【完結】俺とあの人の青い春

月城雪華

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三章 優しくしないで

3‐12 約束です

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「んじゃ、ここらで分かれるかぁ」

 大和の間延びした声が後に続く。

 学年ごとに棟が違うため、どう足掻いても大和と話せるのは試験が終わってからになる。

 メッセージアプリで繋がっているため顔を合わせずとも話せるが、すべてを文章で言語化出来る自信はない。

 あまりに聞きたいことが多過ぎて、しかし引き止めていいものかぐるぐると考える。

 もし面倒だと思われたり曖昧に濁されでもしたら、今度は試験どころではなくなってしまう──まだ何も言っていないのに、そんな予感がした。

(早く言え、早く……!)

 こうしている間にも大和を待たせていると思うと、罪悪感と使命感にも似た感情がぜになり、加えてせっかく勉強した試験範囲を忘れてしまいそうだった。

「どした、雨宮?」

「っ」

 ふと肩にぬくもりが触れ、それに伴って身体が揺れる。

 見れば、淡く微笑んでいる青年と視界が交わった。

(……そもそも先輩はこんなこと言わない、気がする)

 これまでの諸々もろもろはすべて己の考え過ぎで、端から心配する必要はないのだ。

 そう、大和の優しげな瞳が言っていた。

 ──大丈夫だよ。

 同時にそんな声が聞こえた気がして、龍冴はきゅうと唇を噛み締める。

「試験終わったら、その……ここで、待っててくれますか」

 語尾の方は思ったよりもか細くなってしまったが、大和がふっと笑った気配がした。

 肩に大和の手が触れているため、次第に速くなる心臓の音が聞こえてしまわないか不安になる。

「いいよ」

 しかし龍冴の思いに反して、はっきりと大和の声が脳内に響いた。

「や、やっぱ嫌ですよね──って、いいの!?」

 反射的に逆の言葉を唇に乗せたものの、すぐに突っ込む。

 ぱちぱちと瞬きを繰り返して大和を見上げると、先程よりもわずかに大きな笑い声を上げて続けた。

「いいよ。ってか俺も言おうと思ってたんだけど。先越されちゃったな」

 小さく笑って続けながら、大和が楽しげに肩を揺らす。

 了承される事はもちろん、自分と同じことを言おうとしていたと聞いては、意図せずとも自然と身体が喜びに満ちていくのが分かった。

「えっと、じゃあホームルーム終わったらすぐライン送るんで! いや試験終わってすぐ送ります!」

「……んな急がなくても逃げないから安心しな」

 はは、とやや呆れつつではあるが了承され、改めて肩を二度ほど叩かれて大和の手が離れていく。

 その温もりが名残惜しい反面、龍冴は逸る気持ちのままやや声高に言った。

「俺が早く会いたいんです。……だから無理、です」

 へへっ、と淡く口角を上げる。

(……不思議だ)

 もう先程のような鬱屈とした感情はなく、あるのはただ試験を頑張った後も大和に会える、嬉しいという気持ちだけだった。
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