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episode2
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薄いレースのカーテン越しに差し込無朝の光……。まだ完全に目が覚めきらないまま、私は寝台の中で身じろぎをする。
――そのとき。
ノックもされないまま、ためらいなく扉が開かれた。
「リュシエル!」
次の瞬間、私は起き上がる間もなく抱き締められていた。こんな事を許されるのはただ1人……
「お、お母様……」
朝の抱擁は、すでに日課になりつつある。
皇妃は私を離そうとせず、耳元で楽しげに囁いた。
「今日は特別な日よ。貴族たちを招いて、パーティを開くの」
「……パーティ」
「ええ。あなたのお披露目も兼ねているわ」
その言葉に、胸の奥がわずかにざわつく。
「大丈夫。私がついているわ」
そう言って皇妃はようやく腕を解いた。
*
エントランスホールは、朝から華やかな空気に満ちていた。
到着した貴族たちは、次々と姫への贈答品を使用人に預けていく。宝石をちりばめた箱、精巧な装身具、見たこともない工芸品。
「……すごい……」
思わず、声が漏れる。
これほど多くの人の視線と期待が、自分に向けられている。その事実が、まだ現実のものとして胸に落ちてこない。
「……少しだけ、城内を見てきてもいい?」
エリーゼが、心配そうに眉を寄せる。
「今は来客も多うございます」
「すぐ戻るから。ね?ほんの少しだけ」
そう告げると、エリーゼが制止する手を逃れて駆け出した。
「リュシエル様!」
*
美しく飾り付けられた宮殿、たくさんの磨かれた食器。立食パーティ向けに準備された料理からはいい香りが漂い、音楽家達が心地いい音楽を奏でている。
そんな中、使用人たちが慌ただしく行き交う通路まで来ると、不意に声をかけられた。
「……あら?」
振り返った瞬間、胸の奥が冷たくなる。
そこにいたのは、見覚えのある二人。
元夫のケルンと、そしてミシェル。
ケルンは、姫への贈答品らしいアクセサリーの箱を抱えている。
「あら、ソフィお姉様。ごきげんよう♡家を出てどちらへ行ったのか心配いたしましてよ?けれど、宮殿の使用人として働いていらしたのね。」
変わらない調子でクスクスと嘲笑するミシェル。
ケルンは私を見るなり、怪訝そうに眉をひそめる。
「……私を追いかけてここまで?悪いけどソフィ。私の愛は1人にしか注げないのだ。そう、ミシェルにね。」
一瞬、言葉が詰まりかけた。
けれど、私はゆっくりと息を整え、背筋を伸ばす。
「いいえ」
声は、不思議なほど落ち着いていた。
「あなた達、どうやってここへ?招待状が必要なはずよ」
二人は同時に目を細め、腹を抱えて笑い出した。
「冗談だろソフィ」
「お忘れでした?お姉様。私の家は男爵ですの。ケルンも子爵家の人間。……と、ご説明しても、商人に売られる様な家柄の方にはわからないかもしれませんが。」
「――リュシエル様。」
回廊の奥から、凛とした声が響く。
振り返ると、皇妃がエリーゼを伴って立っていた。その姿を見た瞬間、二人の顔色がはっきりと変わる。
皇妃は私の隣に立ち、そっと肩に手を置いた。
「リュシエル。この者たちは?」
エリーゼの方に視線を送ると、彼女は鼻息荒く頷いて見せた。
「いいえ、存じ上げません。」
その瞬間、衛兵達が2人を囲んだ。
「ちょっと!招待状を持っているのよ!」
「ソフィ!!お前、どの立場から言っているんだ!」
ミシェルの手から招待状を受け取った衛兵は、それを開いて皇妃に見せた。
「陛下、本物の様です。いかがなさいますか。」
一瞬の沈黙、息を呑む音。
