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Prologue 二つ上の先輩
0ー01 待ち人
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(……なんだか、なぁ)
一人きりの教室で、龍冴は椅子に腰掛けたままゆらゆらと身体を揺らす。
既にクラスメイトらは帰路で、なぜ自分だけがこの場に残っているのかと思う。
それはひとえに『部活が終わるまで待ってて』と、二学年上の男子生徒に言われたからだった。
「遅せぇってのに」
ぽつりと小さく悪態を吐く。
龍冴の座っているところは、丁度親友の席だった。
その親友──雅玖も、バイトがあるからと言っていつもよりひと足早く帰ってしまったのだが。
それでも龍冴の周りには常に人がおり、しかし一時間前には同じクラスの二人が教室を出ていったばかりだ。
その二人も半ばこちらの『告白』を面白がっているふうで、ただあまり自分の事で帰宅を遅らせる訳にもいかず、無理矢理帰らせたと言った方が正しい。
その後、かれこれ一時間は待っているだろうか。
時折窓の外を眺めては、出そうになる欠伸を噛み殺す。
待っている間はゲームをしていたが、いつしかスマホの充電が二十パーセントを切り、帰宅するまでに電源が落ちる事は確実だった。
あまり使っていると電車で暇潰しするものが無くなるため、以降は何をするでもなく、ただぼうっと時計の針を眺めては机に突っ伏し、物思いに耽っている。
この時間が無駄なようで、けれど自分がじんわりと緊張しているのもまた事実だった。
そっと窓の外に視線を向ければ、サッカー部に所属する生徒らが試合をしているのが見える。
今日の昼休みに神妙な面持ちでクラスにやってきた男子生徒が居るらしいが、龍冴にはどこにその生徒が居るのか分からない。
なにぶん、いつもつるんでいる友人以外にも後輩先輩問わず交流があるのだ。
相手と話していなくても、普通の人間に比べて何か飛び抜けているものがあれば視界に入るのだが、龍冴に声を掛けてきた生徒にはそれが無いと感じた。
よく言えば普通、悪く言えばそこらに居るモブ。
しかしその生徒は学年はもちろん教師にも人気があるようで、何かしらの噂やいかにその生徒が『すごいか』という声がそこかしこで聞こえてくる。
(佐野、佐野先輩……だったっけ)
もしくは椰一と呼ばれ、長身でスポーツ万能というのも相俟って目立つ部類らしかった。
けれど龍冴の周りでは噂らしい噂も聞こえてこず、同じ校内に居るというのにその情報の伝達一つ取っても、雲泥の差があるようだ。
そんな椰一から突然話し掛けてきて、且つ『部活が終わってから』何を言うのか、と言われれば考えられるものは一つしかない。
「告白……されんのかな」
はぁ、と今度は小さな溜め息が漏れる。
高校に入ってからというもの、なぜか毎月決まって五人ほど己に告白してくる男女が居るのだ。
多様性という時代であってもここまで声を掛けられ、あまつさえ『好きです』と言われるのは正直なところ困る。
それが一言話しただけの相手であっても、そもそも話したことがない人間から告白される事があった。
(普通に話してるだけ、なんだけど)
けれど初対面の相手に『どんな相手か知りたいし、まずは友達から』と返せば、最悪危害が加わると分かっている。
(振ったら振ったで面倒だし……)
はぁ、と龍冴はまた溜め息を吐く。
一人きりの教室で、龍冴は椅子に腰掛けたままゆらゆらと身体を揺らす。
既にクラスメイトらは帰路で、なぜ自分だけがこの場に残っているのかと思う。
それはひとえに『部活が終わるまで待ってて』と、二学年上の男子生徒に言われたからだった。
「遅せぇってのに」
ぽつりと小さく悪態を吐く。
龍冴の座っているところは、丁度親友の席だった。
その親友──雅玖も、バイトがあるからと言っていつもよりひと足早く帰ってしまったのだが。
それでも龍冴の周りには常に人がおり、しかし一時間前には同じクラスの二人が教室を出ていったばかりだ。
その二人も半ばこちらの『告白』を面白がっているふうで、ただあまり自分の事で帰宅を遅らせる訳にもいかず、無理矢理帰らせたと言った方が正しい。
その後、かれこれ一時間は待っているだろうか。
時折窓の外を眺めては、出そうになる欠伸を噛み殺す。
待っている間はゲームをしていたが、いつしかスマホの充電が二十パーセントを切り、帰宅するまでに電源が落ちる事は確実だった。
あまり使っていると電車で暇潰しするものが無くなるため、以降は何をするでもなく、ただぼうっと時計の針を眺めては机に突っ伏し、物思いに耽っている。
この時間が無駄なようで、けれど自分がじんわりと緊張しているのもまた事実だった。
そっと窓の外に視線を向ければ、サッカー部に所属する生徒らが試合をしているのが見える。
今日の昼休みに神妙な面持ちでクラスにやってきた男子生徒が居るらしいが、龍冴にはどこにその生徒が居るのか分からない。
なにぶん、いつもつるんでいる友人以外にも後輩先輩問わず交流があるのだ。
相手と話していなくても、普通の人間に比べて何か飛び抜けているものがあれば視界に入るのだが、龍冴に声を掛けてきた生徒にはそれが無いと感じた。
よく言えば普通、悪く言えばそこらに居るモブ。
しかしその生徒は学年はもちろん教師にも人気があるようで、何かしらの噂やいかにその生徒が『すごいか』という声がそこかしこで聞こえてくる。
(佐野、佐野先輩……だったっけ)
もしくは椰一と呼ばれ、長身でスポーツ万能というのも相俟って目立つ部類らしかった。
けれど龍冴の周りでは噂らしい噂も聞こえてこず、同じ校内に居るというのにその情報の伝達一つ取っても、雲泥の差があるようだ。
そんな椰一から突然話し掛けてきて、且つ『部活が終わってから』何を言うのか、と言われれば考えられるものは一つしかない。
「告白……されんのかな」
はぁ、と今度は小さな溜め息が漏れる。
高校に入ってからというもの、なぜか毎月決まって五人ほど己に告白してくる男女が居るのだ。
多様性という時代であってもここまで声を掛けられ、あまつさえ『好きです』と言われるのは正直なところ困る。
それが一言話しただけの相手であっても、そもそも話したことがない人間から告白される事があった。
(普通に話してるだけ、なんだけど)
けれど初対面の相手に『どんな相手か知りたいし、まずは友達から』と返せば、最悪危害が加わると分かっている。
(振ったら振ったで面倒だし……)
はぁ、と龍冴はまた溜め息を吐く。
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