DTガール!

Kasyta

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がっこうにいこう!

232話「節操は持ちましょう」

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 久しぶりに見るババ様の屋敷。
 相変わらずこの村には似つかわしくないくらいにデカくて立派な建物だが、以前ほどの威圧感は感じない。
 色々見てきたおかげで俺にも耐性がついたのだろう。
 直近では城に連行されたしなぁ・・・・・・。

「ババ様ー、入るよー!」

 以前そうしていたように、声を掛けてから扉に手をかけた。
 俺を出迎えるのは面倒だから勝手に入れと言われているのだ。
 扉を開こうと体重を掛けると、タイミングよく内側からも開かれ、つんのめってしまう。

「申し訳ありません、アリューシャ様。お怪我は御座いませんか?」
「大丈夫ですけど・・・・・・どうしてウィロウさんが?」

「ヴェネリー様に従者がおられませんでしたので、滞在中は私がお手伝いさせていただいております。」

 確かにババ様は一人暮らしで、侍女どころかお手伝いさんも雇っていなかった。
 そんなところも全然貴族らしくないな・・・・・・。

「ワタクシは必要ありませんと申したのですけれどね。お久しゅう、アリューシャ。」
「え゙っ・・・・・・誰?」

 ウィロウの後ろから杖をついた女性が優雅な足取りで姿を見せた。
 見た目はババ様なんだけど・・・・・・え、誰?

「・・・・・・身体ばっかり大きくなって小生意気なところは全く治ってないね、アンタは。」
「あっ、やっぱりババ様か。いてっ!」

 この杖さばきは間違いなくババ様だ・・・・・・。

「ほっほっほ。あのヴェネリー様もアリューシャ様にかかれば形無しですな。」
「何言ってんだい、このジジイは。ハァ・・・・・・貴族の真似事をするのも疲れるよ。」

「真似事って・・・・・・ババ様も貴族なんでしょ?」
「どこでそんな余計な事を聞いたんだい。全く、面倒な子だね。」

「お二人とも、お茶をお淹れ致しますので、積もる話はお部屋で致しましょう。クルヴィナ様とフラムベーゼ様もお待ちです。」
「ハァ・・・・・・お客を放っておくわけにはいかないね・・・・・・。ホラ、行くよ。」

 ババ様に背を押されるように屋敷の中を進んで行く。
 中も全然変わっていない。
 客間に辿り着くと、ウィロウが扉をノックしてから開いた。
 客間の席にはクルヴィナとフラムが着いている。

「おかえりなさい、ヴェネリー様。やはりアリスちゃんでしたのね。」
「えぇ、そうでしたわ。途中で席を立ってしまって申し訳ありませんでした。」

「・・・・・・プフッ。」

 いきなりババ様の口から飛び出してきた貴族言葉に思わず吹いてしまう。
 音速の杖撃が俺の後頭部を捉えた。

「あ、あの、ヴェネリー様?」
「ホホホ、お気になさらないで下さいまし。それよりクルヴィナ様。アリスに見せるものが有ると仰っておりませんでしたか?」

「あぁ、そうでしたわ! ウィロウ、あれを持って来て頂戴!」
「畏まりました。ですがその前にお茶を淹れ直しますので、少し落ち着きなさって下さい。」

 興奮するクルヴィナを宥めすかしながら俺たちを席に案内し、お茶を注ぐウィロウ。相変わらず手際が良い。
 お茶菓子まで並べたウィロウは一礼して部屋を後にした。
 甘いお茶菓子を一つ口の中へ放り込んでから、少し苦めのお茶で流し込む。

「久しぶりね、アリスちゃん。あの時はすぐに旅に出て行っちゃったから、こうしてまたゆっくりお話しできるのは嬉しいわ。」
「あはは・・・・・・そうですね。それで、私に見せたいものとは何ですか?」

「それは~・・・・・・うふふ、見てからのお楽しみよ。」

 溢れる笑みを抑えきれないクルヴィナを見ていると、何となく不安になってくる。

「そうそう、さっきまでヴェネリー様からアリスちゃんについて色々窺っていたのよ。」
「色々と・・・・・・ですか。」

「えぇ、とっても優秀な生徒さんだったのね、アリスちゃんは。」
「いえ、そんなことは・・・・・・。」

 ジトとババ様の方へ視線を向けると、ひょいと視線を外される。
 面倒だから会話は俺に丸投げするつもりか。そうは問屋が卸さない。

「そうだ、私もババ様に聞きたいことがあるんだよ。」
「な、何かしら、アリス?」

「ババ様が家出したときの話。」
「まぁ、家出!?」

 クルヴィナが目を丸くして声を上げた。
 しかし、かなり興味深々なようである。

「そ、そんな事どこで聞いたのかしら?」
「ウィロウさんから。」

「あのジジイ・・・・・・余計な事を。」

 ボソリと呟くババ様。

「ていうかババ様。疲れるなら普通に話した方が良いんじゃない?」

 そう言うと、ババ様が観念したように深いため息を吐いた。

「ハァ・・・・・・アンタと居るとどうも調子が狂うね。悪いねクルヴィナさん。ワシはこっちの方が話しやすいんでね。これからはこっちで話させてもらうよ。」
「あはは、その方がババ様らしいよ。」

「ワシの話なんて面白くも無いよ。ただ結婚が嫌で家出しただけの話さね。」
「でも家族との仲は悪くないって聞いたよ。」

「あぁ、今でも兄たちがワシの作った薬を寄越せと煩くてね。」
「薬を・・・・・・? そもそもどうしてババ様は薬を作れるの?」

「ワシの家は代々辺境伯でね。領地の周辺は魔物の数も多くて、父や兄もよく魔物の討伐に出ておってな。そんな兄たちのために、ウチで雇っていた薬師に教わりながら薬を作っていただけの話さ。」
「へぇー、ババ様にもそんないじらしい一面が・・・・・・。」

「一言余計じゃわい。」
「いてっ!」

 とまあ、そんなやり取りをしながらババ様の過去を聞いていった。
 侍女を一人と護衛の冒険者を一人連れ、しばらく旅をした後にこの村に落ち着いたという。
 そしてこの村で薬師として生計を立てていると、薬の評判を聞きつけた兄たちがやって来て見つかってしまったのだ。
 でも連れ戻しに来たのではなく、普通に薬を買いに来ただけらしい。
 そもそも連れていた侍女が父親と内通しており、父親には全ての行動が筒抜けだったそうだ。

 元々の結婚話も、申し込んできた貴族相手に「嫁に欲しかったら口説き落としてみろ。」と、父親が言った程度の話で、決まっていた話ではなかったようだ。
 ただ口説きまくってくる相手に嫌気がさして、面倒になったババ様が家出したというのが事の真相である。

「それで、相手の貴族はどうしたの?」
「ワシの侍女とルーナにまで手を出そうとしたから、ぶん殴って追い返してやったら二度と来なくなったよ。」

「え、ルーナって・・・・・・ニーナのお婆ちゃんの?」
「あぁ、ワシらの護衛をしていた冒険者がルーナだよ。」

「えぇ!?」

 世間って狭い。
 いやでも、二人の歳は近いだろうし、同じ村に住んでて知り合いじゃないって方が無理があるか。

「貴族が愛人を持つことは悪いことではありませんが、節操も持ちませんとな。ほっほっほ。」

 戻ってきたウィロウに、いち早く反応したのがクルヴィナだ。

「おかえりなさい、ウィロウ。準備は出来ましたか?」
「はい、クルヴィナ様。滞りなく。」

「うふふ、楽しみだわ。」

 ・・・・・・俺には不安しかない。
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