【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

文字の大きさ
8 / 49

八 イベント?

しおりを挟む
 出し物も決まって園遊会に向けて学園は盛り上がっていた。私は連日、台本片手に朗読の練習をしているのだけど当日は台本を持っても構わないのでかなり気が楽。なんて思っていたら、ジョーゼットは数日で覚えてきた。

 恐ろしい子……。



 その日も放課後に二人で空き教室で朗読の練習をしていた。窓から差し込む柔らかい日差しが彼女をますます美しく見せている。練習していると他の方々からお菓子などの差し入れがあり、そのままティータイムに変わることもよくあるのだけど。今のところは二人だけ。遠くから女生徒のきゃっきゃうふふの声が時折聞こえてくる。

「……ジョーゼットは完璧ね。私なんか覚える気がないからか全然だわ」

 私の溜息交じりの言葉にジョーゼットはふっと笑みを漏らせた。

「完璧、ね……。アーシアにまで言われると……」

 ……あ、そういや私って入学試験トップだったのね。

「アーシア、私ね。小さい頃から王太子様の隣に相応しくって言われてきたじゃない? だからね。こうして気兼ねなく親しくできる方は初めてなのよ」

「あ……」

 そうか、彼女は私と違って、宮廷の権力争いの中で幼少期から過ごしてきたんだものね。その頃、私は自領で使用人相手にムチを振り回していたんだわ。笑い事じゃないけどね。背が小さいから、ほとんど当たらないというかね。

「――常に私は完璧でいないとって考えていて。でも、ここには初めて私以上の方がいらしたの」

 ジョーゼットがくるりと回って踊るように私に近寄って手を握り締めてきた。彼女の煌めくアクアブルーの瞳が間近に迫っていて、これはまるで何かのイベントの様に感じた。私の心臓までバクバクしていた。

「アーシア、お友達でいてね」

「え、ええ」

 間抜けた声になったのは仕方ない。ジョーゼットが美しすぎるからいけない。つい見惚れちゃったじゃない。



 練習を終えて、夜に自室の机に座ってステータスのチェックをしてみる。今日は語学があったので知力が五程度上がる筈だけど、どうやらダンスの授業のせいで運動が上がったから知力が下がる。だから、相殺された数字になっていた。どちらも上がっても一とか二くらい。レベルだって上がらないし、他の人にも聞いた方が良いかもしれない。でも、今日は今までに慣れないものが好感度の横に現れていた。



 [好感度]
 
 ジョーゼット・ローレン……UP↑



 そもそも好感度とは何なの? ステータスというかパラメーターが見えるのって、他の人はどうなっているのだろう? それに攻略対象のユリアンの好感度があるのは分かるけど、どうして友人のジョーゼットや兄のルークまであるの? でも、誰に聞いたら良いのか分からない。ヘタすれば頭がおかしいとか言われるに決まっている。






 そんな中、園遊会の準備は着々と進んで、いよいよ園遊会当日になった。朝から良い天気で、招待された方々の馬車が次々と到着していた。

 それぞれ受付や案内役に振り分けられたので手伝っている。園遊会と言いつつそれぞれくつろげるようテーブルと席は用意してあるので名簿を見て席まで案内する。私は自分のテーブル周辺を確かめていると入口付近で歓声が上がった。騒ぎの方にジョーゼットが頬を上気させて向かっていた。

 ――どうやら王太子様の御一行がいらしたみたいね。

 私はそれを眺めつつ自分の両親を探してみるけど見つからなかった。まだ来ていないみたい。

 その時、何故か私の背中にぞくりと悪寒のようなものが走った気がした。周囲を見遣るが特に気になる人や視線には気が付かなかった。



「――アーシアもこちらにいらっしゃいな」

 ジョーゼットに手招きされた先には――。そこには超絶美形な王子様がいた。

 わが国のアラン王太子様は『ゆるハー』のキャラとは別物の輝きを放っていた。ジョーゼットと並ぶととてもお似合いに見えた。彼は金髪、濃い青色の瞳の優しい感じの王子様。流石、王道の隠れキャラ。正しく 王子おうじの中の王子 王子チャーミング

 そして、その王子の中の王子の隣にいて全く遜色ない美貌の青年が一緒にいたのだった。彼は艶やかに光る見事な黒髪に妖艶さと危険な感じが宿るアメジストの瞳の男性で――――――。

「……ルークお兄様」

 私は呆然とその名を呼んでいた。お兄様は私を見ると春の日差しのように微笑んだのだ。それとは逆に私の体中が氷ついたように固まってしまった。

 ――怒っている。超絶お怒りモードだ。何故なら彼のことを幼いころから知っている私の〈お兄様センサー〉がそう言っている! ビンビン反応してるぅぅ。

 そんな私の様子に誰も気がついていなかった。だけど、それを打ち破るかのようにジョーゼットはふふっと薔薇の女神さまの微笑みを浮かべてくれた。

「まあ、アーシアったら、素敵なお兄様ね。私には弟だけだから羨ましいわ。可愛いけれど」

 はあ。まあお兄様は見た目だけは絶品、超絶イケメンですがぁ……。

 無論私の心の中に『だけ』のところを特にアクセントをつけておいた。

 ――でもね、性格はとても残念な腹黒なのです。

 私はそれに引きつった胡散臭い笑みを浮かべるだけで精一杯だった。お兄様はジョーゼットにその麗しいと称される眼差しを向けていた。

「ローレン公爵令嬢のようなご令嬢レディが私の妹なれば、私もさぞかし甘やかして差し上げたことでしょうね」

 大人な余裕をもった甘い雰囲気でとんでもないことをお兄様は仰っていた。ジョーゼットの方もぽっと可愛らしく頬を染めていた。

 ――良いのですか?! お兄様ぁぁ!? 彼女は将来の主君の婚約者様ですよ? 口説いたらダメでしょうがっ!! ……べ、別に、私は焼きもちなんて……。や、焼いてないもん。

「おいおい、ルーク、婚約者の私の前でそんなことを言われると困るなぁ」

 どうやら王太子様が兄の発言を冗談として流してくれたようだった。

 ――一体、どうなさるおつもりですか? お兄様。でも王太子様は随分気さくそうで懐の広いお方のよう。それにお兄様とはどうやら旧知の仲の様だった。お兄様っ、聞いてません。王太子様とそんなに仲がよろしかったのですか? なんだか、右腕とか親友とかそんな立ち位置を思わせるような雰囲気ですがっ。

 私のそんな内心の焦りに構わず、ご挨拶を済ませるとお二人は終始なごやかに私とジョーゼットを囲んでお話を続けていた。一応ね。私も新年のご挨拶とかで王太子殿下とは顔合わせは済ませているの。これでも高位令嬢だからね。

 そんなやり取りをしているうちに招待客が揃ったようで、開会式に向けて先生方が動き始めた。すると入り口の方で一段と大きなざわめきが起こっていた。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします

恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。 王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい? つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!? そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。 報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。 王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。 2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……) ∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽ ※小説家になろう様にも掲載させていただいています。 ※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。 ※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。 ※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。 ※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。 ※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。 ※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。 ※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。 ※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について

夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。 ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。 しかし、断罪劇は予想外の展開へ。

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

婚約破棄だ!と言われ実家に帰ったら、最推しに餌付けされます

黒猫かの
恋愛
王国の第一王子クレイスから、衆人環視の中 で婚約破棄を言い渡されたローゼン侯爵令嬢ノエル。

処理中です...