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一章 新たな出会い
1‐09 疑いたくない
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「翔哉ちゃんには会いたいけど、なぁ」
龍冴はちらりと背後を振り返る。
ドアを一枚隔てた先では桜雅が聞き耳を立てているかもしれず、もし頷けば必死に止めにくるだろう。
(普通の友達だってのに)
過保護さが度を過ぎると鬱陶しいこと極まりなく、けれどこれ以上人と会うのは億劫だった。
「俺もいいや。二人の邪魔しちゃ悪いし」
雅玖は雅玖で翔哉のことをあまり知らないためだが、その言葉は紛ことなき本音なのだろう。
実際、翔哉は仁以上に明るくてよく気が付く。
話せば楽しいが、ずっと一緒に居るとその陽気に充てられるのは否定できない。
(あとは単に弱いところを見せたくない)
こればかりは龍冴の我儘でしかないが、身内以外で気を許せる相手は雅玖しかいなくなっているのだ。
話を聞いて欲しいのもあるが、あまり家にもいたくないのが本音だった。
「そっか。──お、もう返信来た。時間合ったらまた会おうって」
龍冴が考えているうちにメッセージを送っていたようで、仁はもちろん翔哉も気にしていないようでひとまず安堵する。
その後、桜雅から何通も送られてくるメッセージを無視し、果てには電話も掛けてくるためさすがに電源を切った。
「えげつねぇな……」
雅玖の心から引いている声を聞き流しながら、ほとほと呆れ返る。
昨年の今頃、ストーカー紛いの事をされてから龍冴が一人であれ、友人とであれどこかへ行くとなるとこれだ。
終いには桜雅自身が不審者よろしく尾行してきたのだから、その時は恐怖やら呆れやらで公衆の面前など関係なく普通に怒った。
以後、普段の服装で一定の距離を保って見守るか、こうして追いメッセージや電話を掛けてくるかのどちらかになったのだが。
(帰ったら殴ろう)
こういうのは止めろ、と言っても一切聞いてくれないため、顔を叩くくらいしないとこちらの気が済まない。
多少腫れても腹が立つほど顔がいいからか、そもそもあまりダメージは負っていないのが二重で苛立つのだが。
それでも一時的にであれ鬱陶しい男から解放され、二人と動画配信やバラエティ、ゲームなどの他愛もない話をしながら歩いていると駅に着くのはすぐだった。
「あ、俺こっちから行くわ。じゃあな!」
丁度駅の反対側に繋がる交差点の信号が変わると、仁は早口に言ってやや小走りで渡っていく。
「俺らも行くか」
「ん」
駅の手前にあるビルに入ると、すぐに書店の出入り口が出迎えた。
この奥に文房具屋が併設されており、ひとまず目的のものを買うために一度別れる。
「……っていってもなぁ」
その場の成り行きで来たはいいものの、雅玖はこちらが何か言うよりも早く奥の店に向かっていった。
書店のフロアが大部分を占めているため、自身もそちらに向かうのは気が引ける。
そもそもコンビニや百均でもノートやマーカーは買えるため、実際買うとなるとどこでもいいのが本音だ。
「とりあえず送っておくか」
携帯の電源を入れ、薄目で画面を見る。
桜雅からのメッセージや着信履歴がうっすら見えたが、気付いていないことにして通知を消した。
──オススメの本コーナーのとこにいる。ゆっくり来てくれていいから。
そうメッセージアプリに打ち込むと、龍冴はやや気もそぞろになりつつ、そこかしこで平積みされている本を横目に歩く。
正直なところ、書店や文房具屋の独特な空気感は好きな方だ。
けれど今は気になった書籍を手に取る気にも、また何かを買う気にはなれなかった。
それもこれも、気を抜けば頭の中に椰一の残像が浮かんでは消えるからだった。
ここ数日、自分でもずっと上の空だという自覚はある。
──その先輩は初対面でも性別とか関係なく声掛けまくってるらしい。んで、もっとタチ悪いのが『付き合ってるのは内緒』って言うんだと。
永睦の言葉を気にしないようにしていても、フラッシュバックしてしまうのはいっそ病的なのではないか。
