DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

211話「酒もってこい」

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「お前達のようなニンゲンの子供に何ができる。さっさと立ち去るがいい。」

 憮然と言葉を放ち、冷たい目で見下げてくる獣人。
 まぁこの見た目じゃ仕方ないだろうけど。

「あの瓦礫で塞がった入口を通れるようにできますよ。」
「フン、そのような細腕で何を世迷言を。」

「流石に手で掘ろうなんて思ってませんよ。こんな感じで掘ります。」

 言葉で説明するより実際に見た方が早いだろうと、地面に手を当て、イメージしながら魔力を流す。
 足元の地面が沈んでいき、墓穴ほどの大きさの穴が一瞬で出来上がった。

「い、今なにをした?」
「魔法です。鉱山の入口を掘る時は崩れないよう周囲の強化も行うので、もう少し時間が掛かりますけど。どうでしょうか?」

 獣人は少し考え込むような仕草をし、口を開いた。

「お前は何を望む?」
「望む、とは?」

「金か?」
「あぁ、そういうことですか。いえ、私たちは特に望むものはありません。強いて言えば・・・・・・戦力ですかね。」

「戦力?」
「はい、鉱山内にはどれくらいの死魔がいるか分かっていません。入口を開けた途端、死魔が溢れ出してくる可能性もあるので。」

「それで戦力、というわけか。」
「街まで行けばギルドで討伐隊を募ることはできるんですけど、時間も手間もかかりますから。獣人の皆さんがいるなら、その必要がなくなりますので。」

 周囲に目線を飛ばしてから目の前の獣人に微笑みかける。
 獣人の耳がピクリと反応し、苦虫を噛んだように眉をしかめた。
 取り囲んでいることがバレているのは意外だったようだ。

「だが、お前たちに得はあるまい?」
「先ほど話した近くの村というのが、仲間の故郷なんです。そこが安全になるなら、それ以上の報酬はありません。」

「我らと同じ、というわけか・・・・・・。いいだろう、長に話を通してやる。ここで一日待て。」
「分かりました。良いお返事を期待しています。」

 出発前に用意した食料だけなら少々心許ないが、インベントリ内に保存の効く携帯食は常備しているため食料に関しては問題ない。飽きる、ということを除けば。
 泊まる場所はいつも通り土で小屋を作っておけば大丈夫だろう。
 パッと目算を終えると、獣人が周囲に目を向けて手を上げた。
 すると、俺たちを監視していた数人の獣人が姿を現した。

「呼んだか、アナスカ。」
「オレは一度郷へ戻る。このニンゲン達はオレの客人として扱え。」

「ニンゲンをか? 正気か?」
「あぁ。だがこのニンゲンの手があれば死魔のヌシを倒せるかもしれない。詳しい話はその小さいのに聞くといい。オレは長にお伺いを立ててくる。」

「分かった。それが本当なら長もお喜びになるだろう。」
「そういうわけだ。頼んだぞ、ヘルフ。」

 アナスカと呼ばれた獣人はそう言葉を残すと、あっという間に森の奥へと消えていった。さすが獣人である。

「小さいニンゲンよ。詳しい話を我らにも聞かせてくれるか?」
「分かりました。見てて下さいね。」

 アナスカに見せたのと同じように魔法で穴を開けて見せ説明を行うと、獣人たちに小さな歓声が起こった。死魔には彼らも手を焼いていたらしい。
 外に出ている死魔を尾行したりもしたそうだか、生命のあるものに対する探知能力が高く、上手い具合に誘導され翻弄されてしまったという。死魔の王の知能は結構高いようだ。
 村に来ていた死魔はおそらく、指示できる範囲外に漏れたのが迷い込んだのだろう。

 それから獣人たちとの交流を持ったが、意外にニンゲンに対しての敵愾心というものは感じなかった。人間への態度は警戒心の表れというのが大きいようだ。先に来ていた冒険者についても監視だけ行っていたという話である。
 接触を図ってきたのはやはりサーニャの存在が大きかったらしい。彼女の瞳には彼らも驚いていたが、俺たちと同じ”客人”として扱うことで落ち着いたようだ。

 ――そしてその夜。

「これを・・・・・・我々に?」
「ええ、食材も分けて頂きましたし。」

 ヘルフという名の獣人がゴクリと喉を鳴らす。
 食事をとっている他の獣人たちも興味津々なようで、チラチラとこちらを窺っている。

「客人として扱うと決めたのだ。当然のことだ。」
「その客人から友好の証としての贈り物を受け取っても罰は当たらないでしょう? 私たちは飲めませんので、皆さんでどうぞ。」

「で、では有難くいただこう。・・・・・・皆、小さいニンゲンのアリューシャが酒をくれたぞ!!」

 俺の手から受け取った瓶をヘルフが獣人たちに向かって高々と掲げる。その言葉を理解すると、こちらを見守っていた獣人たちが一斉に歓声を上げた。というより吠えた。獣人もお酒は好きらしい。
 ・・・・・・一本じゃ足りないかな?
 まぁ、足りなければインベントリから必要なだけ出せばいいだろう。

 何故俺がお酒を持っているかと言うと、子供にお菓子があると便利なように、大人相手にはお酒があると便利なのだ。特に冒険者。
 外で会った時なんかに安酒でもプレゼントしてやると大変喜ばれる。俺にはインベントリがあるから邪魔にはならないけど、普通は持って行かないしね。
 そして子供のなりをしているので覚えも悪くないため、後に便宜を図ってもらえたりするのだ。安い先行投資だと思えばいい。

 その手は獣人たちにも効果は絶大なようである。
 行商の仕事をしたりしている変わり者の獣人からくらいしか入手方法がないため、人間の作ったお酒はとても貴重なのだそうだ。
 獣人たちも自分で作れはするものの、やはり味は劣るのだという。そりゃあ生活の片手間で作るものより、専門職が作ったものの方が美味しいだろう。
 お酒は獣人たちの口に合ったようで、気付けばいつのまにか”心の友”にまで格上げされていた。チョロい。

 こちらはこちらで獣人たちの採ってきてくれた肉や野菜なんかを調理中である。
 獣人たちの基準で用意してくれたのだろうけど、量がヤバイくらい多い。フィーやニーナまで出張るほどの忙しさだ。

「私も何か手伝うよ。」
「じゃ、フィーたちと一緒に野菜の皮を剥いて適当な大きさに切っておいてくれるかしら?」

「りょーかい。」

 そんな様子を獣人たちが興味深そうに眺めてくる。
 ちなみに獣人たちの調理法は切る、焼く、食うだった。うちの親父と同じ思考である。
 さすがに郷に住む獣人の女性たちは違うと思いたい。

「ねぇアリス・・・・・・凄くやりにくいのだけれど・・・・・・。」
「あー・・・・・・、どうせならあの人たちも誘おうか。」

「そうね・・・・・・ああしていられるよりその方がよっぽど楽だわ。」

 というわけで獣人たちを誘ってみると、二つ返事で受けてくれた。少しは難色を示されるかと思ったが、どうやらお酒の効果は抜群だったようだ。
 え、ちょ、材料そんな持ち込まないで!
 ・・・・・・俺たちは獣人の食欲を甘く見過ぎていたのかもしれない。

「これは・・・・・・気合入れないとね・・・・・・。」
「ハァ・・・・・・仕方ないわね・・・・・・。」

 まぁ、皆も獣人たちと仲良くなれたみたいだし、良しとしよう。
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