DTガール!

Kasyta

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BACK TO THE ・・・・・・

00060話「王都の街並み」

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「こ、これが・・・・・・王都?」

 隣の席で窓の外を眺めながらコレットが言葉を漏らした。
 しかしその言葉には感嘆ではなく、落胆の感情が滲んでいる。

 それもそのはず、聳え立つ外壁には圧倒されたものの、王都の街並みはテルナ市の洗練されたそれには見劣りしてしまっていたからだ。
 確かに人通りは多く華やかではあるのだが、道の舗装もされてはいるが少しガタつき、区画整理も甘い。立ち並ぶ建物も設計自体が古めかしい。
 そんな様子に気付いた同乗している護衛の一人が笑いかけてくる。

「ははは、驚いたかい? テルナ市はウチの歴代商会長が長年に渡って社会基盤に私財を投じて下さっているんだよ。」

 つまり、テルナ市はお金マシマシでブーストされており、この王都がこの時代での標準的な都会というわけだ。
 それでも魔道具に魔力を供給するための”マナの樹”とやらは一定間隔で設置されているので、この王都でも魔道具は普通に使えそうである。

 魔導装甲車は人通りの多い道路をゆっくりと進んで行き、貴族街へと入っていく。
 王都大会を行う競技場は貴族街の中にあり、貴族や名のある資産家たちが観戦に来るそうだ。
 下町よりも整然となっているものの、そんな貴族街でもテルナ市の街並みには勝てておらず、改めて自分たちの住んでいる街の凄さを実感した。

「今回の大会は観戦者も多くなりそうだね。」
「そうなんですか?」

「何しろここに都市大会で満点を取った子とその次席が居るしね。ほら、あそこの宿に停めてある馬車の紋章、隣国の貴族のものだよ。きっと君たちを見に来たんじゃないかな。」

 紋章云々は分からないが、俺たちの所為らしい。

「本当にそんな事で観戦者が増えるんですか?」
「都市大会で満点を取れる子なんて、ここ何年も居なかったからね。しかも同じく庶民の子がその次席だ。注目度が高いんだよ。特にお貴族様にはね。」

 この時代の人の魔法の威力を考えればそうなっても仕方ないか。
 貴族より魔力量の多い庶民がポッと出したから見に行こうという感じだろう。

「でもどうしてそんなことが分かるんですか?」
「ははは、こう見えても僕はその貴族の六男坊でね。爵位も稼ぎも低いし家も継げないからこうしてテルナ商会で働かせてもらってるけど・・・・・・こういう場所ではそんなのでも貴族ってだけで役に立つのさ。まぁ、テルナ商会の紋章を見て言いがかりを付けてくる貴族なんて居ないだろうけどね。」

 なるほど、話は通してあるとは言えこうして貴族街を通るのだし、備えあれば憂いなしということか。テルナ商会は人材も豊富らしい。
 だが貴族が大会を見に来ると聞いて、コレットがすくみ上ってしまった。

「大丈夫だよ、コレットちゃん。客席から見られるだけなんだから大したことないって。」
「で、でもぉ・・・・・・。」

「それに、今から緊張してたら大会の日までに疲れ切っちゃうよ。」

 そう、王国大会はまだ数日先。
 それまでは用意された宿で過ごすことになっているのだが――

「お、見えたよ。あそこが君たちの泊まる宿だ。」

 窓越しに傭兵が指す方へ目を向けると、貴族のものにも負けず劣らずの大きな屋敷が建っていた。しかも広い庭まで付いている。
 庭には子供たちのグループが複数おり、それぞれが魔法の練習などを行っているようだ。彼らも王国大会の出場者なのだろう。
 同じ年頃の子たちを見てか、コレットは少し落ち着いたようだった。
 興味深げに魔導装甲車を盗み見る子供たちを後目に敷地内を進む。

「さて、僕たちは一旦ここまでだ。帰る時にまた迎えに来るからね。大会頑張って!」
「はい、ここまでありがとうございました。」

 傭兵たちを見送り、俺たちはキャサドラ先生を先頭に宿の中へと足を踏み入れた。
 玄関は広く、中に入るとすぐに受け付けの人が駆け寄ってくる。

「こちらを。」
「はい、承りました。あちらで少々お待ちください。」

 キャサドラ先生が受け付けの人に書類を渡すと、書類を受け取った受け付けはサッと戻っていった。
 俺たちは言われたとおりに待合所に腰を下ろす。

「こりゃ良い椅子だなぁ。こんな高級宿を貸し切りなんて、テルナ商会ってのはどれだけ儲けてるんだか。」

 カレンがフカフカのソファの具合を確かめながら独り言ちる。
 そう、この宿は王国大会が終わるまでは出場者とその関係者たちの貸し切りとなっているのだ。
 貴族との余計ないざこざが起きないようにとの配慮だろう。
 俺にとってもありがたい。これ以上コレットが委縮しなくて済むしな。

「お待たせ致しました。まずはこちらの大会証をお受け取りください。」

 戻ってきた受け付けの人から大会証と呼ばれたバッヂを受け取り、言われるがまま胸の辺りに付けると、いくつかの説明を受ける。
 宿の敷地の外を歩く際にはこれを付けておく必要があり、大会出場者とその関係者を証明するためのものだそうだ。
 要は、このバッヂを付けていれば貴族街でも無碍な扱いはされないし、便宜も図ってもらえるということである。
 むしろ、このバッヂを付けている限りは下町よりも貴族街で過ごした方が安全ということらしい。

「それでは部屋までご案内致します。」

 受け付けの人に案内され、宿の中を歩いていく。
 そして昇降機に乗り、四階へ。そのフロアの三部屋が俺たちの部屋のようだ。
 部屋割りは俺とカレン、コレットとその母親、そしてキャサドラ先生。

「部屋の鍵はこちらをお使いください。」

 カード型になった鍵を受け取る。こちらは部屋の人数分あるようだ。
 これなら保護者と常に一緒に行動する必要はないだろう。
 皆と別れ、カレンと一緒に割り当てられた部屋に入る。

「おぉ、こりゃスゲェな。」

 広さも調度品も一流の高級宿といった感じだ。ベッドもフカフカで寝心地も大変良さそうである。
 荷物を置き、一息ついたところでカレンに声を掛ける。

「カレンさんはこれからどうします?」
「時間的にはちょうど昼飯時だし、ここの食堂にでも行くかな。」

 ここでの宿泊プランは朝夕のみで、昼食は別料金となっている。
 それでも大会割引きで格安だが。

「昼食はコレットちゃんたちも誘って外に行きませんか? せっかく傭兵さんに美味しい店を教えてもらいましたし。」
「お前・・・・・・よく貴族街なんか出歩く気になるな。」

「ついでにマレルさんたちのお土産も貴族街で良いものを探しましょう。この大会証で割り引きしてくれるところがあるかもしれませんよ。・・・・・・美味しいお酒も飲めるかも。」
「案外図太いなお前・・・・・・。まぁ、お前がそう言うなら行くか!」

 最後の一言が効いたのか、カレンも乗り気になったようだ。
 こうして俺たちは意気揚々と部屋を出たのだった。
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