にしたアスターシアが店主に頭を下げると、俺たちのいるテーブル席に駆け寄ってくる。


「遅くなりました。探してた物があったので買っていたら、思いのほか時間がかかってしまいまして。ガチャ様もお待たせしました」


 紙袋を隣の座席に置いたアスターシアが、俺の前の席に座る。


「ガチャもちゃんと大人しく待てたもんなー」


 俺の膝の上に座っているガチャが、レバーを回して応えてくれた。


「そうそう、ガチャ様に差し上げたい物がありましてね」


 そういったアスターシアが、持ってきた紙袋の中をガサガサと漁る。


 出てきたのは、子供用のよだれかけだった。


「ずっと買おうと思ってたのですが。ガチャ様のお食事の時は、付けた方がいいと思うんです。ほら、フリフリのレースも付いてて可愛いですし、ガチャ様にとても似合うと思うんですよね」


 レースの付いたよだれかけを持つアスターシアが、鼻息荒く着用をするように力説してくる。


 まぁ、たしかにあった方が汚れにくくなるよな。


 それに可愛いのは間違いない。


「ガチャ、着けてみるか?」


 頷く返したガチャに、受け取ったよだれかけを着用する。


「ぐっ! 予想通り可愛い……。ステキです。ガチャ様」


 邪魔そうにはしてないし、似合ってるなー。


 よだれも垂れずにすむし、一石二鳥か。


「よかったな、ガチャ。アスターシアにお礼を言わないと」


 レバーを回して喜ぶガチャに、アスターシアが優しく微笑んだ。


「さて、よだれかけももらったし、俺たちの注文は決まってるけど、アスターシアはどうする?」


 お品書きを手渡すと、うんうんと唸り始めた。


 彼女も麺類が好きらしい。


 オークション代行業者しつつ、雑貨商をやっていた両親とともに、世界各地を旅して育ってきているため、それぞれの街の有名な店に行っていたそうだ。


「このホーカムの街は、うどんのだしの方ですよね、何にしようかなぁ。ちなみにヴェルデ様たちは?」


「きつねうどんにしようかと思ってる」
 

「じゃあ、わたしも同じのにしときますね。すみませーん、きつねうどん3つくださーい。ガチャ様の分は薄めで」


「あいよ。きつね3つ! ガチャのはちゃんと薄いのにしとく! 任せろ!」


 なんだか、こういったやり取り聞いてると、異世界に来た感じが薄くなるよな。


 外国のうどん屋に入ったみたいな感じでしかないぜ。


 とはいえ、麺があると分かってると、身体が欲するわけで……。


 しばらく待つと、店の子がテーブル席にきつねうどんを運んできてくれた。


「おぉ、いい匂い。しっかりと出汁が効いてる感じがする」


 器の中から立ち昇る醤油と出汁の匂いが、食欲を刺激してくる。


「ガチャ、まだ熱いから待てだぞー」


 大人しくジッときつねうどんを見つめるガチャのため、うどんを皿にとりわけ、油あげと麺を細かく箸で切る。


「ガチャ様、もう少しだけお待ちください。今は匂いだけですよ」


 舌を火傷されては困るので、冷めるまで待ってもらうしかない。


 少し待ち、ほどよく冷めたところで、ガチャの前に皿を置いた。


 ガチャはチラリとこちらを見上げ、待ての解除を確認してくる。


「よし、いいぞ」


 勢いよく、皿に顔を突っ込んだガチャが、猛烈な勢いでうどんを食していく。


 よだれかけが、見事に仕事をしている。


 さすがアスターシアだ。良い物を買ってくれた。


「俺たちも冷めないうちに頂こうか」


「そうですね。いただきます!」


 麺を箸ですくい、口に含むと汁を飛ばさないようすすり上げる。


 口に入った麺を噛み締め、味と香りを味わっていく。


 つるっとしたのど越しで、めんがやわらかくモッチリとしていて断面は丸くなっていた。


 角が丸い方がだしとのからみが良く、のど越しがいいって感じか。


 ちゃんと美味しさを考えて作ってあるうどんだ。


 麺の美味しさを味わいつつ、だしの効いたつゆを飲む。


 昆布と小魚の節を大量に使ってだしを取ってて、旨味の塊かよってくらいにぶん殴ってくるぞ。


 薄口の醤油まで使ってで上手く味を調えてやがる。


 プロの犯行だろ……。異世界のうどん……侮れねぇ……。しっかり関西風を継承してる。


 さすがにお揚げは、麵やだしのレベルまで達してないよな。


 箸で油揚げをすくうと、端から噛み切った。


 だしを計算したかのような、甘辛に煮付けてある……。


『麺』、『だし』、『具』のどれか一つがでしゃばることがない三位一体のうまさが広がるよう計算されつくされた味付け!?


 これは美味い……。やみつきになりそうな味だ。


 このレベルでうどんを再現できてるなんて、よっぽどの職人がこっちに渡ってきたんだろう。


 俺は夢中で麺をすすり、油あげを噛み切り、だしを飲む。


 あっという間に器の中身が消え去っていた。


「ふぅ、うめぇ。こんなに美味いうどんは初めてだ!」


 うどんの美味さに夢中だった俺は、ガチャが次の分をくれと、前足でねだっているのにようやく気付く。


「すまん、すまん。今、取る」


 皿に取り分けると、ガチャも再びうどんを食べ始めた。


 みんな夢中で、言葉も少なくなる。


 アスターシアも器用に箸を使い、熱いうどんをすすって、美味さに表情が緩んでいた。


 休日の昼は、このうどん屋に通いつめようかな。


 まだ食べられてないのもいっぱいあるし、この味のレベルなら他のやつも期待できそうだ。