そう思ってしまうのと同じくして、椰一のことを疑ってしまうのはおかしいと思う。
龍冴はちらりと背後を振り返る。
ドアを一枚隔てた先では桜雅が聞き耳を立てているかもしれず、もし頷けば必死に止めにくるだろう。
(普通の友達だってのに)
過保護さが度を過ぎると鬱陶しいこと極まりなく、けれどこれ以上人と会うのは億劫だった。
「俺もいいや。二人の邪魔しちゃ悪いし」
雅玖は雅玖で翔哉のことをあまり知らないためだが、その言葉は紛ことなき本音なのだろう。
実際、翔哉は仁以上に明るくてよく気が付く。
話せば楽しいが、ずっと一緒に居るとその陽気に充てられるのは否定できない。
(あとは単に弱いところを見せたくない)
こればかりは龍冴の我儘でしかないが、身内以外で気を許せる相手は雅玖しかいなくなっているのだ。
話を聞いて欲しいのもあるが、あまり家にもいたくないのが本音だった。
「そっか。──お、もう返信来た。時間合ったらまた会おうって」
龍冴が考えているうちにメッセージを送っていたようで、仁はもちろん翔哉も気にしていないようでひとまず安堵する。
その後、桜雅から何通も送られてくるメッセージを無視し、果てには電話も掛けてくるためさすがに電源を切った。
「えげつねぇな……」
雅玖の心から引いている声を聞き流しながら、ほとほと呆れ返る。
昨年の今頃、ストーカー紛いの事をされてから龍冴が一人であれ、友人とであれどこかへ行くとなるとこれだ。
終いには桜雅自身が不審者よろしく尾行してきたのだから、その時は恐怖やら呆れやらで公衆の面前など関係なく普通に怒った。
以後、普段の服装で一定の距離を保って見守るか、こうして追いメッセージや電話を掛けてくるかのどちらかになったのだが。
(帰ったら殴ろう)
こういうのは止めろ、と言っても一切聞いてくれないため、顔を叩くくらいしないとこちらの気が済まない。
多少腫れても腹が立つほど顔がいいからか、そもそもあまりダメージは負っていないのが二重で苛立つのだが。
それでも一時的にであれ鬱陶しい男から解放され、二人と動画配信やバラエティ、ゲームなどの他愛もない話をしながら歩いていると駅に着くのはすぐだった。
「あ、俺こっちから行くわ。じゃあな!」
丁度駅の反対側に繋がる交差点の信号が変わると、仁は早口に言ってやや小走りで渡っていく。
「俺らも行くか」
「ん」
駅の手前にあるビルに入ると、すぐに書店の出入り口が出迎えた。
この奥に文房具屋が併設されており、ひとまず目的のものを買うために一度別れる。
「……っていってもなぁ」
その場の成り行きで来たはいいものの、雅玖はこちらが何か言うよりも早く奥の店に向かっていった。
書店のフロアが大部分を占めているため、自身もそちらに向かうのは気が引ける。
そもそもコンビニや百均でもノートやマーカーは買えるため、実際買うとなるとどこでもいいのが本音だ。
「とりあえず送っておくか」
携帯の電源を入れ、薄目で画面を見る。
桜雅からのメッセージや着信履歴がうっすら見えたが、気付いていないことにして通知を消した。
──オススメの本コーナーのとこにいる。ゆっくり来てくれていいから。
そうメッセージアプリに打ち込むと、龍冴はやや気もそぞろになりつつ、そこかしこで平積みされている本を横目に歩く。
正直なところ、書店や文房具屋の独特な空気感は好きな方だ。
けれど今は気になった書籍を手に取る気にも、また何かを買う気にはなれなかった。
それもこれも、気を抜けば頭の中に椰一の残像が浮かんでは消えるからだった。
ここ数日、自分でもずっと上の空だという自覚はある。
──その先輩は初対面でも性別とか関係なく声掛けまくってるらしい。んで、もっとタチ悪いのが『付き合ってるのは内緒』って言うんだと。
永睦の言葉を気にしないようにしていても、フラッシュバックしてしまうのはいっそ病的なのではないか。
そう思ってしまうのと同じくして、椰一のことを疑ってしまうのはおかしいと思う。
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