DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

214話「死魔の王」

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 積み重なる死魔の残骸を前に、ゆっくりと息を吐く。
 こちらにはこれ以上襲ってくる様子は無さそうだが、相変わらず戦いの音は響いてくる。思っていたより敵の数は多そうだ。
 外界と繋がってからコツコツと増やしていたのだろう。

「ふぅ・・・・・・やっと終わった。そっちは問題ないですか、ヘルフさん?」
「大丈夫だ。ニンゲンもやるものだな。」

「少しは見直してもらえましたか?」
「あぁ、安心して後ろを任せられる。」

「でも、ボクもうヘトヘトだよ。」
「そうね・・・・・・今ので結構魔力を使ってしまったわ。」

 それも仕方ない。前衛が戦えなかったうえにあの数を魔法だけで相手にしたのだ。それに何としても近づけたくないという思いも働いたのだろう。ヴィジュアルも臭いも精神にクるものがあったからなぁ・・・・・・。
 アナスカが眉をひそめて唸る。

「しかし罠まで仕掛けていたとはな。」
「これからはもっと慎重に進んだ方が良さそうですね。魔物の死体があれば頭を潰しながら行きましょう。・・・・・・気は進みませんけど。」

 響く戦闘音をBGMにその場で息を整える程度に短い休憩をとってから、進軍を再開する。
 暗く湿った空気が呼吸を重くし、額に汗を滲ませる。

 どうやらお相手は伏兵で挟み撃ち戦法が好きらしく、それからも何度か引っかけられてしまった。
 別に皆が油断していたわけではないし、転がっていた死体を見落としたわけでもない。ただ、壁に埋められている死体を探すとなると手間も時間もかかり過ぎるのだ。
 結果、罠にかかって全部倒した方が早いという結論に至った。おかげで前衛勢の出番もあったが、皆げんなりとした顔をしている。

 牛歩戦術で進めていく内に他の通路の探索を終えた部隊とも合流し、攻略速度も上がっていく。
 他の部隊も挟み撃ちにあったようで、怪我人は出たものの未だ死人は出ていないらしい。さすが獣人といったところか。怪我で戦えない者は外に運び出されているという話だ。そっちは事が終わってから治療すればいいだろう。
 大半の獣人たちとの合流を終えた頃、ふと先頭のアナスカが足を止めた。

「この大きな気配は・・・・・・どうやらヌシのようだ。」

 アナスカの見つめる方向へ感知の範囲を伸ばしてみる。確かに大きな魔力の塊が存在しているようだ。てか、この距離で感じ取れるのか・・・・・・後をつけられて気付けなかったのも納得。

「アリューシャ、ヌシは我らで仕留める。お前たちは後ろで見ていろ。」
「分かりました。頑張って下さいね。」

 死魔の王の気配に近づくにつれ、眷属の層も厚くなってくる。それだけ向こうも必死だということだろう。
 壁、天井、床、至る所から埋められていた死魔が這い出してくる。しかしその悉くを危なげなく獣人たちが粉砕していく。奇襲も何度も仕掛けられれば慣れてしまうものである。
 そしてとうとう、死魔の王の元へと辿り着いた。

 その場所は大きい鉱脈があるのか他よりも広範囲に掘られており、他の通路がいくつかここへ繋がっている。丁度そちらからも獣人たちが到着したようだ。
 部屋の奥には崩落したと思われる瓦礫が山の様に積み重なっている。そしてその瓦礫、ただの岩や土ではない。あれはおそらく・・・・・・魔鉱石。
 ここは魔鉱石が採掘できる鉱山だったようだ。あの崩れた部分だけで、どれだけの値が付くだろうかと思わず緩みそうになった頬を引き締めた。
 死魔の王のものと思われる魔力は、その魔鉱石の塊が積み重なった場所から、背筋がゾクリとするような気配と共に発せられている。

「皆、構えろ!」

 アナスカの号令で獣人たちが一斉に武器を構えた。その敵意に応えるように、瓦礫の山から悍ましい気配が膨れ上がってくる。その気配が凝縮され黒い靄となり、怨みつらみを嘆きながらやがて人の上半身の形をとった。怨霊ってのはああいうのを言うんだろう。
 獣人の一人が咆哮と共に死魔の王へ斬りかかった。しかし実体は無いようで、斬撃はあっさりとすり抜け、靄を少し散らす程度で終わってしまった。

