49 / 49
第二章
四十九 それは未来へと続く道
しおりを挟む
ざわざわと周囲が騒ぐ。
「私は――」
――嫌ぁぁ。待って王太子様、今何て仰いました?
ジョーゼットが青ざめて涙ぐんでいるのが分かる。私は駆け寄って自分の無罪を訴えたかった。
「お待ちください! 殿下」
ざわめきの中でユリアン様の声が響いた。そして、ユリアン様はジョーゼットの肩を抱いて支えるように二人でアベル王太子様に向かって歩き出した。まるで伝説の海が割れたように人波が分かれていく。
「そなたは、ライル伯爵家のユリアン……」
王太子の発言を遮るなど高位貴族でも不敬罪にとられる。私は思わずぎゅううと手を握り締めていた。いざとなったら二人を逃がすの? こういうときでも携帯しているムチの存在を私は思い返した。そう、日本のアニメの某お色気キャラのように太ももにムチを装備しているのよ。
「恐れながら、王太子殿下にあらせられましては今までジョーゼット嬢との仲睦まじいご様子であり、我々はそれを拝見しておりました。今回、何ら非の無い彼女との婚約を破棄するとはどのようなことでありましょうか?」
ユリアン様の言葉に周囲のざわめきが静まり、皆固唾を飲んで見守っていた。
「それは……。そこにいるアーシア嬢との」
「それはジョーゼット嬢への愛情も薄れたということなのでしょうか?」
「そんなことは無いぞ。私はジョーゼットを幼いころから大切に想っておる!」
「では、解消する意味は無いではありませんか」
「いや、救国の少女がでたとなれば、王家としても」
「はて、そのようなことは初耳でございます。あの祭典にいたのはモードレット家の嫡男で彼がした演出であります。そうでしょう? あの場でいらした方も見ていた筈です」
そう言って言葉を切ると周囲は静まり返ってしまった。あの時は私はルークお兄様の身代わりになっていた。親しい人にはバレバレだけど結構似ていたと思う。それにローレン公爵様が控えめに肯いていた。事の主役だから大きな声で肯定すると返って嘘らしくなると考えているのだろう。
「救国のなどど騒いでいるのは一時のことでしょう。どうか今一度ご一考を」
「……私は初めてお会いした日から殿下を……」
ユリアンの横で涙目で訴えるジョーゼットはとても可憐で美しかった。見ている私まで思わず涙ぐみそうだった。そして、ユリアンは私を見つめてから尚も王太子殿下に訴えた。
「そして、私もアーシアとは幼い頃に誓いを交わした仲でございます。どうか殿下にありましては仲を引き裂くようなことをなさらいで下さい」
そう言ってユリアン様は跪いた。王太子様も黙ってユリアン様を見下ろしていた。何処からか拍手が起きてそれが会場に広まっていった。
王太子様はユリアン様を立たせると微笑んだ。
「そうであったな。愛は何よりも尊いものだったな。ジョーゼット。今一度私と共に歩んでくれるか?」
「……はい。殿下。私で宜しければ」
そう言うとお二人は抱き締めあったのよ。見ていて感極まったように歓声が上がったわ。割れんばかりの歓声と拍手で秋の大舞踏会は無事終わったのよ。
――私のムチの出番は無かったわ。それに、私もユリアン様の宣言で無事婚約発表までできたのよ。これも怪我の功名? ルークお兄様は今回の騒ぎでユリアン様とのことを渋々ながらお認めになったようで良かったわ。
この舞踏会のことは愛の大舞踏会と今後も語り伝えられたのだった。そして、それから舞踏会で告白するのが流行したのよ。
無事私もユリアン様と婚約を発表できて、めでたし、めでたしといきたいのだけど新学期が始まったから、それぞれの学園に戻っていった。
ジョーゼットとも再会して、彼女は婚約を発表してから更に美しさを増したようで、いきいきとしていた。近々ご婚儀のことなどの準備で学園もお辞めになるようだった。私はそれに少しジョーゼットに文句を言っていた。
「残念だわ。折角ジョーゼットと仲良くなれたのにいなくなるなんて」
「ふふ。でもこれからは社交行事で会えるじゃない? それにお家にいつでもいらして頂戴。それに……。アーシアなら私が王宮に入ってからも支えてくれると思ってるの」
――そうか、婚約したとはいえまだまだいろいろな妨害がでてくるわよね。今回もそうだったし、何があるやら分からないわよね。私はユリアン様一筋だったから、ジョーゼットのライバルに成らなかったけれど、これからだってどんなご令嬢が現れるか分からないものね。
「仕方が無いわね。でも、男装はしないわよ。もうこりごり。劇の題材になんてもうなりたくない」
私がそう言うとジョーゼットは花が綻ぶように微笑んだ。背景に薔薇の花が咲き誇っているように見える。勿論私のフィルターだけだけどね。
でも、貴族の秋の恒例の社交行事の狩猟大会ではドレスでなく、狩猟着を着たのよ。それも男性の……。ムチで獣を追い立てろって? 冗談じゃないわよ。……それでも狩りはしたけどね。
これは乙女ゲームに良く似た世界に転生した女性が悪役令嬢になり損ねたよくある令嬢のお話。
今までどうもありがとうございました。
「私は――」
――嫌ぁぁ。待って王太子様、今何て仰いました?
