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一章 新たな出会い
1‐02 内緒話
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◆◆◆
「──が、りょ……が。龍冴!」
「っ!」
強く肩を揺さぶられ、そこで龍冴の意識が現実に引き戻された。
見れば、雅玖の隣り──龍冴から見れば真正面だ──に座っている永睦が心配そうにこちらを見つめていた。
「どしたの、龍ちゃん。いつもより上の空じゃん?」
肩を揺すってくれたのは己の隣りに座る仁で、龍冴の気持ちを悟ってか幾分か明るく問い掛けてくれる。
「……や、なんもない。なんかごめんな、気ぃ遣ってもらって」
これ以上心配させるのは忍びなくて、へらりと力なく笑う。
雅玖の言葉が発端で、その恋人である幸のことを思い出していたなどあまり言うものではないだろう。
(あの後、幸とは話してなかったし)
雅玖に『付き合ってる人が居るから連れてくる』と言われ、最初は『いつの間に』と思った。
蓋を開けてみれば相手は幸で、まさか親友の恋人に収まっているなど誰が予想出来ただろうか。
そもそも龍冴と幼馴染みであるということは、再会した時になぜか『言うな』と言われている。
疑問に思って尋ねると、幸はこれまで見た事のない顔で言ったのだ。
『俺の黒歴史知ってるだろ。だから嫌なんだ、色々掘り返されるのが』
黒歴史、という言葉で幸が何を言いたいのか確信した。
それと同時に自分がそこまで信用されていないことが悲しくて、しかし当たり障りなく『分かった』と言ったのが、最後だったように思う。
以後、常に誰かが──雅玖が居るため、それ以降は二人で話していないのだが。
思い返せば、顔も名前も知らない『恋人』と幸が付き合ってから、実に三ヶ月。
楽しそうに夏休みの予定をどうするか、恋人と決めている時だったと思う。
梅雨が明けて夏本番になろうとしていたある日、幸が泣きながら龍冴の家に来たのだ。
『浮気、されてたみたいなんだ』
情けないよな、と幸が泣き笑いの表情で小さく呟いた。
聞けばその『恋人』は他にも付き合っている相手が居て、幸が知る限り男女問わず三人は居たらしい。
『上手く隠されたと思ったよ。遊びに行こうって誘ったら、一回家に帰ってから来てくれたんだ。でもすぐ帰ろうとするし、そもそも一緒に帰るのは嫌って言われたな』
はは、と力なく項垂れる幸に、龍冴はなんと答えていいか分からなかった。
こればかりはその人が悪く、幸以外にこの事実を知った人間が居るのなら、どれほど辛くて悲しいだろうか。
幸は悪くないよ、俺が居るから大丈夫だよ、などとすぐに言えたら苦労しない。
けれど終ぞ抱き締めて黙っているしかできず、いつからか幸は家に来なくなり、見掛けても声を掛けてもこちらを見てくれなくなった。
そして幸は通っていた高校から別のところへ編入し、通学時間も合わなくなった。
だからか分からないが、再会した今もぎくしゃくしている部分がある。
(……時間あったら家行ってみよう。追い返されたらされたで、まぁ仕方ないし)
「──あ、そういや噂って知ってる?」
すると永睦が思い出したように口を開いた。
「噂?」
なんだなんだ、と龍冴だけでなく雅玖や仁も興味深そうに目を瞬かせる。
半ば被せ気味になったからか、全員それがおかしくてしばらく笑った。
「はぁ……えーっとな。まぁまぁ内密なお話なんで、皆こっち集まって」
うっすらと目尻に涙を浮かべながら、永睦は立ち上がると教室の隅まで移動する。
「なんだよ、もったいぶってさ」
「はっ、もしや国語の宮島と田村が付き合ったとか!?」
「え、あの二人とうとうそんな仲に……!?」
龍冴はやや呆れ気味に、そこで雅玖や仁が芝居かった口調で言う。
「好き勝手言うなぁ。そこら辺は俺も知らないけど、校内ってのは合ってるんだなこれが」
