魔剣士「お姫様の家出に付き合うことになった」【現在完結】

Naminagare-波流-

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続章【夢の後先】

続章エピローグ「新たなる旅立ち」

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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
―――1週間後。
それから、オルデンは氷山帝国の錬金術権威であるセージに連絡を取って彼が旅立ちを決意したことを伝えると、準備はスムーズに進み、その間に無理やり時間を取ったシュヴァンとフランメ親子はこっそりと街に出かけたりして幸せな時間を楽しんだりもした。

シュヴァン「これ似合うと思うんだけどなー…。絶対に着てったほうがいいと思う!」
フランメ「い、良いよ別に…。着るものは何でもいいって!」

服屋で文句を言い合う姿は、まんま"親子"だなとシミジミと感じる。
だが、そんな時間も準備を終えて氷山帝国に向かう頃になれば寂しさに心を痛ませ、別れの時には恥ずかしながらもフランメは、シュヴァンの願いを受け入れ、オルデンの前でギュっと抱き締めあったのだった。

シュヴァン「元気でね、フランメ……」
フランメ「分かった、分かったってば!!」

これ以上なく強く抱き締められたフランメは、彼女との別れを"寂しい"と感じ始めつつも、挨拶を交わすとその旅路を歩き始める。オルデンは氷山帝国まで向かうことはせず、港町まで送ろうと共に隣を歩いていた。

オルデン「こうしていると、思い出すな」
フランメ「何が?」
オルデン「港町まで、海を見に行きたいと言って歩いたこともあってな……」
フランメ「ああ、それで親父が狼を殺そうとして爺ちゃんに怒られたとか!」
オルデン「……聞いたのか」
フランメ「母ちゃんに色々とねー。星空を見て、感動したとか色々さ……」

腕を組みながら、「親父も色々あったんだな」と歯を見せて笑った。

オルデン「母親との時間はどうだった。シュヴァンは、見た目以上に活動的だっただろう?」
フランメ「あー…うん。それはメチャクチャ思った……」

見た目は、美しい黒髪と透き通る肌を持つおとしやかな女性であるが、その姿とは裏腹に彼女はこの上なく活動的だった。

フランメ「最初は緊張気味だったけど、母ちゃんも頑張ってくれるし、俺もだんだん楽しくなってさ」
オルデン「ハハハ、そうだろう!」
フランメ「あんな人が世界を治めてるなんてね。だけど、仕事の現場じゃ凄くカッケーと思えるところも多くあったよ」
オルデン「そうだな…。今じゃ立派な女王様だからな。お前もその血を継いでいるんだ」
フランメ「ああ、分かってるよ!」

笑顔を見せて、元気よく返事をしながら、フランメは新世界での"夢"を語った。

フランメ「俺、新世界で親父に会うんだ。そして、言ってやるよ。俺はアンタの息子だってな!」
オルデン「ククク、目を回すぞアイツは…。頭の一発、ひっぱたいてやれ」
フランメ「お、怒らないかな?」
オルデン「何でそこは弱気なんだ!」

ゴンッ!と後頭部を叩かれると、フランメは「いってぇ!!」と涙目になるが、この痛みも味わえなくなると思うと悲しくもなる。

フランメ「……このくらいの痛み、親父にも味わってもらうからな…」
オルデン「俺からの一発だといっておけ。さぁて、船ももうすぐ見えるぞ!」
フランメ「海が見えてくるんだよな、この丘の先に」
オルデン「ああ、丘を登れば海が見える。海が、見えるんだ……」

今も目を瞑れば、思い出す。あの時の、二人の顔を――。

………
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
向こう側へ上り坂になっており、頂点である坂の先から向こう側を確認することが出来ない。
しかし、ここが…そう……。

猛竜騎士「あそこの頂点。あそこで折り返しなんだが、そこで…海が見える」
魔剣士「ッ!」
白姫「…!」

――海の見える丘である―――

猛竜騎士「だが、ここからが大事で。あまりはしゃぎ過ぎては」
魔剣士「い、行くか白姫!」
白姫「うん、行くっ!」
魔剣士「ほら、手ぇ貸せ!一緒に行くぞ!!」
白姫「うんっ!」

二人は、走り出した。猛竜騎士の制止も聞かず、二人は走り、丘を上った。
そして、そこに現れたもの。それは……。

白姫「…これが、海」
魔剣士「海なのか、これが…」

どこまでも続く青い空の下、目の前に現れたのはそれをも凌駕する巨大な「蒼」だった。
磯の匂いがなんとも心地よく、遠くを飛ぶカモメの群れが何とも優雅に思える。
そして、二人は壮大過ぎた海を見て…考えるということを拒否したのだろう。
一瞬ではあったが、無言の間が流れ、さざ波の音、カモメの鳴き声だけが辺りへ響いていた。

白姫「……嘘みたい」
魔剣士「こんな…、何もかも光って…なんて……」
白姫「きれいなんだろう……」

立ち尽くす二人の後ろで、猛竜騎士は静かに(そういう反応だよねぇ)と小さく笑う。

魔剣士「…オッサンッ!」
猛竜騎士「お…」
魔剣士「こ、これが海なのか、これが海なのかっ!?」
猛竜騎士「なぜ2回」
魔剣士「き、聞いたことはあったけどここまでデケェもんだとは!!」
猛竜騎士「な、絶句しただろ。その美しさと、壮大さにな」
魔剣士「……悔しいが、本当だったよ。すげぇよ…海ってやつは」
猛竜騎士「ふっ……」

感動する魔剣士と、鼻で笑う猛竜騎士。その後ろで、白姫は涙を浮かべていて。

白姫「……グスッ」
魔剣士「し、白姫が泣いてるー!?」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
……

オルデン「ククッ……!ハハハハッ!!」

その後で、今でこそ考えれば魔剣士が"女の涙に弱い"というのがそこで露呈されていた。そっぽを向きながらも布きれを渡したり、本当に楽しい旅だった。

フランメ「ど、どうして笑うんだよ!?」
オルデン「思い出し笑いだ。この道を、あいつらの息子と歩くことになるとはなぁ」
フランメ「……親父たちが歩んだ道だったっけな」
オルデン「そうさ。俺にとっては感涙かつ爆笑ものだがな」

時代は変わるとは言うが、変わらないものだってあるじゃないか。
……なぁ、魔剣士。お前は今、どこでどんな冒険をしているんだ?
もうじきお前の息子が、お前の元へと向かうんだ。
驚け。笑え。泣け。お前の反応が見られないことはこの世の心残りになるが、俺はお前を継いで世界と白姫を守っていく。

オルデン「さぁ、氷山帝国に急ぐぞ」
フランメ「分かってるってば!」

フランメは「やってやるさ」と言って両拳を握り締め、天へと伸ばした。
今日も、気持ちが良い青空が広がっている。
冒険を始めるには、最高の日だ。

…………
……



【 E N D 】

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