 だよなぁ・・・・・・。どう見ても物理攻撃効かないタイプだし。

 他の獣人たちも間髪入れず手に持った武器で攻撃を行うが、そのどれもが効果は無い。となれば魔法攻撃なのだが・・・・・・誰も使う様子がない。
 獣人は魔力での身体強化が得意な分、魔法を扱うのが苦手らしいからな。サーニャも「力が抜けるにゃ!」と言って使いたがらないのだ。身体強化に使っている魔力を回すわけだから当然なのだが。
 獣人たちは武器の効かない相手は想定外だったのか、その表情に焦りが浮かび始める。

「くっ! 効かないぞ!」
「もっとだ! もっと攻撃しろ!」
「畳み掛けるぞ!」
「応!」

 更に攻撃を続けるが、やはり効果は無い。
 そして、それまでされるがままにしていた死魔の王が、ゆっくりと動き出した。のっぺらぼうだった顔の部分が口のように裂けていく。

「ッッッ~~~~―――!!!」

 死魔の王が金切り声を上げると、纏っていた黒い霧が爆発するように広がった。怨念の込められた魔力が身体の中を通り抜けていく。同時に、頭の中に怨嗟の声が響いた。
 どうやら精神汚染する類の幻惑魔法らしい。ミアの”魅了”と似たようなものだろう。俺には耳元で羽虫が飛んでいる程度だが――

「ウガアアァァァァッッ!!」

 一部の獣人たちが正気を失い、手当たり次第に暴れ始めた。

「ど、どうしたお前達!?」

 獣人同士での戦いが始まり、武器の打ち合う音が響く。しかし正気を保っている獣人たちの動きは、躊躇いと戸惑いが鈍らせている。
 これは・・・・・・ちょっと不味いか。

「アナスカさん! 錯乱している方たちは腕を折るなり脚を折るなりして動きを止めてから外に運び出して下さい! 生きてさえいれば私が魔法で治せます!」
「くそっ・・・・・・分かった! 皆、聞こえたな!」

 アナスカの声と同時に精彩を欠いていた獣人たちの動きが徐々に戻ってくる。
 俺は錯乱している獣人たちが持っている武器の魔力結合を解き、破壊しておく。これで少しは戦いやすくなるだろう。
 それを皮切りに、獣人たちの形勢は逆転。正気を失った獣人たちを次々取り押さえていく。迷いさえ無くなってしまえば正気を失った相手など敵ではないようだ。言った俺が言うのもなんだが、引くほど痛めつけているが・・・・・・まぁ、あれくらいなら問題無く治療はできそうだ。
 獣人のことは獣人に任せ、自分の仲間たちの方へ目を向ける。

「ぅ・・・・・・何なのよ、今のは。」

 震える肩を抱いてうずくまり、ハラハラと涙を溢れさせるリーフ。正気を失った獣人たち程ではないが、影響を受けてしまったようだ。一番重症なのはリーフだが、他の皆への影響も小さくはない。
 幻惑への耐性は当人の体調や精神力などにも左右されるが、魔力量によるところが大きい。魔力がたっぷり詰まってれば揺さぶられにくい感じだ。
 そのため影響が比較的少ないのはフィーとヒノカ、フラムあたりか。他の皆は正気を失ってはいないものの、リーフと同じ様に地に膝をつけている。

「お姉ちゃん、ヒノカ、動ける?」
「あぁ・・・・・・何とかな。」

「なら、皆を連れてここを離れて。」
「ァ、アリスは、どうする・・・・・・の?」

「私はアレの相手をするよ。獣人の人達だと相性が悪いみたいだし。」
「ダ、ダメだよ、そんなの・・・・・・!」

「獣人の人達じゃ無理みたいだし、皆も今の攻撃でまともに動けないし・・・・・・私が殿やるしかないからね。」
「あ、危ない、よ!」

 フラムが袖を掴んでふるふると首を横に振る。

「皆まで正気を失っちゃったらもっと危険だから・・・・・・分かって、フラム?」
「・・・・・・行こう、フラム。アリスなら平気。」

 フィーがフラムの手をそっと握ると、ゆっくりフラムが袖を離す。

「お姉ちゃん、フラムをお願いね。」
「・・・・・・分かった。」

 退却していく皆を見送り、死魔の王へ向き直る。

「さて、そこの魔鉱石おたからいただこうか。」
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