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がっこうにいこう!
241話「両親は冒険者」
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「よぉーし、出発だアリス!」
「はいはい、分かってるよお父さん。」
助手席に座るエルクに急かされ、アクセルをゆっくりと踏み込む。
徐々にトラックが加速していき、バックミラーに映る村と見送りに来ていたルーナさんの姿が小さくなっていく。
荷台ではニーナを筆頭にした仲間たちが大きく手を振って別れの言葉を叫んでいる。
「おおっ、ホントに馬が居ないのに動いてやがる! こりゃあ良いな!」
「あんまり暴れないでね。」
子供みたいにはしゃぐエルクに若干呆れてしまう。
「ハハッ、悪ぃ悪ぃ! しかし、オレが助手席に座っちまって良かったのか? ずっとあの子が座ってたんだろ?」
「まぁそうなんだけど・・・・・・お父さんが荷台の方が良いなら、今からでも代わってもらう?」
「・・・・・・いや、遠慮しとくぜ。」
荷台から聞こえてくる黄色いお喋りに辟易した顔でエルクが呟いた。
そう、隣にいる彼を除けば車内に居るのは全員女子なのだ。
まぁ、普通に考えれば俗に言うハーレム状態なんだけど、なにせ後ろの女子たちの中にはサレニアも混じっている。
そんな中にエルクを放り込んでは肩身が狭いだろうと、フラムに頼んで席を譲ってもらったのだ。
さて、なぜエルクとサレニアの二人がトラックに乗り合わせているのかというと、次の目的地が最寄りの街セイランだからである。
この街には冒険者ギルドがあるため、エルクが仕事の拠点として利用している。
その仕事のために街へ向かう二人を、ついでに送って行く事になったのだ。
「お母さんが冒険者の仕事に復帰してるって、冗談じゃなかったんだね・・・・・・。」
「まぁ、お前たちの面倒を見る必要が無くなったからな。」
「お父さんはそれで良いの?」
「良いも悪いも、元々お前たちを育てる間は休業するって話だったしな。冒険者を辞めたワケじゃない。」
「そ、そうだったんだ・・・・・・。お母さんって強いの?」
「強いってか、巧いな。魔法の運用と・・・・・・あと、味方を盾にするのが。」
み、味方を・・・・・・盾に!?
「それって・・・・・・大丈夫、なの?」
「大丈夫もなにも、サリーは後衛だから前衛の味方を盾にするのは当然だろ?」
「なんだそういうこと・・・・・・。それで、”巧い”っていうのは?」
「相手だってバカじゃねえからな。回り込んで後衛を叩いてくることだってあるだろう?」
「あー、確かに。」
数を頼りにしているヴォルフなんかは、こちらを取り囲んで襲ってくるのが常套手段だ。
寄せ集めのパーティに比べれば余程統率が取れている。
「そういうのを短剣を使っていなして、前衛の方に預けるんだよ。」
サレニアは身を守る程度の近接戦闘が可能らしい。
後衛にとって必修科目ではないものの、それが生死を分けることだってある。
「それ、かなり前衛の人の負担になるんじゃないの?」
「あぁ。けど、そいつが負傷しないようなギリギリのところでやらせるんだよな。」
だから”巧い”のか。
改めて考えてみれば、俺たちのパーティではリーフとフラムを中心に、背を預けて円陣を組むような安定した形となる。
けどそれは、人数が多く、前衛で戦える者が大半だからこそ可能なのだ。
もしそれが崩された時、俺たちは”巧く”立ち回って連携できるのだろうか。
「じゃあ、お母さんは魔法ではどういう風に戦うの?」
「そうだな・・・・・・こんなちっこい水の玉を飛ばしたり、そよ風を吹かせたりだな。」
エルクが指で作って見せた丸の大きさはBB弾程度の大きさである。
「え・・・・・・そんなの何の意味があるの?」
「えいっ、≪水≫。」
母の声がしたかと思うと、耳の中にジュボっと水が入り込んできた。
「ひぁぁっ!? お、お母さん!?」
驚いて振り返ってみると、後ろで楽しそうに話していた皆が食い入るように真剣にこちらの話に聞き入っていた。
