DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

206話「【7】【7】【6】」

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「それでは、楽園への扉を開きましょう。」

 女神がそう言葉にすると、光り輝く門が目の前に現れた。
 今まで迷宮の中で見たものとは違い、神々しい感じの装飾が施されている。
 さすが女神が用意した門ってところか。

「この鍵を持ってその門を進んでください。」

 女神の元から首飾りの形をした迷宮の鍵がふわふわと飛んできた。
 それをそっと掴んで手の中に収める。

「さぁ、楽しんできてくださいね。」

 皆で頷き合い、意を決して門をくぐった。

「わぁ・・・・・・すごい。」

 まず目に飛び込んできたのは、キラキラとしたシャンデリアの煌めき。
 その煌めきが飾り立てるのは足音も立たない程フカフカした赤い絨毯の上に並ぶ、特徴的な形をしたテーブルたち。
 テーブルには緑色のマットが敷かれ、ルーレットやカードなどの遊戯道具が置かれている。
 それぞれの遊戯に適した形のテーブルになっているようだ。

 女神の言う”楽園”とは、どうやらこのカジノのことであるらしい。

 フロアには麗しい女性を模した人型の魔物、俗にいうモン娘と呼ばれる美少女たちがディーラーやホールスタッフとして優雅に働いている。
 ある意味楽園と言えるのかもしれない。

「・・・・・・これが、らくえん?」
「どういう場所なのかしら?」

「えーと、賭博場・・・・・・かな。」
「と、賭博場!?」

 リーフが顔をしかめる。
 そりゃ賭博場なんて良いイメージ無いか。

「まぁまぁ。せっかく来たんだし、少し見ていこうよ。私たちの貸し切りみたいだし。」

 リーフを宥めて、皆でゾロゾロとフロア内を見て回る。

 各種遊戯は迷宮のお金で買える専用のメダルを使って遊ぶことができるようだ。
 スロット、ポーカー、ブラックジャック、ルーレットといった定番のものから、ゲーセンで見かけるようなものまで様々な遊戯が用意されている。
 思いつくものは全部詰め込んだって感じだ。ギャンブル性の高いものばかりだが。

 中でも目玉なのはモンスター闘技場だろう。
 背丈も胸も大小様々な4人のモン娘たちが、リングの上でくんずほぐれつ闘うのだ。とても破廉恥である。
 勝者が決まればメダルの払い戻しと次の試合のベットが行われた後、また新たな4人が入場し、くんずほぐれつ闘い始める。とても破廉恥である。
 掛け金を上げると試合内容の破廉恥度も上がるらしい。
 もうちょっと眺めていたかったのだがリーフに引っ張り出されてしまった。

 景品交換所では迷宮の攻略に役立ちそうな武器防具や道具、食材なんかも交換対象になっている。
 すごく強そうな剣なんかもあるが、その枚数を稼ぐのは骨が折れそうだ。でもそれを手に入れたところで今更なんだよなぁ・・・・・・。
 流石にこの迷宮を周回する気力は湧いてこない。

 買い取り屋なる店もある。いらないアイテムを買い取ってくれる店だ。ぶっちゃけ質屋である。
 迷宮の攻略で余った物を売るためにあるのだろう。買い取り額は迷宮の道具屋と変わらないみたいだ。

 他には宿泊施設や食事処も併設されている。遊園地みたいな施設やプール、温泉まで。
 どの施設も専用メダルで使用可能になっており、勝ち続ければ一生遊んで暮らすことも可能だ。

 ・・・・・・あれ、なんか迷宮王の方が真っ当じゃね?
 真面目な迷宮王が享楽の女神を封印したとか・・・・・・まさかね。

「中々良さそうな場所だけど、一つ問題があるね。」
「え、そう? 楽しそうだよ? ボクあれ乗ってみたいな。」

「それは否定しないけど・・・・・・。」

 確かに楽しそうだし、煌びやかで女神さまの言うように楽園のような場所だ。
 ただ、カジノの施設は全て専用メダルしか使えない。
 迷宮のお金が使えるのはメダル販売所だけである。しかも販売レートは迷宮のお金がかなり低く設定されている。

 そして宿泊するだけでも結構な枚数が必要だ。
 値段に換算すれば迷宮の宿の百倍近い。その分豪華そうだが。
 食事も然り。

 つまりここに滞在するだけでもギャンブル漬けにならざるを得ないのである。

 迷宮では比較的楽だった食料の確保も、ここではままならないだろう。おまけステージという位置付けだからなのかもしれないが。
 遊園地などの施設で遊びたければさらに稼ぐ必要があり、必然的に掛け金の高いギャンブルに挑まなければならなくなる。
 楽園とも言えるが、楽園の皮を被った地獄とも言えそうだ。

「とりあえず、持ってるお金は全部専用硬貨に換えちゃおうと思うけど、いいかな? とにかく何とかして稼がないと一泊すら出来そうにないし。」

 リーフがお金を数えて溜め息を吐いた。
 何度数えても増えることはない。

「ハァ・・・・・・確かにそうね。ラビはそれで構わないかしら?」

 迷宮をクリアした後、迷宮内のアイテムは全てラビに譲るつもりだったため、最終判断をラビに任せる。
 彼女は少し考え、頷いた。

「・・・・・・うん。みんなで頑張ってきたんだし、出来るだけ楽しみたい。」
「じゃ、決まりだね。」

 早速有り金をすべてメダルに交換し、全員で分ける。
 この人数で分けると流石に心許ないな・・・・・・。
 さて、どうやって増やすか。

*****

「おかえり、ラビ!」

 迷宮から戻った俺たちを、街の人たちが盛大に出迎えてくれた。
 街路を進みながら、祝福の言葉をくれた人に笑顔で手を振って返す。
 だが、笑顔とは裏腹に心は沈んでいた。

