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二章 その後の俺は
2‐11 過保護な兄
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華月と共に昇降口へ向かうと、龍冴の願いが届いたのか生徒の影はまばらだった。
「お兄さん、来てるんでしょ」
確か、と華月が言う。
桜雅に会ってみたい、という欲求をかすかに感じ取り、龍冴はぼそりと吐息混じりに呟いた。
「家でも顔合わせるし、正直迎えなんていらないんだけどな」
こちらのためを思ってくれるのはありがたいが、改めて桜雅が待っているとなると憂鬱だった。
可愛い弟のため、と言って世話を焼いてくるのは鬱陶しくて堪らない。
その矛先が身内以外に向けば、と思うものの桜雅が誰かと仲良さそうに話している姿も見た事がなく、また恋人が居る気配も無い。
すべて本人に聞けば分かることだが、下手すれば面倒な事になるため聞けずにいた。
「ツンデレだねぇ」
ふふふ、と華月が小さく笑う。
「違……っ」
違う、と言おうとしたものの、第三者から指摘されるとそうとも言い切れないのが悔しい。
「ちが、わない……と、おもう」
最後の方はぼそぼそと尻窄みしてしまったが、そんな龍冴の反応がおかしかったのか、しばらくの間華月の控えめな笑い声が響く。
「っもういいだろ、行くぞ」
さすがにいたたまれなくて、半ば腕を引っ張る形で華月と共に昇降口を出る。
桜雅の乗る某ブランドの黒い車を探すも、校門には停めていないようだった。
苛立ちが大きくなる中、今一度メッセージアプリを開く。
『車停めてくるね!』
どうやら学校から百メートルほど先にある、教職員専用の駐車場へ向かったらしい。
生徒の保護者も使ってもいいが、それは三者面談や呼び出された時のみと限定的だ。
もちろん桜雅が知らないはずはないだろうが、ただテスト終わりの弟を迎えに来たとなると思うところがあったのだろう。
(二度手間って分かってんのかな、あの馬鹿)
ほんの少し見直しそうになったものの、理由がなんであれやはり面倒臭い。
もし龍冴が丁度学校を出たところで、改めて駐車場へ向かうことになると頭に入っていなかったのだろうか。
「みーつけたっ」
そんなことを思っていると、背後からいやに現実味のある声が響いた。
「ひぁ!?」
ぽん、と両肩を誰かに叩かれ、図らずも普段より一段回高い声が出る。
「……って、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど」
見れば文字通り桜雅が居て、まさかここまでの反応が返ってくるとは思わなかったようで目を丸くしている。
「よしよし、ごめんね」
しかしすぐにぎゅうと抱き締められ、そこで龍冴の中の何かがぷつりと切れた。
「くっつくな鬱陶しい! あと暑苦しいんだわ、馬鹿桜雅!」
火事場の馬鹿力とはこういう事を言うのか、それともすぐに逃げられるように拘束を緩めていたのか、前に回されている桜雅の腕を摑むとすぐに離れられた。
華月の前ということも忘れて、頭に浮かんだ言葉を感情ごとぶつける。
「来るなっつってるのに来るし、待ってろって言ったらどっか行ってるし、なんなんだアンタ! 自由人でももっとマシな行動取るだろ、アンタの好きなうさぎちゃんの方が落ち着いてるわ!」
「わぁ、りょーちゃんが怒ったぁ」
桜雅は桜雅であまり効いていないのか、終始笑顔で拍手している。
その仕草すら苛立ちを増幅させるには十分過ぎて、しかし視界の端に華月が映ったからかなんとか平静を取り戻そうと試みた。
深く長く深呼吸して、空気を肺いっぱいに吸い込む。
「はぁ……疲れた」
わずかにだが苛立ちが落ち着いき、しかし目の前で未だにへらへらと笑っている男に向けて吐き捨てた。
「やっぱアレなし。一人で帰れ、馬鹿桜雅」
行くぞ、と昇降口を出る時と同じく華月の手を引こうとした。
「俺、こっちなんだ」
けれどわずかに早く、ごめんと華月がやや申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる。
そちらはバス停がある方面で、丁度駅から逆方向の所だった。