 休日の楽しみが一つ増えたな。


 うどん職人の『渡り人』に感謝だし、味をきちんと受け継いだ店主にも感謝しかねぇ。


「ふぅ、美味しかった。おだしが効いてますね。つゆのおうどんも好きですが、こちらのおだしのも癖になります」


「俺もそう思う。次の休みの日になったら、来るのもありだと思うぞ」


「ええ、そうですね。お昼に来られるのは、お休みの日だけですし、贅沢に外食もありだと思います!」


「ガチャはどうだ?」


 食べ終えたガチャが、ブンブンと勢いよく、頭を上下に振る。


 どうやらガチャも気に入ったらしい。


「じゃあ、休日のお楽しみとして、採用するかな」


「お、そうしてくれるか。公衆浴場が復活して多少の客足は戻ったが、探索者がいたころとは比べ物にならねえんだ。ヴェルデたちがたまにでも食べに来てくれるだけでも助かるよ」


 カウンターのお客が会計を済ませて出たため、手が空いた店主も俺たちの話を聞いてたらしく、休日のお楽しみとして採用を期待しているようだ。


「じゃあ、休日の昼には必ず顔を出しますよ」


「頼むぜ」


 やっぱり街に探索者が戻ってきてくれるようにしないと、店も街もいろんな問題が起きているよな。


 何とかならないものか。


 街の行く末のことに考えを巡らせつつ、店主に代金を支払うと、俺たちは店を出てリアリーさんの宿に戻ることにした。
しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す

名無し
ファンタジー
 パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。

レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない

あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ

高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。 タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。 ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。 本編完結済み。 外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。

隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜

桜井正宗
ファンタジー
 能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。  スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。  真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。

オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】

山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。 失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。 そんな彼が交通事故にあった。 ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。 「どうしたものかな」 入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。 今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。 たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。 そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。 『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』 である。 50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。 ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。 俺もそちら側の人間だった。 年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。 「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」 これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。 注意事項 50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。 あらかじめご了承の上読み進めてください。 注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。 注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。

処理中です...