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三章 優しくしないで
3‐07 相談
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自室に入ってから携帯はベッドサイドに置くのが常だが、通知が来ればある程度は気付く。
けれど今の今まで何をするにも億劫で、しかし通知が来た気配はないと思うのだ。
「華月くんと写真撮ったんだよ」
「は?」
龍冴の言葉を華麗に無視すると、桜雅はベッドの縁に座って携帯の画面を見せてくる。
そこにはぎこちなく笑ってピースをする華月と、満面の笑みを浮かべた桜雅が写っていた。
強引に肩を組まれたのか、密着した身体で桜雅との体格差がはっきりと分かる。
(カツアゲしてるみたい、って言ったらキレられそうだな)
そこらの同性に比べると桜雅は細い部類だが、それよりも華奢な華月と並ぶとどうしてかそんな感想が浮かぶ。
家での態度、特に怒った時の兄の姿をよく知っているからか、しかし口に出す前になんとか耐えた。
多少気持ちが落ち着いてきたというのに、不用意なことを言ってまた面倒な事が増えてしまうのは避けたい。
「……うわ」
自分の写真フォルダから見せてくれたのか、下の画像欄を見ると角度や表情を変えつつ何枚も撮っているようだった。
「一番いいの送ったんだけどなぁ。俺達こんなに仲良くなりましたー、って」
「……よかったな」
にこにこと嬉しそうな兄を見ていると、最早普段の毒舌を吐く気力すらなく、ようやっとそれだけを絞り出す。
よもやそれだけのために部屋に入って来られたとなると、いない方がマシだとさえ思った。
(こっちは色々考えてるってのに……!)
明日の試験勉強はもちろん、椰一や大和のことで既に脳内はいっぱいだった。
叶うことならば一人にして欲しくて、しかし願ってもない『話を聞いてくれる相手』が桜雅だというのは不安もあった。
「元気ないねぇ」
「っ、いやそんなこと」
ふと放たれた桜雅の言葉に動揺し、けれど何事もなかったようにこちらに袋を差し出してくる。
「何これ」
好奇心の方が打ち勝ち、布団から出るとそんな弟に桜雅は笑みを深めた。
手渡されたものは大型百貨店の紙袋で、中には高級そうな箱が入っている。
「華月くんがね、お土産くれたんだ。いやぁ、いい子だよねあの子。さすが、りょーちゃんの友達っていうか」
ねぇ、と緩く首を傾げてこちらを見てくるさまに、転じて龍冴の頬が軽く引き攣った。
(あ、これ駄目だな)
一度でも相手のことを気に入れば、自分の気が済むまで絡むのが常だ。
多少のスキンシップはもちろん、桜雅がいいと思えば『そういう事』も視野に入る──らしい。
こちらとしては兄の事情や趣味にとやかく言いたくはないが、さすがに華月は駄目だ。
「……あいつだけは止めた方がいいと思う」
「え、なぁに?」
ぽつりと囁いた言葉は聞こえなかったのか、はたまた知らないふりをしているのか判然としない。
けれど華月だけはいけない、なぜかそう思った。
「いや、なんでもない。……それよりさ、兄さん」
「不意打ちで兄さんって呼ぶのやめて」
「やっぱ聞こえてたんじゃねぇか」
先程よりもごく小さな声で言ったが、どうやらあえて聞こえないふりをしていたようだ。
そんな兄に呆れつつも、龍冴は意を決して唇を開く。
「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど大丈夫、かな」
すると、それまでののほほんとしていた表情とは一変して、桜雅の瞳がかすかに鋭くなった。
「なんでも言ってみな」
低く短く言うと、桜雅はベッドの端からフローリングのマットレスへと座り直す。
龍冴はベッドの上に改めて座り、向かい合わせの形になる。
真正面からじっと兄の瞳を受けながら、今日あった出来事を掻い摘んで話した。
けれど今の今まで何をするにも億劫で、しかし通知が来た気配はないと思うのだ。
「華月くんと写真撮ったんだよ」
「は?」
龍冴の言葉を華麗に無視すると、桜雅はベッドの縁に座って携帯の画面を見せてくる。
そこにはぎこちなく笑ってピースをする華月と、満面の笑みを浮かべた桜雅が写っていた。
強引に肩を組まれたのか、密着した身体で桜雅との体格差がはっきりと分かる。
(カツアゲしてるみたい、って言ったらキレられそうだな)
そこらの同性に比べると桜雅は細い部類だが、それよりも華奢な華月と並ぶとどうしてかそんな感想が浮かぶ。
家での態度、特に怒った時の兄の姿をよく知っているからか、しかし口に出す前になんとか耐えた。
多少気持ちが落ち着いてきたというのに、不用意なことを言ってまた面倒な事が増えてしまうのは避けたい。
「……うわ」
自分の写真フォルダから見せてくれたのか、下の画像欄を見ると角度や表情を変えつつ何枚も撮っているようだった。
「一番いいの送ったんだけどなぁ。俺達こんなに仲良くなりましたー、って」
「……よかったな」
にこにこと嬉しそうな兄を見ていると、最早普段の毒舌を吐く気力すらなく、ようやっとそれだけを絞り出す。
よもやそれだけのために部屋に入って来られたとなると、いない方がマシだとさえ思った。
(こっちは色々考えてるってのに……!)
明日の試験勉強はもちろん、椰一や大和のことで既に脳内はいっぱいだった。
叶うことならば一人にして欲しくて、しかし願ってもない『話を聞いてくれる相手』が桜雅だというのは不安もあった。
「元気ないねぇ」
「っ、いやそんなこと」
ふと放たれた桜雅の言葉に動揺し、けれど何事もなかったようにこちらに袋を差し出してくる。
「何これ」
好奇心の方が打ち勝ち、布団から出るとそんな弟に桜雅は笑みを深めた。
手渡されたものは大型百貨店の紙袋で、中には高級そうな箱が入っている。
「華月くんがね、お土産くれたんだ。いやぁ、いい子だよねあの子。さすが、りょーちゃんの友達っていうか」
ねぇ、と緩く首を傾げてこちらを見てくるさまに、転じて龍冴の頬が軽く引き攣った。
(あ、これ駄目だな)
一度でも相手のことを気に入れば、自分の気が済むまで絡むのが常だ。
多少のスキンシップはもちろん、桜雅がいいと思えば『そういう事』も視野に入る──らしい。
こちらとしては兄の事情や趣味にとやかく言いたくはないが、さすがに華月は駄目だ。
「……あいつだけは止めた方がいいと思う」
「え、なぁに?」
ぽつりと囁いた言葉は聞こえなかったのか、はたまた知らないふりをしているのか判然としない。
けれど華月だけはいけない、なぜかそう思った。
「いや、なんでもない。……それよりさ、兄さん」
「不意打ちで兄さんって呼ぶのやめて」
「やっぱ聞こえてたんじゃねぇか」
先程よりもごく小さな声で言ったが、どうやらあえて聞こえないふりをしていたようだ。
そんな兄に呆れつつも、龍冴は意を決して唇を開く。
「ちょっと聞いてほしいことがあるんだけど大丈夫、かな」
すると、それまでののほほんとしていた表情とは一変して、桜雅の瞳がかすかに鋭くなった。
「なんでも言ってみな」
低く短く言うと、桜雅はベッドの端からフローリングのマットレスへと座り直す。
龍冴はベッドの上に改めて座り、向かい合わせの形になる。
真正面からじっと兄の瞳を受けながら、今日あった出来事を掻い摘んで話した。
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