【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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一章 新たな出会い

1‐07 双子の弟

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「……や、覚えるだけだから。それよりゆうは? あいつの方が必要だと思うけど」

 視線はノートに向けたまま、ぽそりと呟く。

 そこには双子の弟がおり、せっかく高校に進学したというのにほとんど行っていなかった。

 何が理由でこうなったのか分からないが、原因はなんとなく分かる。

 龍冴は龍冴で仲の良い友人が何十人と居るが、双子の弟には友人と呼べる人間が居るのか。

(確か中学の時だっけ)

 中学二年の頃、優が泣きながら帰ってきた時があった。

 理由を聞いても教えてくれず、桜雅であっても頑として口を開かなかったという。

 両親は両親で優を可哀想に思いこそすれ、優の心が落ち着くことを待った。

 やや放任主義な部分があるが、どちらも心の奥底では心配していたのだと思う。

 けれどそれが駄目だったのか、優はこの日以降学校に行かなくなった。

 無理に行こうと誘っても発作が出るか、頑なに部屋の中に閉じ籠もるため家族の誰もが強く言えなかった。

 けれど高校受験をしたいと言ったのは優で、それはそれは誕生日やクリスマスの祝い事のように喜んだ。

 ただ、優は入学して一ヶ月経たずでまた部屋に閉じ籠もるようになった。

 さすがに何があったのか本人の口から聞きたくて、無理を言って部屋に入れてもらったのがつい二ヶ月前。

『……僕はおかしいんだってさ』

 優は幼い子供のような、高い声音で言った。

 それは久しぶりに聞く声で、どこか懐かしさすら覚えたものだ。

 ただ、顔色は日に当たっていないから青白く、場合によっては死人のようにも見える。

 加えて母親が作ってくれた食事もあまり食べていないようで、大きめの服から覗く手首はほっそりとしていた。

『この声も、見た目も、女みたいなんだって。……そう言われた』

 進学先は龍冴とは違い、家から自転車で二十分ほどの高校だった。

 入学当初は何もなく、かといって高校のオリエンテーションを過ぎてからも、目立ったことは言われなかった。

 元々学年ごとの生徒数が三クラスと少なく、男女問わず別け隔てなく接してくれているという。

 けれど中学の事がフラッシュバックし、時として幻聴が聞こえてくるらしい。

 同じクラスになった誰かが優の心を傷付けた、という最悪の事態にならなかっただけマシだが、それでも心の傷はすぐには癒えないようだ。

 今も部屋に引き籠もり、しかし食事の時間になると顔を見せてくれるため進歩した方だと思いたかった。

「……俺も教えようとしたんだよ、本当に。でもいらない、龍冴や他の友達のところに行って、って追い出されちゃった」

 はは、と桜雅が明るく言う。

「一応頭いいんだけどなぁ」

 どうしたもんかなぁ、と背後に手を突いて小さくぼやく。

 努めて暗い雰囲気にならないようにしてくれているようで、しかし本音ではどうにかしたいのだろう。

 その証拠に、龍冴や同級生らに対して必要以上に距離が近いのも、何もできない自分に対する劣等感から故か。

「ま、時間だよな。結局」

 兄に対して囁いた言葉が聞こえたのか怪しいものの、応える変わりに桜雅の肩が己のそれに触れる。

 桜雅が来るまでは椰一や幸のことを考えていたが、こちらは椰一に聞けばすぐに分かる。

 結局のところ、その勇気が無いだけだと結論付けたが優に関する懸念には、しばらくの間悩まされそうだった。
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