やがて全員が永睦の傍に集まると、円陣を組んで先程よりもこそこそと小さな声で言った。
「──が、りょ……が。龍冴!」
「っ!」
強く肩を揺さぶられ、そこで龍冴の意識が現実に引き戻された。
見れば、雅玖の隣り──龍冴から見れば真正面だ──に座っている永睦が心配そうにこちらを見つめていた。
「どしたの、龍ちゃん。いつもより上の空じゃん?」
肩を揺すってくれたのは己の隣りに座る仁で、龍冴の気持ちを悟ってか幾分か明るく問い掛けてくれる。
「……や、なんもない。なんかごめんな、気ぃ遣ってもらって」
これ以上心配させるのは忍びなくて、へらりと力なく笑う。
雅玖の言葉が発端で、その恋人である幸のことを思い出していたなどあまり言うものではないだろう。
(あの後、幸とは話してなかったし)
雅玖に『付き合ってる人が居るから連れてくる』と言われ、最初は『いつの間に』と思った。
蓋を開けてみれば相手は幸で、まさか親友の恋人に収まっているなど誰が予想出来ただろうか。
そもそも龍冴と幼馴染みであるということは、再会した時になぜか『言うな』と言われている。
疑問に思って尋ねると、幸はこれまで見た事のない顔で言ったのだ。
『俺の黒歴史知ってるだろ。だから嫌なんだ、色々掘り返されるのが』
黒歴史、という言葉で幸が何を言いたいのか確信した。
それと同時に自分がそこまで信用されていないことが悲しくて、しかし当たり障りなく『分かった』と言ったのが、最後だったように思う。
以後、常に誰かが──雅玖が居るため、それ以降は二人で話していないのだが。
思い返せば、顔も名前も知らない『恋人』と幸が付き合ってから、実に三ヶ月。
楽しそうに夏休みの予定をどうするか、恋人と決めている時だったと思う。
梅雨が明けて夏本番になろうとしていたある日、幸が泣きながら龍冴の家に来たのだ。
『浮気、されてたみたいなんだ』
情けないよな、と幸が泣き笑いの表情で小さく呟いた。
聞けばその『恋人』は他にも付き合っている相手が居て、幸が知る限り男女問わず三人は居たらしい。
『上手く隠されたと思ったよ。遊びに行こうって誘ったら、一回家に帰ってから来てくれたんだ。でもすぐ帰ろうとするし、そもそも一緒に帰るのは嫌って言われたな』
はは、と力なく項垂れる幸に、龍冴はなんと答えていいか分からなかった。
こればかりはその人が悪く、幸以外にこの事実を知った人間が居るのなら、どれほど辛くて悲しいだろうか。
幸は悪くないよ、俺が居るから大丈夫だよ、などとすぐに言えたら苦労しない。
けれど終ぞ抱き締めて黙っているしかできず、いつからか幸は家に来なくなり、見掛けても声を掛けてもこちらを見てくれなくなった。
そして幸は通っていた高校から別のところへ編入し、通学時間も合わなくなった。
だからか分からないが、再会した今もぎくしゃくしている部分がある。
(……時間あったら家行ってみよう。追い返されたらされたで、まぁ仕方ないし)
「──あ、そういや噂って知ってる?」
すると永睦が思い出したように口を開いた。
「噂?」
なんだなんだ、と龍冴だけでなく雅玖や仁も興味深そうに目を瞬かせる。
半ば被せ気味になったからか、全員それがおかしくてしばらく笑った。
「はぁ……えーっとな。まぁまぁ内密なお話なんで、皆こっち集まって」
うっすらと目尻に涙を浮かべながら、永睦は立ち上がると教室の隅まで移動する。
「なんだよ、もったいぶってさ」
「はっ、もしや国語の宮島と田村が付き合ったとか!?」
「え、あの二人とうとうそんな仲に……!?」
龍冴はやや呆れ気味に、そこで雅玖や仁が芝居かった口調で言う。
「好き勝手言うなぁ。そこら辺は俺も知らないけど、校内ってのは合ってるんだなこれが」
やがて全員が永睦の傍に集まると、円陣を組んで先程よりもこそこそと小さな声で言った。
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