【完】チェンジリングなヒロインゲーム ~よくある悪役令嬢に転生したお話~

えとう蜜夏

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二十九 ユリアン様からの手紙 

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 部屋に戻るとなんとユリアン様からお手紙が届いていたのよ。ユリアン様からのお手紙は初めてだわ。

『親愛なるアーシア、学園生活は慣れたころかな。この間会って、君が近くにいることを知って驚いたよ。会いたいけれどその学園での面会は難しいみたいだね。それとこの夏休みは会えるかな。是非うちの別荘に招待したいよ。星空の綺麗な別荘があるんだ。ああ、大事なことを言い忘れたね。今度デビューするなら是非エスコートをしたいと思っているんだ。それではまたいい返事を待っているよ』

 そんなことが書かれていたの。私は何度も食い入るように見たわ。そして、それが本物なのが実感できると私は返事をしようとペンを持とうとしたら、侍女が夕食の時間だと言ってきたので私は机の引出しにしまうと食堂に向かった。

 ――こうなったら、ジョーゼットとユリアン様の別荘にいかないとね。今年の夏はちょっと違うわよ。ぼっちじゃないの。不毛なバカの巣じゃないの。

 でも、その前に私がデビューする大舞台グランバルが控えていた。そう、王宮大舞踏会で社交界デビューしちゃうのよ。あわわ。どうしよう。ジョーゼットのところに逃げたいけれど彼女だって舞踏会に出席するからいないのよね。


 食堂に着くといつものように私はジョーゼットの隣。今夜のお夕食はチキンのソテー。香ばしい匂いが満ちていた。パリパリにローストされたチキンよ。付け合わせは季節の温野菜。アーティチョークはちょっと苦手よ。それにコーンポタージュ。ここの料理長を引き抜きたいわ。

 おかわりをしたかったけれどジョーゼットと夏休みの話題で楽しい過ぎて気が付けば時間をオーバーしてしまったの。やっぱり、女同士だものお化粧とかファッションのことには話が弾むわよね。

 私は夏休みの壮大な計画を考えすぎて、早々にベッドに入った。



 だけど翌日、ユリアン様の手紙にお返事を書こうと机の引き出しをみたけれど無かったのよ……。それは私が願望が幻を見せたのかしら……。ちらりと侍女を見遣ると忙しそうに朝の準備をしてくれている。仕方がないので部屋の手洗いで顔を洗うと控えている侍女にそれとなく聞いてみた。

「あの、ここに入れてあったユリアン様の手紙は……」

 あくまでも無表情の侍女。再度私は訊ねてみる。

「ユリアン様のお手紙あったわよね?」

「アーシア様へのお手紙及び贈り物は全てルーク様のお調べがお済みになってからと指示されております」

 ――何ですって? やっぱり、ユリアン様の言っていた通りだったのね。

「ちょっとそれは何でも……」

 ――とはいえ、侍女では次期当主のお兄様の指示は逆らえないわね。私でさえそうだもの。

「もしかして、私が出すのも検閲があるのかしら?」

 今回は寮付きのメイドから渡してきたので私が知ることになったけれど、今までのは……。もしや、お茶会で知り合ったご令嬢とかからお誘いがあったかもしれないじゃないの! これはお兄様とは言えども許せませんわ。今度帰ったら断然抗議しないと。それにこの夏のぼっち脱出計画もお話しないといけないわ。

 無言で控えている侍女にもういいわよとため息交じりに私が口にすると侍女は無表情なその瞳を少し見開いた。段々私もマシーンのような侍女の考えが分かるようになってきたかも。本当に表情とか動きに差異は無いのよ。よく見ているとね分かるようになってきたわ。昔の私だと使用人などに興味は無かったからね。





 
「もう、アーシアったら。眉間に皺があってよ。何か難しいことかしら?」

 ふふとジョーゼットの可愛い指摘に私は頬を緩めた。今日はもう午前中で授業は終わり、談話室でジョーゼットの侍女がチコリのお茶を入れてくれて一緒に嗜んでいた。ご令嬢達もそれぞれもう帰る準備をしていて、ここには私達二人しかいなかった。

「ああ、ええと。この夏の計画をいろいろと……」


「そうよね。アーシアはデビューするのだものいろいろと心配なことがあるわよね。私で良かったら、それにそのあとお話しできるから楽しみよ。私はお友達が少ないから……」

 ジョーゼットが寂しそうな微笑を浮かべた。

 ――お友達が少ない? 超絶美少女で、王太子の婚約者なのに? 私の過去のムチ打ち悪役令嬢とは違うじゃないの! ああ、そうか、これって社交辞令よね。真に受けてはいけないわ。日本での経験値が私にそう言っている。

「ええ、そうなのよ。私なんかがデビューなどおこがましくて……。でも、ジョーゼットなら沢山お友達がいるじゃないの?」

 ――そりゃそうよ。私は本当は庶民なの。後二年ちょっとで今の家族からはゴミのように扱われて追い出されるの。そのときは見事に富豪な庶民になってみせるわ。カウントダウンしなくちゃね。ということは誰にも言えないのでそっと胸の内で呟いた。あ、いや、一人だけいるわ。ガブちゃんよ。ガブちゃんなら私達の取り換えは分かっている。ああもう、ガブちゃんに会いたいわね。本当に隣なのに中々会えないわ。ユリアン様といい。

 そして、私はあることを思いついた。思わずテーブルをダンと叩いて立ち上がるほどに。ジョーゼットをびっくりさせてしまったけれど良いアイディアだったのよ。

 これを実行してみれば、私は社交界デビューをしなくて済むわ。それにガブちゃんにとっても良いことだしね。だけどそうなるとユリアン様とはもう話せないかもしれない。  
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