その愛、運命につき

yuzu

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episode2

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 衛兵に両脇を固められ、なおも抗議の声を上げながら城門の外へと追い出されていく二人を、エリーゼは満面の笑みで見送っていた。

 まるで長年胸につかえていたものが、ようやく晴れたかのような表情だった。

「さようなら。二度と、お城には近づかないでくださいませね」

 ぴしゃり、と言い切る声は、いつもの控えめな侍女のそれではない。

「放しなさい!私は招待客よ!」
「ソフィ!許さないからな!後で覚えていろ!」

 ……即忘れます。というか、二度と会いたくありません。

 そんな私の横で、エリーゼがにこやかに手を振っていた。

「お気をつけてお帰りくださいませ~。あ、城門の前には犬が――」
「うわ、やめろ!躾のなってない駄犬め!」

 宮殿付きの番犬の吠える声に重なるケルンの叫び声が、見事に城門の向こうへ消えていった。

 静かになった通路で、私はしばらく瞬きを繰り返す。

 ぽかん、と口を半開きにしたままの私の前に、エリーゼがくるりと振り返った。

「完・全・勝・利、でございますね!」

 両拳をきゅっと握りしめ、なぜか小さくガッツポーズ。
 その様子がおかしくて、思わず瞬きをする。

「ずっと、やってみたかったんです。ああいうの」
 
一瞬の沈黙のあと。

「……ぷっ」
「ふふ……」
「ふふふふっ!」

 二人は顔を見合わせ、ついに笑い出した。

「あははははっ。もう、エリーゼったら。ちょっとスッキリしたわ。」
「これしきで気が済まわれては困ります。リュシエル様。」

 そのとき。

「そうよ、リュシエル」

 背後から、楽しげな声が降ってきた。
 振り返った瞬間、私は思わず背筋を正す。

 皇妃の笑みは、私の知るどの肖像画よりも、どの物語に出てくる悪役よりも、はるかに歪んでいた。

 優雅に細められた目。
 慈愛を装った唇の端。

「私のかわいい姫を傷つけた罪……存分に、償っていただかないとね」

 エリーゼが息を呑み、私は反射的に一歩後ずさる。

(あ、これ本気だ)

 「毒りんごを送るか、毒薬入りのヴァインを飲ませるか。高い塔に幽閉するのも捨てがたいわ――ふふふ、ふふふふ」

 皇妃は指先を頬に当て、楽しそうに思案する。

「でも、ありきたりなのは嫌なのよね……みていなさいリュシエル。」

 エリーゼが、尊敬の眼差しでうなずく。

「さすが皇妃陛下……悪役の完成形でございます」
「褒め言葉として受け取るわ」

 皇妃はそう言って、私の肩にそっと手を置いた。

「安心なさい、リュシエル。あなたは何もしなくていいの」

 肩に触れる手には暖かい温もりがあるのに、あの2人への怒りは底無しの冷気を帯びていた。
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