サレニアだけは慌てる俺を見てくすくすと笑っている。
「ま、今みたいなのを相手にやるワケだ。」
「そよ風っていうのは・・・・・・?」
「≪風≫。」
「・・・・・・ひゃぅ!?」
フィーが小さく悲鳴を上げて目を瞬く。どうやら”そよ風”が目に直撃したらしい。
確かにこんな悪戯を戦闘中にされたら堪ったもんじゃない。気を逸らすだけなら十二分に効果を発揮しそうだ。
そして、手練れの冒険者ならそんな一瞬の隙も見逃さないだろう。
「でも、それならもっと大きい水の玉とかでも良くない?」
「大き過ぎると味方にも掛かっちゃうし、魔力も多く使うもの。」
「ぁ・・・・・・そうか。だけど、どうしてそこまでして魔力の節約をするの?」
「エルク君はよく怪我するからねぇ。」
「う、うるせえ! 昔の話だろ!」
「あら、そうだったかしら?」
「ぐっ・・・・・・。」
なるほど、治癒魔法のために魔力を温存するのか。
ヒーラー的な役割をこなしているのだろう。
「だから戦うって言ってもサリーが魔物を仕留めることなんて殆どないぜ。むしろそんな状況になればマズいって事だ。」
前衛が支えきれなくなってるってことだからな・・・・・・。
マズいどころか危機的状況だと思うが。
「ま、そんな状況を覆してきたからこそ今のオレが在るワケなんだがな!」
「もう、エルク君ったらすぐ調子に乗るんだから。」
気付けば二人の冒険者稼業の話を聞く流れになっていた。
特にリーフがサレニアの話に興味を持ったみたいで、質問攻めにあいながらも笑顔で答えていた。
「おおっ、もう見えてきたぜ! やっぱ早いな、この馬車!」
エルクの視線の先には懐かしいセイランの外門。四年ぶり・・・・・・か。
記憶の中ではもっとデカいと思っていたが、レンシアの街や他の都市の外門に比べるとやはり小さい。
それでも思い出の少なくない場所。胸の奥からウズウズと嬉しさがこみ上げてくる。
「みんな、飛ばすからちゃんと座っててね!」
沸き上がってくる嬉しさをそのままアクセルに乗せ、踏み込んだ。
「はいはい、分かってるよお父さん。」
助手席に座るエルクに急かされ、アクセルをゆっくりと踏み込む。
徐々にトラックが加速していき、バックミラーに映る村と見送りに来ていたルーナさんの姿が小さくなっていく。
荷台ではニーナを筆頭にした仲間たちが大きく手を振って別れの言葉を叫んでいる。
「おおっ、ホントに馬が居ないのに動いてやがる! こりゃあ良いな!」
「あんまり暴れないでね。」
子供みたいにはしゃぐエルクに若干呆れてしまう。
「ハハッ、悪ぃ悪ぃ! しかし、オレが助手席に座っちまって良かったのか? ずっとあの子が座ってたんだろ?」
「まぁそうなんだけど・・・・・・お父さんが荷台の方が良いなら、今からでも代わってもらう?」
「・・・・・・いや、遠慮しとくぜ。」
荷台から聞こえてくる黄色いお喋りに辟易した顔でエルクが呟いた。
そう、隣にいる彼を除けば車内に居るのは全員女子なのだ。
まぁ、普通に考えれば俗に言うハーレム状態なんだけど、なにせ後ろの女子たちの中にはサレニアも混じっている。
そんな中にエルクを放り込んでは肩身が狭いだろうと、フラムに頼んで席を譲ってもらったのだ。
さて、なぜエルクとサレニアの二人がトラックに乗り合わせているのかというと、次の目的地が最寄りの街セイランだからである。
この街には冒険者ギルドがあるため、エルクが仕事の拠点として利用している。
その仕事のために街へ向かう二人を、ついでに送って行く事になったのだ。
「お母さんが冒険者の仕事に復帰してるって、冗談じゃなかったんだね・・・・・・。」
「まぁ、お前たちの面倒を見る必要が無くなったからな。」
「お父さんはそれで良いの?」
「良いも悪いも、元々お前たちを育てる間は休業するって話だったしな。冒険者を辞めたワケじゃない。」
「そ、そうだったんだ・・・・・・。お母さんって強いの?」
「強いってか、巧いな。魔法の運用と・・・・・・あと、味方を盾にするのが。」
み、味方を・・・・・・盾に!?
