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秋田へ
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「……探しに行かなきゃ。」
ぽつりとこぼれたその言葉が、夜の書斎に沈んでいった。
蒼介は膝の上のアルバムをそっと閉じ、深く息を吸った。冷えた空気が肺の奥に刺さる。
何もかも、手遅れになりそうで怖かった。
気づくのが遅すぎたんじゃないか。けれど――それでも、まだ間に合うかもしれない。
美奈子が、いや、“千紘”が何を背負っていたのか。
どうして突然いなくなったのか。
それを知らずに、このままやりすごすことだけは、どうしてもできない……蒼介は机の上に置いてあったスマホを手に取る。
発信履歴の一番上には、数日前にかけた「美奈子」の名前。
書斎の時計が午前二時を指しているのを一瞥した蒼介は立ち上がり、リビング、寝室、押し入れ――家の隅々まで手がかりを探した。
だが、美奈子の行き先を示すような手がかりは、何ひとつ見つからない。
――まるで、最初から消えるつもりだったみたいに。
家中を探し終わり、ため息をついた時にはもう、日が登り始めていた。
フラフラと寝室に入り、ベッドに体を沈めた瞬間、スマホがかすかに震えた。
「美奈子!?」
反射的に起き上がり、スマホの画面を見れば「日下部里桜」の名前。
娘からのメッセージだった。
「お母さん、秋田にいるって。」
蒼介はスマホを強く握りしめた。
通話マークをタップしようとしたけれど、指が途中で止まる。
自分が何を言おうと、きっと「ごめんなさい」とだけ言って、また姿を消すだろう。
だから、直接会いに行って気持ちを伝えなければ。
直接、目を見て話さなければ――。
蒼介はゆっくりと息を吐き、立ち上がった。
アルバムをそっとバッグに入れ、財布と鍵をポケットに押し込み、玄関に向かう。
早朝の空気はひどく冷たかった。
白い息を吐きながら、車のドアを開ける。
運転席に座ると、ハンドルを握る手は汗ばんでいた。
時計の針は、もうすぐ午前7時。
迷いはなかった。
――行こう。秋田へ。
エンジンをかけると、静寂を破るように低い音が響いた。
ライトの光が闇を切り裂き、夜道を照らす。
バックミラーに映る自分の顔は、いつになく険しい。
けれど、その奥に宿るものは、確かな決意だった。
どんな真実であれ、もう逃げるつもりはなかった。
あの笑顔をもう一度。
もう一度この目で確かめるために、車はゆっくりと走り出した。
蒼介は、ハンドルを握る力をこめ、前を見据えた。
夜明けまでには、きっと着く。
長い夜の果てに、美奈子が待っていると信じていた。
ぽつりとこぼれたその言葉が、夜の書斎に沈んでいった。
蒼介は膝の上のアルバムをそっと閉じ、深く息を吸った。冷えた空気が肺の奥に刺さる。
何もかも、手遅れになりそうで怖かった。
気づくのが遅すぎたんじゃないか。けれど――それでも、まだ間に合うかもしれない。
美奈子が、いや、“千紘”が何を背負っていたのか。
どうして突然いなくなったのか。
それを知らずに、このままやりすごすことだけは、どうしてもできない……蒼介は机の上に置いてあったスマホを手に取る。
発信履歴の一番上には、数日前にかけた「美奈子」の名前。
書斎の時計が午前二時を指しているのを一瞥した蒼介は立ち上がり、リビング、寝室、押し入れ――家の隅々まで手がかりを探した。
だが、美奈子の行き先を示すような手がかりは、何ひとつ見つからない。
――まるで、最初から消えるつもりだったみたいに。
家中を探し終わり、ため息をついた時にはもう、日が登り始めていた。
フラフラと寝室に入り、ベッドに体を沈めた瞬間、スマホがかすかに震えた。
「美奈子!?」
反射的に起き上がり、スマホの画面を見れば「日下部里桜」の名前。
娘からのメッセージだった。
「お母さん、秋田にいるって。」
蒼介はスマホを強く握りしめた。
通話マークをタップしようとしたけれど、指が途中で止まる。
自分が何を言おうと、きっと「ごめんなさい」とだけ言って、また姿を消すだろう。
だから、直接会いに行って気持ちを伝えなければ。
直接、目を見て話さなければ――。
蒼介はゆっくりと息を吐き、立ち上がった。
アルバムをそっとバッグに入れ、財布と鍵をポケットに押し込み、玄関に向かう。
早朝の空気はひどく冷たかった。
白い息を吐きながら、車のドアを開ける。
運転席に座ると、ハンドルを握る手は汗ばんでいた。
時計の針は、もうすぐ午前7時。
迷いはなかった。
――行こう。秋田へ。
エンジンをかけると、静寂を破るように低い音が響いた。
ライトの光が闇を切り裂き、夜道を照らす。
バックミラーに映る自分の顔は、いつになく険しい。
けれど、その奥に宿るものは、確かな決意だった。
どんな真実であれ、もう逃げるつもりはなかった。
あの笑顔をもう一度。
もう一度この目で確かめるために、車はゆっくりと走り出した。
蒼介は、ハンドルを握る力をこめ、前を見据えた。
夜明けまでには、きっと着く。
長い夜の果てに、美奈子が待っていると信じていた。
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