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三章 優しくしないで
3‐06 聞くのが怖い
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龍冴は無意識に閉じていた瞼を上げ、壁をじっと見る。
壁一枚を隔てたそこは優の部屋だ。
日中は何をしているのか分からないものの、双子であっても性格が違うため、仮に相談したとしても解決には至らないと思う。
上手い言葉はおろか、むしろ『龍冴はどう思ってるの?』と逆に聞いてくるだろう。
(……そりゃあ)
好き、だと思う。
その感情が『男』としてなのか『友人』としてなのかは曖昧で、いずれにせよはっきりとしない。
けれど自分に好意を抱いてくる人間は、常に一方的だった。
告白される度に相手に悪いから、と無意識に一線を引いて『友達から』と言ってきた。
それでも中には話を聞いていない者が居たのは事実で、そういう時は雅玖を始め仲のいい友人に助けてもらっていたのだが。
もし大和から好意を抱かれ、告白された時はなんと返すのだろうか。
いや、考えずとも分かっている。
大和のことを考える度に、どうしてか胸の奥が甘く疼くのだ。
出会ってからそう時間は経っていないのに、しかし一目惚れというには少し違う気がする。
この想いが恋でないならなんと呼ぶのか、そこまでの語彙力を持ち合わせていないため、形容しようがないのが悔しい。
「あー……、もうっ」
もやもやとした思いでどうにかなってしまいそうで、龍冴は布団にくるまったままごろりと寝返りを打つ。
思い返せば子供のように泣きじゃくり、あまつさえ『傍に居て欲しい』に近いニュアンスの言葉を言った気がする。
けれど大和は何も言わず抱き締めてくれ、落ち着くまで背中を擦ってくれた。
ただの後輩にするには優し過ぎて、このままでは勘違いしてしまいそうになるほどだ。
けれど大和には『恋人』が居るかもしれず、そうだとすればその相手に悪い。
もちろん、何気ない話に混ぜてアイコンの相手は誰なのか聞けばすぐに解決するのだが、いかんせんそこまでの勇気はとうになかった。
「──りょーがぁ?」
するとノックの音と共に間延びした声が聞こえ、龍冴はもそもそと布団から顔だけを出した。
「……なに」
この声は桜雅だと分かっている。
先程までは誰かに聞いて欲しかったのに、いざ帰宅したのが分かると鬱陶しく感じてしまうのはなぜなのか。
「あ、よかった。帰ってたんだね」
やはり予想通り、にこにこと笑みを浮かべながら桜雅がドアから顔を覗かせ、部屋に入ってくる。
「スマホ見てなかったでしょ」
頬に笑みをたたえたまま、桜雅がやや怒った口調で続けた。
「なんか送った……?」
こちらを責める口調ながらも、その内容は高確率でくだらないと知っている。
だからか自然と低い声が出るのはやむを得ず、けれど桜雅は嬉々として唇を開く。
「なんだと思う?」
「知らん」
壁一枚を隔てたそこは優の部屋だ。
日中は何をしているのか分からないものの、双子であっても性格が違うため、仮に相談したとしても解決には至らないと思う。
上手い言葉はおろか、むしろ『龍冴はどう思ってるの?』と逆に聞いてくるだろう。
(……そりゃあ)
好き、だと思う。
その感情が『男』としてなのか『友人』としてなのかは曖昧で、いずれにせよはっきりとしない。
けれど自分に好意を抱いてくる人間は、常に一方的だった。
告白される度に相手に悪いから、と無意識に一線を引いて『友達から』と言ってきた。
それでも中には話を聞いていない者が居たのは事実で、そういう時は雅玖を始め仲のいい友人に助けてもらっていたのだが。
もし大和から好意を抱かれ、告白された時はなんと返すのだろうか。
いや、考えずとも分かっている。
大和のことを考える度に、どうしてか胸の奥が甘く疼くのだ。
出会ってからそう時間は経っていないのに、しかし一目惚れというには少し違う気がする。
この想いが恋でないならなんと呼ぶのか、そこまでの語彙力を持ち合わせていないため、形容しようがないのが悔しい。
「あー……、もうっ」
もやもやとした思いでどうにかなってしまいそうで、龍冴は布団にくるまったままごろりと寝返りを打つ。
思い返せば子供のように泣きじゃくり、あまつさえ『傍に居て欲しい』に近いニュアンスの言葉を言った気がする。
けれど大和は何も言わず抱き締めてくれ、落ち着くまで背中を擦ってくれた。
ただの後輩にするには優し過ぎて、このままでは勘違いしてしまいそうになるほどだ。
けれど大和には『恋人』が居るかもしれず、そうだとすればその相手に悪い。
もちろん、何気ない話に混ぜてアイコンの相手は誰なのか聞けばすぐに解決するのだが、いかんせんそこまでの勇気はとうになかった。
「──りょーがぁ?」
するとノックの音と共に間延びした声が聞こえ、龍冴はもそもそと布団から顔だけを出した。
「……なに」
この声は桜雅だと分かっている。
先程までは誰かに聞いて欲しかったのに、いざ帰宅したのが分かると鬱陶しく感じてしまうのはなぜなのか。
「あ、よかった。帰ってたんだね」
やはり予想通り、にこにこと笑みを浮かべながら桜雅がドアから顔を覗かせ、部屋に入ってくる。
「スマホ見てなかったでしょ」
頬に笑みをたたえたまま、桜雅がやや怒った口調で続けた。
「なんか送った……?」
こちらを責める口調ながらも、その内容は高確率でくだらないと知っている。
だからか自然と低い声が出るのはやむを得ず、けれど桜雅は嬉々として唇を開く。
「なんだと思う?」
「知らん」
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