ジョーゼットが青ざめて涙ぐんでいるのが分かる。私は駆け寄って自分の無罪を訴えたかった。
「お待ちください! 殿下」
ざわめきの中でユリアン様の声が響いた。そして、ユリアン様はジョーゼットの肩を抱いて支えるように二人でアベル王太子様に向かって歩き出した。まるで伝説の海が割れたように人波が分かれていく。
「そなたは、ライル伯爵家のユリアン……」
王太子の発言を遮るなど高位貴族でも不敬罪にとられる。私は思わずぎゅううと手を握り締めていた。いざとなったら二人を逃がすの? こういうときでも携帯しているムチの存在を私は思い返した。そう、日本のアニメの某お色気キャラのように太ももにムチを装備しているのよ。
「恐れながら、王太子殿下にあらせられましては今までジョーゼット嬢との仲睦まじいご様子であり、我々はそれを拝見しておりました。今回、何ら非の無い彼女との婚約を破棄するとはどのようなことでありましょうか?」
ユリアン様の言葉に周囲のざわめきが静まり、皆固唾を飲んで見守っていた。
「それは……。そこにいるアーシア嬢との」
「それはジョーゼット嬢への愛情も薄れたということなのでしょうか?」
「そんなことは無いぞ。私はジョーゼットを幼いころから大切に想っておる!」
「では、解消する意味は無いではありませんか」
「いや、救国の少女がでたとなれば、王家としても」
「はて、そのようなことは初耳でございます。あの祭典にいたのはモードレット家の嫡男で彼がした演出であります。そうでしょう? あの場でいらした方も見ていた筈です」
そう言って言葉を切ると周囲は静まり返ってしまった。あの時は私はルークお兄様の身代わりになっていた。親しい人にはバレバレだけど結構似ていたと思う。それにローレン公爵様が控えめに肯いていた。事の主役だから大きな声で肯定すると返って嘘らしくなると考えているのだろう。
「救国のなどど騒いでいるのは一時のことでしょう。どうか今一度ご一考を」
「……私は初めてお会いした日から殿下を……」
ユリアンの横で涙目で訴えるジョーゼットはとても可憐で美しかった。見ている私まで思わず涙ぐみそうだった。そして、ユリアンは私を見つめてから尚も王太子殿下に訴えた。
「そして、私もアーシアとは幼い頃に誓いを交わした仲でございます。どうか殿下にありましては仲を引き裂くようなことをなさらいで下さい」
そう言ってユリアン様は跪いた。王太子様も黙ってユリアン様を見下ろしていた。何処からか拍手が起きてそれが会場に広まっていった。
王太子様はユリアン様を立たせると微笑んだ。
「そうであったな。愛は何よりも尊いものだったな。ジョーゼット。今一度私と共に歩んでくれるか?」
「……はい。殿下。私で宜しければ」
そう言うとお二人は抱き締めあったのよ。見ていて感極まったように歓声が上がったわ。割れんばかりの歓声と拍手で秋の大舞踏会は無事終わったのよ。
――私のムチの出番は無かったわ。それに、私もユリアン様の宣言で無事婚約発表までできたのよ。これも怪我の功名? ルークお兄様は今回の騒ぎでユリアン様とのことを渋々ながらお認めになったようで良かったわ。
この舞踏会のことは愛の大舞踏会と今後も語り伝えられたのだった。そして、それから舞踏会で告白するのが流行したのよ。
無事私もユリアン様と婚約を発表できて、めでたし、めでたしといきたいのだけど新学期が始まったから、それぞれの学園に戻っていった。
ジョーゼットとも再会して、彼女は婚約を発表してから更に美しさを増したようで、いきいきとしていた。近々ご婚儀のことなどの準備で学園もお辞めになるようだった。私はそれに少しジョーゼットに文句を言っていた。
「残念だわ。折角ジョーゼットと仲良くなれたのにいなくなるなんて」
「ふふ。でもこれからは社交行事で会えるじゃない? それにお家にいつでもいらして頂戴。それに……。アーシアなら私が王宮に入ってからも支えてくれると思ってるの」
――そうか、婚約したとはいえまだまだいろいろな妨害がでてくるわよね。今回もそうだったし、何があるやら分からないわよね。私はユリアン様一筋だったから、ジョーゼットのライバルに成らなかったけれど、これからだってどんなご令嬢が現れるか分からないものね。
「仕方が無いわね。でも、男装はしないわよ。もうこりごり。劇の題材になんてもうなりたくない」
私がそう言うとジョーゼットは花が綻ぶように微笑んだ。背景に薔薇の花が咲き誇っているように見える。勿論私のフィルターだけだけどね。
でも、貴族の秋の恒例の社交行事の狩猟大会ではドレスでなく、狩猟着を着たのよ。それも男性の……。ムチで獣を追い立てろって? 冗談じゃないわよ。……それでも狩りはしたけどね。
これは乙女ゲームに良く似た世界に転生した女性が悪役令嬢になり損ねたよくある令嬢のお話。
今までどうもありがとうございました。
21