そして、皇妃は2人を一瞥もせずに踵をかえした。
「破り捨てなさい。あの者達は、今日のパーティにふさわしく無い。」
――そのとき。
ノックもされないまま、ためらいなく扉が開かれた。
「リュシエル!」
次の瞬間、私は起き上がる間もなく抱き締められていた。こんな事を許されるのはただ1人……
「お、お母様……」
朝の抱擁は、すでに日課になりつつある。
皇妃は私を離そうとせず、耳元で楽しげに囁いた。
「今日は特別な日よ。貴族たちを招いて、パーティを開くの」
「……パーティ」
「ええ。あなたのお披露目も兼ねているわ」
その言葉に、胸の奥がわずかにざわつく。
「大丈夫。私がついているわ」
そう言って皇妃はようやく腕を解いた。
*
エントランスホールは、朝から華やかな空気に満ちていた。
到着した貴族たちは、次々と姫への贈答品を使用人に預けていく。宝石をちりばめた箱、精巧な装身具、見たこともない工芸品。
「……すごい……」
思わず、声が漏れる。
これほど多くの人の視線と期待が、自分に向けられている。その事実が、まだ現実のものとして胸に落ちてこない。
「……少しだけ、城内を見てきてもいい?」
エリーゼが、心配そうに眉を寄せる。
「今は来客も多うございます」
「すぐ戻るから。ね?ほんの少しだけ」
そう告げると、エリーゼが制止する手を逃れて駆け出した。
「リュシエル様!」
*
美しく飾り付けられた宮殿、たくさんの磨かれた食器。立食パーティ向けに準備された料理からはいい香りが漂い、音楽家達が心地いい音楽を奏でている。
そんな中、使用人たちが慌ただしく行き交う通路まで来ると、不意に声をかけられた。
「……あら?」
振り返った瞬間、胸の奥が冷たくなる。
そこにいたのは、見覚えのある二人。
元夫のケルンと、そしてミシェル。
ケルンは、姫への贈答品らしいアクセサリーの箱を抱えている。
「あら、ソフィお姉様。ごきげんよう♡家を出てどちらへ行ったのか心配いたしましてよ?けれど、宮殿の使用人として働いていらしたのね。」
変わらない調子でクスクスと嘲笑するミシェル。
ケルンは私を見るなり、怪訝そうに眉をひそめる。
「……私を追いかけてここまで?悪いけどソフィ。私の愛は1人にしか注げないのだ。そう、ミシェルにね。」
一瞬、言葉が詰まりかけた。
けれど、私はゆっくりと息を整え、背筋を伸ばす。
「いいえ」
声は、不思議なほど落ち着いていた。
「あなた達、どうやってここへ?招待状が必要なはずよ」
二人は同時に目を細め、腹を抱えて笑い出した。
「冗談だろソフィ」
「お忘れでした?お姉様。私の家は男爵ですの。ケルンも子爵家の人間。……と、ご説明しても、商人に売られる様な家柄の方にはわからないかもしれませんが。」
「――リュシエル様。」
回廊の奥から、凛とした声が響く。
振り返ると、皇妃がエリーゼを伴って立っていた。その姿を見た瞬間、二人の顔色がはっきりと変わる。
皇妃は私の隣に立ち、そっと肩に手を置いた。
「リュシエル。この者たちは?」
エリーゼの方に視線を送ると、彼女は鼻息荒く頷いて見せた。
「いいえ、存じ上げません。」
その瞬間、衛兵達が2人を囲んだ。
「ちょっと!招待状を持っているのよ!」
「ソフィ!!お前、どの立場から言っているんだ!」
ミシェルの手から招待状を受け取った衛兵は、それを開いて皇妃に見せた。
「陛下、本物の様です。いかがなさいますか。」
一瞬の沈黙、息を呑む音。
そして、皇妃は2人を一瞥もせずに踵をかえした。
「破り捨てなさい。あの者達は、今日のパーティにふさわしく無い。」
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