 俺たちは敗けたのだ。

 最初のうちは勝ち越してちまちまメダルを稼げていたのだが、宿泊費すら貯まらなかったため、掛け金を上げていったのだ。
 そして掛け金を上げれば上げるほど勝率が下がっていく。
 どうやら掛け金と難易度は比例するらしかった。

 今考えてみたらビギナーズラックで大当たりが出たのも罠だったのかもしれない。
 掛け金が低かったから配当もショボかったし・・・・・・。
 しかしそれで気が大きくなって掛け金を上げてしまったのだ。

 ただ、掛け金を上げないと稼ぎが少なすぎて何も出来ないジレンマがあった。
 時間をかければ宿泊費と多少の食材を交換できるくらいは稼げそうだったが・・・・・・哀し過ぎるだろそんなの。

 とまぁそんなワケで、有り金を全部むしり取られた俺たちは心に大きな傷を負って早々に帰還してきたのである。
 くっ・・・・・・あそこでチョキを出していれば。
 カジノへは女神にもらった鍵があればいつでも行けるそうだが・・・・・・うん、もう行かない。

 街では盛大な宴会が開かれ、翌日にはなんか偉い人もやって来た。領主夫妻とその子息、息女らしい。
 以前も参加して俺たちと話してみたかったそうだが、学院の夏休み期間中は人が増え、その分仕事も増えて多忙になってしまうため街には出られなかったそう。

 領主さまは人の好さそうな恰幅のいいおじさんで、奥さんの方はスラっとした美人さん。
 子供たちは奥さんに似たイケメンと美少女である。

 後日に館へ来ないかと招待されたが、俺たちは「旅があるから」と丁重にお断りした。偉い人のところなんて出来れば行きたくないし・・・・・・。
 まぁ、その偉い人より偉いのがフラムだったりするので断るのも簡単だったのだが。配偶者である俺もそうなんだけど、実感は全然ない。
 というか今更ながら俺はとんでもない娘と結婚してしまったのではないだろうか。

 俺たちの名前を聞いてからの領主さまの態度の変わりようは中々に見ものだった。
 偉い人に有りがちな横柄で傲慢な態度ではなく、見た目通り良い人だったためかなり恐縮しまくってしまい、逆にこちらが悪者になってしまった気分だったが。
 奥様の方は「あら、そうでしたのね。失礼致しましたわ」と普通に対応していたのが、夫妻の力関係を如実に表していた。

 領主さまは名前から俺とフラムを姉妹だと思っているようだったが、これ以上胃に負担を掛けるのはあまりにも可哀相過ぎたので訂正するのは止めておいた。
 その気遣いも空しく、俺たちの指輪に気付いた奥さんに指摘されてしまい、平謝りさせることになってしまったのは不可抗力だ。奥様っょぃ。
 それでも夫妻の関係は良好そうなのは救いだった。

 ラビは領主さまからの招待を「私だけでも良ければ」と受けていた。
 彼女には断る理由がないしな・・・・・・しまったな、一人で行かせてしまうことになってしまう。
 そう思って後でそれとなくラビに声をかけたが、どうやらおばさんと一緒に行くことになったらしい。それなら心配ないだろう。偉い人とのコネも出来るし、悪いことばかりではないはずだ。
 あとはキシドーとメイも付けておけば安心である。皆もそれに賛成のようだ。

 ラビは申し訳ないと断ってきたが、俺たちよりも戦う力を持っていないラビに二人を使ってもらった方が自分たちも安心できるのだと説明して納得してもらった。
 いつでも助けに来られるならいいんだけどね。

 キシドーとメイには「ラビをよろしく」と言い聞かせておく。二人には武具と調理道具一式を新しく作って餞別として贈った。
 これからもラビのサポートをしっかりしてくれることだろう。

「でも、私・・・・・・もう迷宮には行かないと思うけど、それでもいいの?」
「それは全然構わないよ。迷宮の中だろうが外だろうがキシドーとメイにはラビの護衛をしてもらうつもりだったし。でも、最初はあんなに迷宮に行きたがってたのに、どうして?」

 俺たちの居ない間も他のパーティに混ぜてもらい、低階層を周回していたはずだ。
 一体どうしたというのだろうか。

「私・・・・・・ちゃんと働くよ。」

 ラビは遠い目をしてそう言った。
 彼女もまた、カジノで心に傷を負った一人なのだ。
 そっと、彼女の肩に手を置いた。

*****

 数日間にわたった宴会も終わり、俺たちは別れの挨拶を交わしていた。

「それじゃあまたね、ラビ。」
「うん・・・・・・。」

 目を伏せたラビの頭をリーフが撫でる。

「そんなに寂しそうな顔をするものじゃないわ。また来るのだし。」
「そうだよ。今までは迷宮の攻略で忙しかったけど、次はゆっくり遊ぼう。その時のためにちゃんとおばさんを手伝っておいてね。」

「うん・・・・・・頑張る。」

 それぞれラビとの別れを済ませ、トラックに乗り込む。

「次来る時は今回の旅のお土産持ってくるからね、楽しみにしてて!」
「・・・・・・わかった! またね、みんな!」

 手を振るラビに手を振り返し、トラックを発進させた。
 次の目的地はリーフの故郷だ。
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