「それって・・・・・・大丈夫、なの?」
「大丈夫もなにも、サリーは後衛だから前衛の味方を盾にするのは当然だろ?」
「なんだそういうこと・・・・・・。それで、”巧い”っていうのは?」
「相手だってバカじゃねえからな。回り込んで後衛を叩いてくることだってあるだろう?」
「あー、確かに。」
数を頼りにしているヴォルフなんかは、こちらを取り囲んで襲ってくるのが常套手段だ。
寄せ集めのパーティに比べれば余程統率が取れている。
「そういうのを短剣を使っていなして、前衛の方に預けるんだよ。」
サレニアは身を守る程度の近接戦闘が可能らしい。
後衛にとって必修科目ではないものの、それが生死を分けることだってある。
「それ、かなり前衛の人の負担になるんじゃないの?」
「あぁ。けど、そいつが負傷しないようなギリギリのところでやらせるんだよな。」
だから”巧い”のか。
改めて考えてみれば、俺たちのパーティではリーフとフラムを中心に、背を預けて円陣を組むような安定した形となる。
けどそれは、人数が多く、前衛で戦える者が大半だからこそ可能なのだ。
もしそれが崩された時、俺たちは”巧く”立ち回って連携できるのだろうか。
「じゃあ、お母さんは魔法ではどういう風に戦うの?」
「そうだな・・・・・・こんなちっこい水の玉を飛ばしたり、そよ風を吹かせたりだな。」
エルクが指で作って見せた丸の大きさはBB弾程度の大きさである。
「え・・・・・・そんなの何の意味があるの?」
「えいっ、≪水≫。」
母の声がしたかと思うと、耳の中にジュボっと水が入り込んできた。
「ひぁぁっ!? お、お母さん!?」
驚いて振り返ってみると、後ろで楽しそうに話していた皆が食い入るように真剣にこちらの話に聞き入っていた。
サレニアだけは慌てる俺を見てくすくすと笑っている。
「ま、今みたいなのを相手にやるワケだ。」
「そよ風っていうのは・・・・・・?」
「≪風≫。」
「・・・・・・ひゃぅ!?」
フィーが小さく悲鳴を上げて目を瞬く。どうやら”そよ風”が目に直撃したらしい。
確かにこんな悪戯を戦闘中にされたら堪ったもんじゃない。気を逸らすだけなら十二分に効果を発揮しそうだ。
そして、手練れの冒険者ならそんな一瞬の隙も見逃さないだろう。
「でも、それならもっと大きい水の玉とかでも良くない?」
「大き過ぎると味方にも掛かっちゃうし、魔力も多く使うもの。」
「ぁ・・・・・・そうか。だけど、どうしてそこまでして魔力の節約をするの?」
「エルク君はよく怪我するからねぇ。」
「う、うるせえ! 昔の話だろ!」
「あら、そうだったかしら?」
「ぐっ・・・・・・。」
なるほど、治癒魔法のために魔力を温存するのか。
ヒーラー的な役割をこなしているのだろう。
「だから戦うって言ってもサリーが魔物を仕留めることなんて殆どないぜ。むしろそんな状況になればマズいって事だ。」
前衛が支えきれなくなってるってことだからな・・・・・・。
マズいどころか危機的状況だと思うが。
「ま、そんな状況を覆してきたからこそ今のオレが在るワケなんだがな!」
「もう、エルク君ったらすぐ調子に乗るんだから。」
気付けば二人の冒険者稼業の話を聞く流れになっていた。
特にリーフがサレニアの話に興味を持ったみたいで、質問攻めにあいながらも笑顔で答えていた。
「おおっ、もう見えてきたぜ! やっぱ早いな、この馬車!」
エルクの視線の先には懐かしいセイランの外門。四年ぶり・・・・・・か。
記憶の中ではもっとデカいと思っていたが、レンシアの街や他の都市の外門に比べるとやはり小さい。
それでも思い出の少なくない場所。胸の奥からウズウズと嬉しさがこみ上げてくる。
「みんな、飛ばすからちゃんと座っててね!」
沸き上がってくる嬉しさをそのままアクセルに乗せ、踏み込んだ。
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