「あー……じゃあ丁度いい。そこの馬鹿に乗せてってもらって」
そこ、と桜雅を指さす。
「うん?」
指し示された桜雅は緩く首を傾げるが、しかし何を言いたいのか分かってくれたようだ。
「お兄さん、来てるんでしょ」
確か、と華月が言う。
桜雅に会ってみたい、という欲求をかすかに感じ取り、龍冴はぼそりと吐息混じりに呟いた。
「家でも顔合わせるし、正直迎えなんていらないんだけどな」
こちらのためを思ってくれるのはありがたいが、改めて桜雅が待っているとなると憂鬱だった。
可愛い弟のため、と言って世話を焼いてくるのは鬱陶しくて堪らない。
その矛先が身内以外に向けば、と思うものの桜雅が誰かと仲良さそうに話している姿も見た事がなく、また恋人が居る気配も無い。
すべて本人に聞けば分かることだが、下手すれば面倒な事になるため聞けずにいた。
「ツンデレだねぇ」
ふふふ、と華月が小さく笑う。
「違……っ」
違う、と言おうとしたものの、第三者から指摘されるとそうとも言い切れないのが悔しい。
「ちが、わない……と、おもう」
最後の方はぼそぼそと尻窄みしてしまったが、そんな龍冴の反応がおかしかったのか、しばらくの間華月の控えめな笑い声が響く。
「っもういいだろ、行くぞ」
さすがにいたたまれなくて、半ば腕を引っ張る形で華月と共に昇降口を出る。
桜雅の乗る某ブランドの黒い車を探すも、校門には停めていないようだった。
苛立ちが大きくなる中、今一度メッセージアプリを開く。
『車停めてくるね!』
どうやら学校から百メートルほど先にある、教職員専用の駐車場へ向かったらしい。
生徒の保護者も使ってもいいが、それは三者面談や呼び出された時のみと限定的だ。
もちろん桜雅が知らないはずはないだろうが、ただテスト終わりの弟を迎えに来たとなると思うところがあったのだろう。
(二度手間って分かってんのかな、あの馬鹿)
ほんの少し見直しそうになったものの、理由がなんであれやはり面倒臭い。
もし龍冴が丁度学校を出たところで、改めて駐車場へ向かうことになると頭に入っていなかったのだろうか。
「みーつけたっ」
そんなことを思っていると、背後からいやに現実味のある声が響いた。
「ひぁ!?」
ぽん、と両肩を誰かに叩かれ、図らずも普段より一段回高い声が出る。
「……って、ごめん。驚かせるつもりはなかったんだけど」
見れば文字通り桜雅が居て、まさかここまでの反応が返ってくるとは思わなかったようで目を丸くしている。
「よしよし、ごめんね」
しかしすぐにぎゅうと抱き締められ、そこで龍冴の中の何かがぷつりと切れた。
「くっつくな鬱陶しい! あと暑苦しいんだわ、馬鹿桜雅!」
火事場の馬鹿力とはこういう事を言うのか、それともすぐに逃げられるように拘束を緩めていたのか、前に回されている桜雅の腕を摑むとすぐに離れられた。
華月の前ということも忘れて、頭に浮かんだ言葉を感情ごとぶつける。
「来るなっつってるのに来るし、待ってろって言ったらどっか行ってるし、なんなんだアンタ! 自由人でももっとマシな行動取るだろ、アンタの好きなうさぎちゃんの方が落ち着いてるわ!」
「わぁ、りょーちゃんが怒ったぁ」
桜雅は桜雅であまり効いていないのか、終始笑顔で拍手している。
その仕草すら苛立ちを増幅させるには十分過ぎて、しかし視界の端に華月が映ったからかなんとか平静を取り戻そうと試みた。
深く長く深呼吸して、空気を肺いっぱいに吸い込む。
「はぁ……疲れた」
わずかにだが苛立ちが落ち着いき、しかし目の前で未だにへらへらと笑っている男に向けて吐き捨てた。
「やっぱアレなし。一人で帰れ、馬鹿桜雅」
行くぞ、と昇降口を出る時と同じく華月の手を引こうとした。
「俺、こっちなんだ」
けれどわずかに早く、ごめんと華月がやや申し訳なさそうに顔の前で手を合わせる。
そちらはバス停がある方面で、丁度駅から逆方向の所だった。
「あー……じゃあ丁度いい。そこの馬鹿に乗せてってもらって」
そこ、と桜雅を指さす。
「うん?」
指し示された桜雅は緩く首を傾げるが、しかし何を言いたいのか分かってくれたようだ。
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