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31 山育ち、スラ子を誘う
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スラ子。
俺が初めて友人になった学友であり、時折一緒にダンジョンへやってくる相手でもある。
なぜか彼女は、自分をスラ子と呼んでもらいたいほどスライムに執着している。
休みの日は日がな一日スライムを倒しているのだとか。
そんな彼女が、以前こういったことを俺は覚えている。
スライムに対する特効スキルを手に入れた、と。
そのことを俺が話すと、二人はなんだか俺をドン引きしながら見ているときと同じ目をしていた。
二人の中で、スラ子は俺と同カテゴリなのか?
確かに少し変わっているというか、変わっていると言うと喜ぶタイプだが。
「じゃあ……今度の休みにその子をここまで招待しようか」
「ごめん、その日は用事があるから私は無理」
「……君とそのスラ子って子を二人きりにすると危ない気がするな、私が同行しようか」
ともかく、そういう話になった。
問題は、スラ子がこの話を受けてくれるかどうかだ。
スラ子は引っ込み思案な性格だから、怖がって遠慮してしまうかもしれない。
そう思いながら声を掛けると――
「すごくでっかいスライムをひたすら殴らないか? ――行くッッッッッッ!!!!!!」
今まで一度として聞いたことない、興奮した声音でスラ子は了承した。
それをクラスで叫んだものだから、クラス中の注目を集めることとなる。
そのことに気付いたスラ子は、真っ赤になりながら縮こまった。
なお、スライム殴りの依頼は普通に受けてもらえた。
その後は、過去一でかい声を放ったスラ子を可愛がる女子になぜか俺がお礼を言われたり。
やはり途中で怖くなってしまったのか、当日あった際、スラ子が段ボールに隠れていたりした。
正直、段ボールに隠れている方が目立つと思うのだが。
で、スラ子がアーシア殿とエンカウントすると。
「え、ええ……ええ!? あ、アーシア・コールマンさん!?」
「その通り、アーシア・コールマンさんだよ。よろしくね、スラ子ちゃん」
「あ、あうあうあうあう」
スラ子がすごく驚いた。
どういうことだ?
「く、草埜くん知らないの!? アーシア・コールマンさんっていえば、あのS級探索者のアーシアさんだよ!?」
「いや、アーシア殿がS級なのは知っているが、どんな活躍をしたのかまでは……」
「え、ええー!?」
どうやら、アーシア殿は凄い人だったらしい。
いや、凄い人なのはその肩書や雰囲気からもわかるのだが。
俺には直接関係ないだろうと思っていたのだ。
こんなことなら、アーシア殿について調べておけばよかったか?
「いやぁ、シオリにはもうとっくに慣れられちゃったし、コウジくんは全く動じないから……こういう反応は新鮮だなぁ」
「それは……申し訳ないことをした……のか?」
「さ、さぁ……」
うんうん、となぜか満足そうに頷くアーシア殿。
そのまま、スラ子に質問を始めた。
「それじゃあスラ子ちゃん、君の使えるスキルを説明してもらっていい?」
「あ、はい。私はスライム特効スキルしかもってないんですけど」
「……しかもってない」
「スライム特効スキル事態は、三つもってます!」
「三つも!?」
あ、何やらアーシア殿の雰囲気が崩れ始めた。
基本的に余裕たっぷりな態度のアーシア殿だが、想定外には弱いようだ。
「はい! スライムキラーとスライム崩しとスライムぼこぼこです!」
「……ど、どれも私の聞いたことないスキルなんだけど」
「そんなこともあるのだなあ」
S級探索者であるアーシア殿ですらしらないとは。
なかなかないことなのではないか?
「今回の場合は、スライムキラーのスキルが使えると思います」
「どんなスキルなのだ?」
「はい、このスキルにはどんなスライムにもダメージを与えられるようになるスキルです」
ふむ、それは確かにぴったりなスキルだ。
俺の全力でも、アーシア殿の全力でも傷つかないスライム。
だが、スキルで傷をつけられるスラ子なら話は別だ。
早速、試してみるとしよう。
「――ところで、どうしてスラ子ちゃんはそんなにスライムに対して執着を?」
「あ、はい。色々理由はあるんですけど……」
道中、アーシア殿がスラ子がスライムに執着する動機を聞いていた。
俺も気になるので、その話題に耳を傾ける。
なんでも、スラ子はスライムを倒し始めるまでは第一階層で小銭稼ぎをするだけの探索者だったらしい。
以前聞いたが、第一階層の探索者は戦闘する勇気はないもののダンジョンに関わりたいと考えている人たちだったか。
スラ子もその例に漏れず、モンスターと戦う勇気はなかったがダンジョン探索者を諦めきれず第一階層を潜っていたらしい。
そんなある日、眼の前でスライムを一撃で粉砕する探索者を見たのだとか。
それを見た時、「これなら自分でもできるのではないか」という感情と、「自分もこうなりたい」という感情を覚える。
結果、今はスライムを叩き続けることで少しでもその探索者に近づきたいとのこと。
途中、チラチラと俺を見ていたが、アレはどういう理由だったのだろう。
アーシア殿の妖しい笑みが不気味だ。
さて、そうこうしているうちに、例の場所へたどり着く。
巨大なスライムに覆われた部屋。
その前でスラ子は。
「――スライムだぁ!」
見たこともないような、恍惚とした表情をしていた。
俺が初めて友人になった学友であり、時折一緒にダンジョンへやってくる相手でもある。
なぜか彼女は、自分をスラ子と呼んでもらいたいほどスライムに執着している。
休みの日は日がな一日スライムを倒しているのだとか。
そんな彼女が、以前こういったことを俺は覚えている。
スライムに対する特効スキルを手に入れた、と。
そのことを俺が話すと、二人はなんだか俺をドン引きしながら見ているときと同じ目をしていた。
二人の中で、スラ子は俺と同カテゴリなのか?
