73 / 81
第73話 中心部
しおりを挟む「それにしても、広すぎる……」
「まだ、広がってるんですかね?」
「地面が揺れてるから、まだまだ広がってそうだ。帰り道も変化してるかもしれん」
「マジかよ! 昨日はそのまま帰ることができたけど、帰り道が変化してたら脱出にもまた時間がかかるってことか」
「帰る時間も考慮しないといけませんね」
探索を進める俺たちは、見通しのいい広間に腰を下ろし、午後からの探索をどうするか話し合いながら昼食をとっている。
すでにダンジョンに入って4時間。
ダンジョンの進化は、こちらの想定以上に速い。
トマスの意見によると、帰るころには、また新しい通路が生成されている可能性もあるらしい。
「あと、2時間ってところだな。無理に探索しようとして、帰れないじゃ困るだろ」
食事を先に終えたトマスが、懐中時計を取り出し、時間を確認しながら、帰還までのタイムリミットを伝えてくる。
「2時間か……」
映し出されたままのダンジョンマップを見て、2時間で調査できそうな範囲を絞る。
「ここの通路の先を最優先にして、突き当りだったら、こっちの小部屋の捜索、時間があればこちらの傾斜のついた坂道の上を調べるくらいって感じにしとくか?」
俺は映し出されたダンジョンマップを使い、午後の捜索範囲を指差した。
「ヴェルデの案は妥当なところだ。それくらいが限度だろうな」
「魔物の集団が多くいたら、それよりも早めに引き上げますか? 帰り道でも魔物が再発生してるかもしれませんし、余力を残しておいた方がいいと思います」
「たしかに。ギリギリまで戦って帰還するのは危ないかもな。このパーティーはヴェルデの戦闘力頼りなわけだし」
「探索終了の条件にあと3つの魔物集団と遭遇した場合を付け加えてくれ。それくらい余力は残して帰還した方が安全に帰れると思う」
「いい判断だと思う。限界まで戦闘するのは、バカのやることだしな。その条件は守ろう」
午後の方針が定まったところで、俺たちは休憩を終え、再びダンジョン内の探索を再開する。
瞬く間に探索の時間はすぎ、いくつかの罠発見と、魔物集団に遭遇し、帰還を始める目安の時間が近付いてきた。
「ヴェルデ様、そろそろ帰還の時間ですが……」
時間の管理をしてもらっているアスターシアから、魔物を倒した俺に声がかかる。
「そうか、もう時間か……」
「すまん! ちょっと、待ってくれ! あの壁に打ち込まれる目印!」
びっくりした表情をするトマスが指差す先には、赤い布が巻き付いた杭が打ち込まれていた。
「あれは?」
「たぶん、オレが発動させた落とし穴の罠を示した杭だ! 魔素溜まりに繋がった穴のやつ! 近くにきっとボスの部屋もあるはずだ!」
周囲の安全を確認したトマスが、杭の方へ走っていく。
俺たちも慌ててトマスの後を追うと、目印の杭を曲がった先の通路にはぽっかりと穴が空いていた。
落とし穴の先には、トマスの言ったようにダンジョンボスがいると思われる広い空間への入口も見える。
「やっと中心部に戻ってきた。あのGランクダンジョンが、こんなに広大なダンジョンへ進化してるとはな」
中心部か……。
ボスを討伐すれば、魔素溜まりに繋がって超速成長のダンジョンは消滅してくれるが。
ボスがどれくらいの強さにまで進化してるかだよな……。
でも、MPを回復してくれるマナポーションもあるし、脱出できる帰還のスクロールもある。
戦ってみる選択肢はありだよな。
「ボス討伐、狙ってみてもいいか?」
「正気かよ。どれだけ進化してるか分からないんだぞ」
「トマスさんのいう通りです。いくらヴェルデ様が強いとはいえ、必ず勝てるとは――」
脅威度判定はダンジョンマップが埋まってないので、不明のままだしな。
魔素濃度と出てくる魔物の強さで見れば、最低Cランク。
下手すりゃ、Bランク超えてる可能性もある。
最初のダンジョンのボスだったゴブリンチャンピオンクラスのボスモンスターが、配置されててもおかしくない。
トマスもアスターシアも自重した方がいいと、表情に出ていた。
俺は帰還のスクロールと、マナポーションを空間収納から取り出すと、自らの作戦を伝える。
「勝てなさそうだと判断したら、これで脱出するつもりだ。ポーションで消費した魔力も回復できるし、偵察がてら戦ってみるだけさ」
「帰還のスクロール! そんなものまで持ってるのかよ! それを使えば、ボス部屋からも脱出できるし、やってみる価値はあるかもしれん」
トマスは脱出手段があるのを知ると、意見を翻した。
「……承知しました。帰還のスクロールはあたしが読み上げます。脱出の際は声をかけてください!」
「ああ、任せる」
俺たちはダンジョンボス部屋に侵入することを決めると、落とし穴に落ちないよう慎重に通路の端を歩き、入口へと向かった。
142
あなたにおすすめの小説
パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
名無し
ファンタジー
パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
レベル1の時から育ててきたパーティメンバーに裏切られて捨てられたが、俺はソロの方が本気出せるので問題はない
あつ犬
ファンタジー
王国最強のパーティメンバーを鍛え上げた、アサシンのアルマ・アルザラットはある日追放され、貯蓄もすべて奪われてしまう。 そんな折り、とある剣士の少女に助けを請われる。「パーティメンバーを助けてくれ」! 彼の人生が、動き出す。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!
おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。
ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。
過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。
ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。
世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。
やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。
至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
オッサン齢50過ぎにしてダンジョンデビューする【なろう100万PV、カクヨム20万PV突破】
山親爺大将
ファンタジー
剣崎鉄也、4年前にダンジョンが現れた現代日本で暮らす53歳のおっさんだ。
失われた20年世代で職を転々とし今は介護職に就いている。
そんな彼が交通事故にあった。
ファンタジーの世界ならここで転生出来るのだろうが、現実はそんなに甘く無い。
「どうしたものかな」
入院先の個室のベッドの上で、俺は途方に暮れていた。
今回の事故で腕に怪我をしてしまい、元の仕事には戻れなかった。
たまたま保険で個室代も出るというので個室にしてもらったけど、たいして蓄えもなく、退院したらすぐにでも働かないとならない。
そんな俺は交通事故で死を覚悟した時にひとつ強烈に後悔をした事があった。
『こんな事ならダンジョンに潜っておけばよかった』
である。
50過ぎのオッサンが何を言ってると思うかもしれないが、その年代はちょうど中学生くらいにファンタジーが流行り、高校生くらいにRPGやライトノベルが流行った世代である。
ファンタジー系ヲタクの先駆者のような年代だ。
俺もそちら側の人間だった。
年齢で完全に諦めていたが、今回のことで自分がどれくらい未練があったか理解した。
「冒険者、いや、探索者っていうんだっけ、やってみるか」
これは体力も衰え、知力も怪しくなってきて、ついでに運にも見放されたオッサンが無い知恵絞ってなんとか探索者としてやっていく物語である。
注意事項
50過ぎのオッサンが子供ほどに歳の離れた女の子に惚れたり、悶々としたりするシーンが出てきます。
あらかじめご了承の上読み進めてください。
注意事項2 作者はメンタル豆腐なので、耐えられないと思った感想の場合はブロック、削除等をして見ないという行動を起こします。お気を悪くする方もおるかと思います。予め謝罪しておきます。
注意事項3 お話と表紙はなんの関係もありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる