DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00033話「ひとりぼっちの夜」

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「聞いてる、コレットちゃん?」

 席を繋げた隣で、うつらうつらと船を漕いでいるコレットの肩をツンとつつく。

「ふぁ・・・・・・っ!?」

 それに反応して、コレットの身体がピクンと跳ねた。
 同時に彼女の座っていた椅子が鳴り、静かに課題を取り組んでいたクラスメイトたちの視線がコレットに集まる。

「ご・・・・・・ごめん、なさい・・・・・・。」

 騒がしくなる前にキャサドラ先生の咳払いで生徒たちは自分の課題に向き直った。

「コレットちゃんが居眠りなんて珍しいね、寝不足?」
「え、えっと・・・・・・な、なんでもない・・・・・・。」

 俺の問いに、コレットは言い難そうに視線を逸らした。
 何でもなくはなさそうだが、無理に聞き出すのも良くないか。

「とにかく、課題を終わらせちゃおうか。分からないとこある?」
「う、うん・・・・・・。」

 また何度か居眠りしそうになったコレットをサポートしつつ、課題を終わらせて授業を乗り切ったあとは部活の時間だ。

「よーっし、授業終わりっと。今日は部活の日だし、部室に行こう。」

 わたわたとカバンに教科書を詰めるコレットを急かし、教室を出て部室へ向かう。
 やはり部活動のある日は部室が使えるから便利だ。部活動がない日の自主練は外でやるしかないからな。
 部室に着いたら、早速戸棚から魔力測定器を引っ張り出してくる。これがないと俺はほとんどすることが無いのだ。

「あ、あの・・・・・・アリスちゃん。」
「どうしたの、コレットちゃん?」

「わ、わたしも測っていい?」
「いいけど・・・・・・前からあんまり時間経ってないし、まだ変わらないと思うよ?」

 ここ数日、コレットは何度も魔力の測定を行っている。
 その度に上がっていない成果を見て落ち込んでいるが、そもそもそんなにすぐ結果に表れるような訓練ではない。
 そう言い聞かせてもいるが、コレットには響いていないようだ。

「そ、それでも・・・・・・測りたいの。」
「分かったよ。すぐに準備するね。」

 机の上に魔力測定器を設置し、前にコレットを立たせる。

「それじゃあ、魔法撃ってみて。」
「・・・・・・”風”っ。」

 視たところ、前とほぼ変わらない威力。
 魔力測定器の針も確認するが、数値も変わっていない。
 隣で数値を見ていたコレットも小さくため息を漏らす。

「ほら、落ち込んでる暇があったら練習だよ、頑張ろう。」
「・・・・・・うん。」

*****

 そして数日後。

「よし、まだ先生来てないね。」

 学校にも慣れてきた俺は、遅刻しないギリギリまで惰眠を貪ることが出来るようにまでなっていた。
 まだ騒がしい教室内を進み、自分の席に着く。

「ちょっと、遅いじゃないテンコーセー!」

 前の席のローレッドがこちらを振り返り、彼女からクラス委員長のような小言を頂戴する。

「それでも間に合ってるから大丈夫だよ。」
「そういう話じゃないわよ・・・・・・もうっ。」

 ローレッドと会話しながら授業の準備をしていると、まだ空席の隣席が目に入った。

「あれ、コレットちゃんは?」
「ワタシが知るわけないでしょっ。」

「まぁ、それもそうか。」

 今日は休みだろうか。珍しいな。
 そもそも多少風邪気味でも家を叩き出されて学校に行かされるような世情だ。
 それでも休むということはよほど具合が悪いのかもしれない。
 そしてとうとうコレットの席が埋まることがないまま、キャサドラ先生が教室に入ってきてしまった。
 先生も教卓に着くなり空席が目に入ったようだ。

「アリューシャさん、コレットさんは?」
「えーっと、まだ来てないので休みかと・・・・・・。」

 電話のような通信用魔道具は一般には普及していないので、こういう時は不便だな。
 ここまで魔道具が発達していたら時間の問題だろうが。

「そうですか・・・・・・では、放課後コレットさんに課題を届けていただけますか?」
「はい、分かりました。」

 コレットの家には何度か招いてもらったこともある。
 優しそうなお母さんと二人で慎ましく暮らしているようだ。父親は亡くなってしまっているらしい。

「って、あの・・・・・・ローレッドちゃん?」

 授業が始まると、ローレッドが俺の席に机をピタリと寄せてきた。

「アンタが寂しいだろうから・・・・・・今日だけよっ。 感謝しなさいよねっ。」
「えー・・・・・・ありがとう?」

 そうしていつものように課題に取り組み、一日の授業が終わった。
 終業を告げる鐘が校舎に鳴り響く。
 ホームルームも終わり、クラスメイトたちはカバンを引っ掴んで我先にと競走馬のように教室を飛び出していく。
 そんな彼らを尻目に、俺はキャサドラ先生からコレットの課題を受け取った。

「それではお願いしますね。」

 受け取った課題をカバンにしまい、出遅れて玄関に向かって歩く。
 それでもまだ廊下はこれから放課後を過ごす生徒たちで賑わっている。
 今日が部活の日でなかったことは幸いだ。
 さすがに一人であの部室は寂しすぎるしな・・・・・・。でも、そう考えると今まではあの部屋にコレット一人だったのか。
 これからもしっかり彼女の力になってやらないとな。

 コレットの家に辿り着くと、ちょうど家の中から二人の大人が出てきた。一人はコレットのお母さんでもう一人は知らない男性。
 すわ、大人の情事かと思ったが、ただの往診医だったようだ。だが医者が来ているということは、そこまで酷い容態なのだろうか。
 コレットの母は、やつれた表情で頭を下げ、往診医を見送った。
 医者と入れ替わりにコレットの母に声を掛ける。

「あの、コレットちゃんのお母さん。コレットちゃん、どうしたんですか?」
「あなたは・・・・・・アリスちゃん・・・・・・?」

「はい、今日の課題を届けにきました。それで、コレットちゃんは?」
「コレットは・・・・・・コレットは・・・・・・うぅ・・・・・・っ!」

 彼女はそれ以上の言葉を紡ぐことが出来ず、泣き崩れてしまったのだった。
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