確かに少し変わっているというか、変わっていると言うと喜ぶタイプだが。
「じゃあ……今度の休みにその子をここまで招待しようか」
「ごめん、その日は用事があるから私は無理」
「……君とそのスラ子って子を二人きりにすると危ない気がするな、私が同行しようか」
ともかく、そういう話になった。
問題は、スラ子がこの話を受けてくれるかどうかだ。
スラ子は引っ込み思案な性格だから、怖がって遠慮してしまうかもしれない。
そう思いながら声を掛けると――
「すごくでっかいスライムをひたすら殴らないか? ――行くッッッッッッ!!!!!!」
今まで一度として聞いたことない、興奮した声音でスラ子は了承した。
それをクラスで叫んだものだから、クラス中の注目を集めることとなる。
そのことに気付いたスラ子は、真っ赤になりながら縮こまった。
なお、スライム殴りの依頼は普通に受けてもらえた。
その後は、過去一でかい声を放ったスラ子を可愛がる女子になぜか俺がお礼を言われたり。
やはり途中で怖くなってしまったのか、当日あった際、スラ子が段ボールに隠れていたりした。
正直、段ボールに隠れている方が目立つと思うのだが。
で、スラ子がアーシア殿とエンカウントすると。
「え、ええ……ええ!? あ、アーシア・コールマンさん!?」
「その通り、アーシア・コールマンさんだよ。よろしくね、スラ子ちゃん」
「あ、あうあうあうあう」
スラ子がすごく驚いた。
どういうことだ?
「く、草埜くん知らないの!? アーシア・コールマンさんっていえば、あのS級探索者のアーシアさんだよ!?」
「いや、アーシア殿がS級なのは知っているが、どんな活躍をしたのかまでは……」
「え、ええー!?」
どうやら、アーシア殿は凄い人だったらしい。
いや、凄い人なのはその肩書や雰囲気からもわかるのだが。
俺には直接関係ないだろうと思っていたのだ。
こんなことなら、アーシア殿について調べておけばよかったか?
「いやぁ、シオリにはもうとっくに慣れられちゃったし、コウジくんは全く動じないから……こういう反応は新鮮だなぁ」
「それは……申し訳ないことをした……のか?」
「さ、さぁ……」
うんうん、となぜか満足そうに頷くアーシア殿。
そのまま、スラ子に質問を始めた。
「それじゃあスラ子ちゃん、君の使えるスキルを説明してもらっていい?」
「あ、はい。私はスライム特効スキルしかもってないんですけど」
「……しかもってない」
「スライム特効スキル事態は、三つもってます!」
「三つも!?」
あ、何やらアーシア殿の雰囲気が崩れ始めた。
基本的に余裕たっぷりな態度のアーシア殿だが、想定外には弱いようだ。
「はい! スライムキラーとスライム崩しとスライムぼこぼこです!」
「……ど、どれも私の聞いたことないスキルなんだけど」
「そんなこともあるのだなあ」
S級探索者であるアーシア殿ですらしらないとは。
なかなかないことなのではないか?
「今回の場合は、スライムキラーのスキルが使えると思います」
「どんなスキルなのだ?」
「はい、このスキルにはどんなスライムにもダメージを与えられるようになるスキルです」
ふむ、それは確かにぴったりなスキルだ。
俺の全力でも、アーシア殿の全力でも傷つかないスライム。
だが、スキルで傷をつけられるスラ子なら話は別だ。
早速、試してみるとしよう。
「――ところで、どうしてスラ子ちゃんはそんなにスライムに対して執着を?」
「あ、はい。色々理由はあるんですけど……」
道中、アーシア殿がスラ子がスライムに執着する動機を聞いていた。
俺も気になるので、その話題に耳を傾ける。
なんでも、スラ子はスライムを倒し始めるまでは第一階層で小銭稼ぎをするだけの探索者だったらしい。
以前聞いたが、第一階層の探索者は戦闘する勇気はないもののダンジョンに関わりたいと考えている人たちだったか。
スラ子もその例に漏れず、モンスターと戦う勇気はなかったがダンジョン探索者を諦めきれず第一階層を潜っていたらしい。
そんなある日、眼の前でスライムを一撃で粉砕する探索者を見たのだとか。
それを見た時、「これなら自分でもできるのではないか」という感情と、「自分もこうなりたい」という感情を覚える。
結果、今はスライムを叩き続けることで少しでもその探索者に近づきたいとのこと。
途中、チラチラと俺を見ていたが、アレはどういう理由だったのだろう。
アーシア殿の妖しい笑みが不気味だ。
さて、そうこうしているうちに、例の場所へたどり着く。
巨大なスライムに覆われた部屋。
その前でスラ子は。
「――スライムだぁ!」
見たこともないような、恍惚とした表情をしていた。
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