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(28件)
あなたにおすすめの小説
【完結済】破棄とか面倒じゃないですか、ですので婚約拒否でお願いします
紫
恋愛
水不足に喘ぐ貧困侯爵家の次女エリルシアは、父親からの手紙で王都に向かう。
王子の婚約者選定に関して、白羽の矢が立ったのだが、どうやらその王子には恋人がいる…らしい?
つまりエリルシアが悪役令嬢ポジなのか!?
そんな役どころなんて御免被りたいが、王サマからの提案が魅力的過ぎて、王宮滞在を了承してしまう。
報酬に目が眩んだエリルシアだが、無事王宮を脱出出来るのか。
王子サマと恋人(もしかしてヒロイン?)の未来はどうなるのか。
2025年10月06日、初HOTランキング入りです! 本当にありがとうございます!!(2位だなんて……いやいや、ありえないと言うか…本気で夢でも見ているのではないでしょーか……)
∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽∽
※小説家になろう様にも掲載させていただいています。
※作者創作の世界観です。史実等とは合致しない部分、異なる部分が多数あります。
※この物語はフィクションです。実在の人物・団体等とは一切関係がありません。
※実際に用いられる事のない表現や造語が出てきますが、御容赦ください。
※リアル都合等により不定期、且つまったり進行となっております。
※上記同理由で、予告等なしに更新停滞する事もあります。
※まだまだ至らなかったり稚拙だったりしますが、生暖かくお許しいただければ幸いです。
※御都合主義がそこかしに顔出しします。設定が掌ドリルにならないように気を付けていますが、もし大ボケしてたらお許しください。
※誤字脱字等々、標準てんこ盛り搭載となっている作者です。気づけば適宜修正等していきます…御迷惑おかけしますが、お許しください。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた
夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。
そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。
婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
教養が足りない、ですって
たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。
前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。
前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。
外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。
もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。
そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは…
どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。
カクヨムでも同時連載してます。
よろしくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
ジョーゼットなら私が王宮に入ってからも支えてくれると……って、ジョーゼットさん二人いる?
これ、ジョーゼットの台詞じゃないのかな?
とりあえず、完結お疲れ様でした。
楽しませていただきました。
ご感想ありがとう
ございます
(о´∀`о)
おいでませ~
ああ!間違えてました!
ありがとうございます
早速直してきます(^-^ゞ
皆様の励ましで何とか終わりました。
楽しんで頂けると嬉しいです♪
この王太子…いや、何でもない。ジョーゼットさんが幸せなら。
いつもご感想
ありがとうございました
(*´ω`*)
本当に励みになりました。
お陰様で無事終わりを迎えることができました。
このお話は気がつけばへたれなヒーローばかりでしたので今度はカッコいいのを書きたいです←
またよろしければ他のもどうぞよろしくお願いします(о´∀`о)ノ
ガブちゃん絆されたのか、自分の今の立ち位置がとても美味しい事にも気付いてぢまったぼか(・ω・) おっかねもーちへいみーん
ご感想ありがとう
ございます(о´∀`о)
書き書きする励みになります~
いつもありがとうございます(*´ω`*)
おっかねもち~の
へーみんがいいなぁ
アーシアも無事平民の道を選べるのか?(笑)
どうぞよろしくお願いします(о´∀`о)ノ